濱口竜介。 うたうひと

♯53「映画と私」濱口竜介(映画監督)

濱口竜介

新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言や、補償が不明瞭な状況の中での自粛要請を受け、多くのミニシアターが閉館の危機に晒されている。 そのような状況を受け、4月13日にMotion Galleryでスタートした「ミニシアター・エイド(Mini-Theater AID)基金」は、クラウドファンディングを使って小規模映画館への支援を募っている。 当初の目標であった1億円は3日で達成されたが、自粛要請が長期化する懸念も想定される。 そうした状況を受け、深田晃司監督とともに「ミニシアター・エイド基金」の発起人を務める濱口竜介監督にオンラインインタビューを実施。 本クラウドファンディングを実施するにいたった経緯から、まだまだ補償が明確にならない行政、公共に対しての胸中、コロナ禍で表出した日本社会の課題を語ってもらった。 写真は、2018年8月のインタビューで撮影されたもの(参考:) 映画を守るというより、映画に携わる人たちの「暮らし」を守ることが第一かなと考えています。 どう立ち上がっていったのでしょうか。 濱口:自然発生的ですね。 僕はまずは身近な人に声をかけていきました。 その中にMotion Galleryを運営している大高(健志)さんもいたんです。 そして、大高さんに連絡した1時間後くらいに深田晃司監督から「僕もクラウドファンディングを考えていて、さっき大高さんに電話したんです。 一緒にやりませんか」と電話がかかってきて、翌日からミーティングをはじめました。 深田さんは、国や公に対する「SAVE the CINEMA」という、より長期的で広範囲な動きの中心人物の1人でもあるので、ごく自然とSAVE the CINEMAとも連携して動いていくことになりました。 東京藝術大学大学院修了制作『PASSION』(2008年)が国内外で高く評価され、演技経験のない4人の女性を主演に迎えた前作『ハッピーアワー』(2015年)がロカルノ、ナント他の多くの国際映画祭で主要賞を受賞。 2018年『寝ても覚めても』で初の商業映画を監督した。 「ミニシアター・エイド基金」発起人を務める。 濱口:名古屋シネマスコーレの坪井(篤史)副支配人のnoteのを読んだことが直接的なきっかけでした。 そのときすでに外出自粛要請が出ていて、どんどん客足が遠のき、本当にまずい状態だと。 シネマスコーレでは過去に自分の作品を上映していただいたことがあり、坪井さんにもお会いしたことがありました。 そのため、ダイレクトに伝わってくるものがあり、「知っている人が困っている、なんとかしないと」というすごくシンプルな気持ちが湧いてきました。 ただ、単に個人的な思いでは十分ではないので、ミニシアターに対してクラウドファンディングを行う上で、「社会的に意義のあること」として呼びかけるため言語化していったところ、「緊急性」と「重要性」にたどり着きました。 緊急性というのは、客足が途絶えてしまったとき、経営基盤の弱いミニシアターは確実に閉館が目に見えている状況で、既にタイムリミットが切られているということ。 対して重要性は、現在の映画上映の多様性はミニシアターが支えているということです。 スクリーン数としては日本全体の1割程度しかないミニシアターで、年間上映タイトルの7割が上映されています。 世界各国の多様な映画を受容できているのはミニシアターのおかげ、という事実があるということ。 この緊急性と重要性を言葉にして、皆さんに届けるように動くことを決めました。 濱口:当たり前の話ですけど、どの映画館も運営している人がいます。 そして自分は今まで映画監督として映画をつくり、いろんなミニシアターで上映していただき、劇場の方々とお会いしてきました。 「あの映画館はあの人がやっている」というように、支配人やスタッフの顔と結びついていて、「映画館」という抽象的な存在ではなく、具体的な一人ひとりの生によって構成され、営まれている場所だと感じています。 ミニシアターで働く人たちは、なにがしか映画に対する思いや志をもっています。 今回改めて、その志の周りに人が集まっているんだと思いました。 守ろうとしている「ミニシアター」とか「映画」とは、具体的にその人たちの暮らしや営みのことなんだと感じています。 その人たちの「暮らし」を守ることができれば、必然的に映画を守ることにつながります。 僕個人としては、緊急支援策としてのミニシアター・エイドのクラウドファンディングでは、映画を守るというより、映画に携わる人たちの暮らしを守ることが第一かなと考えています。 プロジェクト情報 ミニシアター・エイド(Mini-Theater AID)基金 新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言が発令され、政府からの外出自粛要請が続く中、閉館の危機にさらされている全国の小規模映画館「ミニシアター」を守るため、映画監督の深田晃司・濱口竜介が発起人となって有志で立ち上げたプロジェクト。 5月14日中旬までクラウドファンディングを実施中。 プロフィール 濱口竜介(はまぐちりゅうすけ) 東京藝術大学大学院修了制作『PASSION』(08)が国内外で高く評価され、演技経験のない4人の女性を主演に迎えた前作『ハッピーアワー』(15)がロカルノ、ナント他の多くの国際映画祭で主要賞を受賞しその名を世界に轟かせた気鋭・濱口竜介。 原作に惚れ込み映画化を熱望した『寝ても覚めても』で満を持して商業映画デビューを果たす。 日常生活の中にある人間の感情や、人間関係、人々が暮らす街の姿など、普段見過ごしてしまいがちな細かい場面にまでこだわる演出で、繕いのない本当の人間らしさを映像に映し出す。 特集上映の度に満席続出になるほど日本の映画ファンに熱狂的な支持を集めている。 『ハッピーアワー』は、5月にフランスでも公開されて10万人を動員する大ヒットを記録。 『寝ても覚めても』が初の世界三大映画祭出品でありながら、カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に選出されるという快挙を成し遂げ、「近年稀に見る新たな才能の出現!」「日本のヌーヴェルヴァーグ!」など海外メディアも称賛。 今世界が最も注目する日本人監督となった。

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カメラの前で演じること

濱口竜介

左より黒沢清監督、濱口竜介監督 黒沢監督絶賛!『ハッピーアワー』はものすごく驚きで感動的作品!! この日に上映された作品は当時数々の映画祭にて主要賞を受賞した『ハッピーアワー』。 5時間17分という長尺の上映時間としても有名だが、まず『ハッピーアワー』を観た黒沢監督は、 「濱口作品の中でも『ハッピーアワー』の大きな特徴は、とても生々しく、日常とは違うがある種のリアルに起こっていることが積み重なっていく。 しかしおもいきったフィクション、ひょっとするとファンタジーという最後が待ち受けている。 そこに到達するための前段階としてゆっくりしたリアリズムを重ねていく。 ここ、という明確なところはないのですが、後半のある時を境にレベルが違ってくる瞬間があって、それがものすごく驚きで感動的でした」 と開口一番に絶賛のコメント。 さらに「リアルであることと、明らかにフィクションであること。 その区別はどうやったの?」と いう質問に濱口監督は 「ありがとうございます。 でも身も蓋もないことなんですが、黒沢さんの影響が一番大きかっ たんです。 僕はどちらかというと日常よりの人間だった。 しかし黒沢さんの元で2年間学んだことで、思いもよらないようなもの、まさかこんなものが出てくるなんて思わなかったというところに辿り着かなければ、映画を撮ってる甲斐がないという考えになったんです」と、東京藝術大学で黒沢監督に学んだことを思い出しながら語った。 濱口竜介監督 5時間越えの本作に、どのように脚本を作っていったかという質問に濱口監督は、 「演技経験のない素人を集めワークショップを経てから脚本を書くというやり方で撮ったんですけど、3、4ヶ月ぐらいワークショップをやったぐらいで最初は2時間半ぐらいの脚本を書きました。 しかし撮っていく内に、みんな色々な演技ができるようになっていったので、どんどん脚本を足していって5時間越えという長さになりました」と、撮影秘話を明かした。 ワークショップ経験があまりない黒沢監督は、その撮影方法に驚きながらも 「素人を演技指導するのはとても難しいのに、その人たちに架空の人物を演じさせ、最終的にそんなことが起こるの?というフィクションにもっていくのは本当にすごかった」と絶賛。 さらに実は本作は最初3つの台本があったという濱口監督。 「それぞれキャストの人に読んでもらって選んでもらおうとしたんですけど、「こんなん読んでもわからん」と言われまして…。 けれど結局『ハッピーアワー』になった台本はサブキャラクターも含めそれぞれが変な輝きを放つものになったと思います」と、驚きの事実に「そんな面倒臭いことしたんだ(笑)」と黒沢監督は笑いつつも、興味津々な様子を見せた。 濱口監督は黒沢監督の考えを変えた存在だった!! 東京藝術大学で当時のことについて濱口監督は、「黒沢さんの授業は、全体に向けた講義と、ファミレスで黒沢さんと生徒がお茶を飲みながら話すゼミの2つがありました。 とくにお茶を飲みながら語る会では、みんな黒沢さんのことが大好きで、作品や撮影方法について聞くことができたし、黒沢さんも「あれはね…」と教えてくれ、とても親密な雰囲気でやっていました」と当時のことを懐かしそうに語った。 それに対し、「あの時は自分の映画がなかなか撮れない時期だったので、毎週大学へ教えに行ってましたね。 今はそんなしょっちゅう行けてないですが、2期である濱口の代や4期の生徒たちとは今でも会うし、僕も親密だったと思います」と黒沢監督。 続けて当時濱口監督がどのような生徒だったかという質問に、「授業で『顔のない眼』の映画評論を書いてもらったことがあったんだけど、濱口の評論が抜群に面白かったので、みんなの前で発表させてました。 本当に筆が立つ人だったので、濱口の脚本はセリフが多くて読んでておもしろいんだけど、わからなかった。 脚本だけ見ると本当に撮れるのか?と疑問を感じてもいた。 濱口の修了作品『PASSION』の脚本を見た時もそう思ったんだけど、しかし撮ったものを観たら「あ、こう撮る気だったのね。 失礼いたしました」と反省した。 それ以来、監督が撮るために書いた脚本に僕自身何も言わなくなった。 撮り方もわかっていて書いているのだから、脚本の段階で色々言うのはやめた。 それは濱口がそうだったから自分の考えが変わったんです。 変に人を惑わすところがあるし、才能があると思います」と当時の濱口監督を絶賛。 それに対し、「黒沢さんの方が惑わす気がしますけど…」と濱口監督がぼそっとつぶやき、会場の笑いを誘った。 黒沢清監督 『寝ても覚めても』は奇跡的な映画!! 最後に、黒沢監督にどうしても聞きたいことがあると言う濱口監督。 「すでにご覧になっていただけたと思いますが、新作『寝ても覚めても』はいかがでしたか?」と少し緊張気味。 一足先に鑑賞した黒沢監督は、「僕がどうこう言うまでもなく『寝ても覚めても』は大騒ぎになる作品だと思う。 先ほども『ハッピーアワー』で言ったような、気持ちのいいぐらいある種の生々しさと、フィクション、それを超えたファンタジーが奇跡のように融合した作品だと感じました。 5時間越えの『ハッピーアワー』でやったことを見事2時間に集約している。 奇跡的な映画です」と、師匠である黒沢監督の感想に感動した様子で「ありがとうございます」と濱口監督。 最後に黒沢監督は、「『ハッピーアワー』を観て、5時間長いな…と思った方は是非『寝ても覚めても』をご覧ください」と、 観客へメッセージを残した。 youtube. 亮平は、コーヒーを届けに会社に来た朝子と出会う。 真っ直ぐに想いを伝える亮平に、戸惑いながらも朝子は惹かれていきふたりは仲を深めていく。 しかし、朝子には亮平には告げていない秘密があった。

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蓮實重彦が「日本映画はその第三の黄金期へ」と絶賛 濱口竜介『寝ても覚めても』著名人コメント|Real Sound|リアルサウンド 映画部

濱口竜介

あるカップルはその席上で結婚を発表するが、期せずして男の過去の浮気が発覚してしまう。 そしてその浮気相手はその場にいた別の男とも関係を持っていたことがわかり……。 それぞれに人生の転機を迎えた6人の男女の恋模様は、単なる恋愛感情だけにとどまらない人間関係の深みそのものをあぶり出して行く。 恋や愛についての他愛もないおしゃべりが、横浜の美しい夜景の中で積み重なって行く。 そこにいるのは、映画を見る観客たちと同様に、月並みで平凡な人々だ。 だが彼らのありふれた言葉や振る舞いが、時に私たちの人間性の核心、人生の核心に触れる。 「暴力」や「真実」、そして「奇跡」について対話が紡がれるとき、そうした抽象的な概念が紛れもなくスクリーンに映し出されるのを目撃する。 それは同時に、ありふれた私たちの日常生活の中から、「映画」が確かに生まれ出るのを目撃する瞬間でもある。 濱口竜介 Ryusuke Hamaguchi 1978年生まれ。 神奈川県出身。 東京芸術大学大学院映像研究科の修了制作『PASSION』 08年 がサン・セバスチャン国際映画祭や東京フィルメックスから高い評価を得る。 その後も『THE DEPTHS』 10年 、『なみのおと』『なみのこえ』 11~13年/共同監督:酒井耕 、4時間を越える長編『親密さ』 12年 等を監督。 現在は神戸に居を移し「即興演技ワークショップ」を9月から開催。

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