甲賀 ゆれ の 説明 として 正しい もの は 次 の うち どれ か。 191106Rx

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甲賀 ゆれ の 説明 として 正しい もの は 次 の うち どれ か

昨日はあたしの学校の生徒会選挙、告示だったわ。 選挙戦が始まりました。 主流派と対抗して、仲間たちと目下奮闘中ですよ。 あいかわらず今の会のリーダーを辞めろって声は大きかったけど、このままいくことにした。 だってそうしたいんだもん。 ところで昨日は衆院選の公示。 テレビもネットもにぎやかね。 投票日は22日で、あたしたちの選挙と同じ日。 不思議な一致よねぇ。 誰かが言ったの。 あたしは東京都知事の小池さんにそっくりだって。 容姿じゃないわ、あたしずっと若いもの。 都知事の職にありながら、衆議院選挙で新政党のトップをつとめるという二股かけたことが、そうなんだって。 でも大したものよね。 知事は激務だよ。 地元紙に載ってるんだけど、島根県知事の先週のある一日の動静よ。 【午前】県議会本会議/隠岐空港利用促進協議会会長からの要望 【午後】ねんりんピック秋田2017上位入賞者と団長との会談/遣島使(島根県のふるさと大使)でプロレスラー日高郁人氏との会談/主要地方道の早期全線2車線化を願う会会長からの要望/県政記者会の共同取材 【夜】 親善交流がある韓国の劇団公演鑑賞 庁内の内部協議や決裁の処理だって多いと思うわ。 県の舵取り役として考えたり、情報をつかみにいくこともやってるでしょうしね。 激務よ。 忙し過ぎると思うよ。 東京都だったらもっと大変なんじゃないかしら。 その知事がほとんど出ずっぱりで、都庁の役人さんたち、よっぽど困ってるんって思うわ。 怒ってる都民も多いんでしょうよ。 都知事という公職を投げ出して一政党の私的活動を優先するのは公私混同だ、ってね。 あたしは、たかが一委員会の長。 大した影響力じゃないわ。 小池さんはケタ違いよね。 あたしとは比べものにらないわ。 (暑過ぎる夏を避けたか、あちらこちらで朝顔が満開。 選挙が終わる頃、さすがに朝顔も姿を消すだろう) 人材開発メールニュース(10月9日)ワンポイント・アドバイスで吉次潤氏は、会議の性質を整理するだけで働き方改革へのヒントになると述べる。 そう、よくある。 やる方向で決まっていたはずの会議で、話を蒸し返してやる意味を声高に問い重箱の隅をつついて出来ない理由を並べ立てる者がいる。 氏はこう述べる。 当然、着地点を見出せなくなります。 効率的に終わらせてしまいたい。 かつ、気持ちよく次のステップに移っていきたい。 失敗したとしてもフィードバックして新しい展開に備える組織を作りたいものだ。 さあ、明日も会議があるぞう! (会議は回る。 春のツルニチニチソウの5弁の花のようにくるくる回る) エドガー・ドガ『マネとマネ夫人像』(1868年作) 赤茶の髭をたくわえたマネは横になって宙を見ている。 ソファに横たわり右足を乗せリラックスしているようだが、どこかムリしている感じがある。 ベージュ色のベストに合わせて薄茶色の靴下をはいている。 靴は白で、上着とズボンは黒だが上下は釣り合っておらず、くたびれている。 実に弛緩した雰囲気で夫人の後ろにいる。 夫人はといえば、ピアノを弾いているらしい。 グレーベースの黒い大きなストライプのあるドレス。 演奏を披露するため予行演習を夫の前でやっているのかもしれない。 残念ながら、右4分の1がハサミで切ってあって夫人の顔や容姿は見ることができない。 マネは気に入らず絵を切り取ったという。 ドガは怒った。 持ち帰り放置したという。 夫人の背は丸まっているのはやむを得まい。 鍵盤に集中するのだから。 それでも背中に肉がついているのがわかる。 マネは見たところ50才。 今で言えば70才相当だ。 となると奥方もそれなりの年を重ねている。 老いていない方が不自然だ。 でも自意識過剰?の夫人は自尊心を傷つけられた。 マネも同調したのかもしれない。 部屋の壁は薄汚れている。 ソファの白シーツも綺麗ではない。 目立つ色合いは丸いクッションの赤のみ。 ピアノも黒だとすれば全体の配色の地味さにも耐えられなかったのだろうか。 ともあれ、絵を切り取るとはなかなかの豪傑だ。 松本竣介『彫刻と女』(1948年作) 36歳夭折の画家が死ぬ直前に描いた絵だ。 島根県立美術館で開催中の「夢の美術館〜福岡市美術館・北九州市立美術館名品コレクション」で、私が一番気に入った絵。 透けたネグリジェのような幅広のドレスを着た童顔の女。 茶か黒か、頭部の像に触れている。 ダースベイダーのようにいかめしい像だ。 女の白い息がかかるのか。 手や胴体、足から白光を発している。 霧なのか霞か、地上にあって地底の者であるかのような風情。 地面に接していながらも宙に浮いているかのような軽さ。 女は厳然と存在しているが淡い。 あれは竣介の命がもはや儚い灯火であることを意味したのだろうか。 (ドガの絵に石榴の赤色が入っていたなら、様相が違っていたかもしれないな) 昨夜は高校の同窓会を行った。 あっという間に夜は更けていく。 楽しい時間は過ぎていく。 不参加者も含めてメールを送った。 写真送ります。 みんな良い顔しています。 わかりますか? O君が老け顔のまま登場してくれてよかった(つまり見た目は30代だということ)。 W君がハツラツとして饒舌でよかった。 Yさんが清々しさを保ちエレガントでいてくれてよかった。 K君が心身ともにたくましさの度合いを重ねてくれてよかった。 S君が良性のボヤキを変わらず連発してくれてよかった。 Hさんがくりくりした好奇心にあふれた目を失わずにいてくれてよかった。 M先生が僕らの今の年齢よりもはるかに若かったことに驚きつつも変わらずお元気でよかった。 T君は遅れて来場したけれどニヒルさを装いつつも温かい人柄でよかった。 僕は幹事としてみんなの姿を見ることで満足できてよかった。 連休の中日、どう過ごしてますか? 次回を楽しみにしています。 人生の三つの坂、よく言いますよね。 上り坂に油断せず淡々と、下り坂にも腐らず諦めず、まさかにもしなやかに対処する。 再び年輪を重ねて会いましょう。 不定期便も歓迎です。 久々に帰省する向きはどうぞお知らせください。 一杯やりましょう。 あたしの学校、生徒会選挙の続報よ。 選挙が近づいてきたんだけど、雲行きが怪しいんだ。 まっ原因はあたしにあるんだけどね。 あたしね、校内のある会で会長をやってるわけさ。 だったら辞めて生徒会選挙に出て会長になるのが当然って言うんだよね。 仲間の身内からも、合流した非主流派の連中もそうよ。 聞きつけた主流派の有力生徒までそう言ったわ、辞めろって。 でもね、今の役を途中で投げ出すわけにはいかない。 居心地もいいし、結構多忙だから二股をかけるわけにはいかないわ。 それとね、非主流派にはヤなタイプがいるんだ。 だから選別して仲間にしないって宣言しちゃった。 そりゃ怒るわね。 あたしが嫌われるだけで済むと思ってたんだけど、予想外のことが起こっちゃった。 別のグループを作って選挙に出るんだって。 まっしゃあないか。 非主流派のリーダーも清水の舞台から飛び降りて、いったんは大逆転の様相だったけど、なんだかんだと困っているようよ。 毎日あちらこちらから意見がたくさん出て、ラインでは情報が飛び交ってる。 選挙っておもしろいね……なんて他人事のように言っちゃった。 あたしのことなのにね。 (ハロウィンのお化けジャックも大嘘つきだった) レジリエンスとは、しなやかな生き方。 たとえ落ち込んでも立ち直り、学びに変換できる力。 「マイナス妄想で自滅。 常に他人の目が気になり、やたらと自分を責める」という日本的な空気に縛られた気遣いとは対局にある。 長年の養護教諭の経験を元にパワフルに起業し、保健室の先生たちを奮い立たせるコーチングでもって教育界に一石を投じる方の講演を聴いた。 桑原朱美氏、ハートマッスルトレーニングジム代表取締役。 題して、『しなやかな心を育てよう〜レジリエンスを高めるヒント』。 出雲一中PTAが主催され、対象は大人と全校生徒であった。 仲のいい誰かに挨拶をした…反応がなかった…無視された?…胸が痛む…わたしのこと嫌いなの?…ご機嫌斜めな原因はわたしがつくったの?…みんながわたしを嫌ってる? いろんな疑心暗鬼を生じて心は揺れる。 氏はこうおっしゃった。 鋼鉄でできた鉄人ではなくて、柔らかく受け止めるベイマックスになろうよ。 そんな神経質になることはないよ。 単に気がつかなかっただけかもしれないし、過去は過去、執着せずにこれからうまくいく方法を考えようよ。 未来の希望に目を向けよう、と。 声がいい。 聞き取りやすく柔らかい一方で、強調すべきところはキチッと言い切る。 中学生に受け入れやすい話題と親しみのある言葉遣いでスッと心に入りつつも、礼節をわきまえた言動がある。 保護者にとっても琴線に触れる話題がたくさんあって退屈させない。 講演の冒頭部分で生徒のレスポンスがほとんどない場面でも、サラッと受け流して次にいく。 まさにレジリエンスな姿を実践されていた。 実はパワポ資料に修正ミスがあって、本人は恐縮して謝罪されたのであるが、ほんの数秒。 その後になんら影響はなかった。 お見事なり! 反省とは懺悔し顔を下に向け続けることではない(集団ヒステリーのように話題の人を叩くマスコミとネット人は、「反省」する姿を強要していると私は思う)。 シマッタと思った瞬間で反省は終わり。 長くても10秒。 今と未来へ意識を向けようと、氏はおっしゃった。 脳は不器用である。 一つのことに囚われてしまうと同時に存在する情報を見落とす性質がある。 「焦点化の原則」という。 過去に焦点を当てず、未来に向けてどうしたらうまくいくかに焦点をとどめよと。 捜し物をするときの秘訣が披露された。 「ナイ!ナイ!ナイ」と言わない。 脳の主語は「わたし」だけ。 他人を褒めると自分が褒められたように錯覚する。 だから全部自分に返ってくることを忘れてはいけないと。 反対の究極が「人を呪わば穴二つ」。 憎み嫌い呪うことで相手を殺せても、負のエネルギーは自分に返ってきて共に死す。 自己肯定感を高めて、自分を多面的に見ていこう。 いろいろな側面をもつのが人間、だから人間だ、と達観するのが自己肯定感の意味するところと氏は締められた。 彼女はわたしの同級生。 数十年ぶりの再会に心が躍った。 親しみのある中にもキリッとした声がいい。 高校生の面影をそのまま残して、終了後の会話が弾んだ。 (リンゴは食べて食べてと主張する。 買って持ち帰り食べるかどうかは、わたし次第。 開店日のプラント斐川にて) 書類はバラけやすくて、なくなりやすい。 紛れてしまって、ないないと探したことが何度あることか。 その点クリアファイルは便利だ。 数枚の書類を一まとめにできて、何十枚も紙を散逸させずに保管できる。 透明で中身もよく見える。 この10年、書類整理の王道をいくようになった。 サイズはA4版が標準だが、A4を半分に折り曲げてA5にできるものがある。 簡易バッグ風に手提げにして資料を持ち帰ったら、三方をミシン目で切り取ってクリアファイルに変身する優れものもある。 企業や各種運動体のアピール用としても大活躍だ。 印刷して街頭や会合でもらうのは嬉しい。 ただ、アピールがしたいばっかりに両面に印刷してあるのはいただけない。 クリアじゃなくなってしまうじゃないか。 私たちが目にするもので数千年前と同じように見えるものが星座の他にあるでしょうか。 絵にしろ彫刻にしろ、長い時の移ろいとともに風化していく。 なのに、星は当時のまま。 地球の衛星・月は数億年も前から今と同じように輝いていたことでしょう。 古代の人びとは月明かりを頼りに夜を歩き、松明や提灯など人工の照明は最小限にして生活していたのです。 古の人びとに思いを馳せて星空や月夜を眺めましょう。 さあ、今日は中秋の名月。 今夜、空を見上げよう。 月は満を持して私たちに眺められるのを待っていますよ。 スポーツ庁がスニーカー通勤を推奨し始めた。 働く世代の1日の歩数を1000歩増やし、運動不足の解消を目指す。 スニーカーは歩きやすい。 蒸れにくい。 だから夏場に楽だ(それならクールビスと一緒に始めてくれればよかったのに)。 都会ならば、会社まで1駅、2駅歩こうという気にもなれる(田舎はムリ。 1駅が5キロも6キロもある)。 運動して疲れが取れれば、休みの日も余力をもって臨める、活動的になれる。 営業職にとってどうなのか。 いまだにクールビスなどどこ吹く風で、炎天下をネクタイ・スーツ姿で歩き回る人は柳に風と受け流すかもしれないが、スーツとネクタイ、革靴の西洋戦闘服に身を包み真夏にフーフー言う必要はない。 私たちは年ごとに苛烈な日本の夏に暮らすのだから。 警官や警備員、巡視員、いざというとき走る必要がある人には是非ともスニーカーを履かせてあげたい。 速く走れる動けるというだけでも分があると思うのだ。 わたしはウォーキングシューズを愛用している。 黒くて合成皮革。 底は厚いゴムで細かく深い刻みがあって滑りにくい。 紐で結ぶビジネスシューズ風でスーツにもそこそこ合う。 スーツというフォーマルな装いにとって革靴がカッコいいのは確かだが、滑りやすい、クッションが悪くて膝や踵を傷めやすい、手入れも面倒くさい。 時代は変わった。 災害時の利便性も高い。 実用的なスニーカーに軍配を上げよう。 (黄色いスニーカーのような春のフリージア。 太陽を浴びて嬉しそうだった) 会議に出席する。 会議を主催する。 展覧会に行く。 映画を見る・・・終わって安堵する。 満足感がある。 職場に帰る。 家路につく・・・安心してはいけない。 まとめの作業にかかるのだ。 映画や絵画の感想を書き留めよう。 記憶や印象が最も鮮明なのは「そのとき」。 結論はどうなったのか、明らかになった課題も見えてきた。 至る経緯も頭に残る。 ヒーローの名ゼリフや背後から迫った爆撃の恐怖も体が覚えている。 だから再現しやすいのだ。 だが、記憶と印象は2時間、3時間とたつうちに抜けていく。 悲しいくらいに忘れていく。 数日たてば細かいメモをとったつもりでも、行間に隠れた細部の空気は失われる。 レコーダーやビデオに撮っていても蘇ってこないものだ。 しかも聞き直すには同じだけの時間がかかる。 映画の筋だって忘れてしまう。 終わった瞬間から「そのとき」は始まる。 そのときを大事にしよう。 (犬蓼(いぬたで)があちこちに咲く。 犬がつくと、食用にならないとの意味があるようだ。 かわいそうな犬たちよ) 言葉は難しい。 一方でおもしろい。 国語に関する世論調査28が先日文化庁から発表された。 興味深い内容であり、わたし自身も毎年言葉の使い方を改めて考える。 次の表現が気になるかどうかを聞いた質問だ。 どちらかというと気にしないで使っている。 他人に目くじら立てる必要はないが、自分には厳しく使っていこうと思う。 気になる47% 気にならない49% 次の正解はすべて a だが、ほとんど逆転している。 注釈なしに使うのは難しくなってしまった。 言葉は刻々と変わっていく。 (ムカゴが実ってきた。 秋を満喫しよう。 秋を楽しもう……でも明日は雨) 喫煙率を県別でみると、ビリは北海道(国民生活基礎調査2016年)。 ここでいう順位は、健康にとって最悪で周囲にも害悪を及ぼすばかりか、煙を撒き散らし不快感を炎上させるという意味である。 疫学的な研究でもストレス解消効果を打ち消して余りある害をもたらす。 タバコ税を上回る医療費がかかることも明らかだ。 北海道が24. 7%でビリだが、意外と少ない。 禁煙の流れは確実に浸透しつつあるともいえる。 ケツから2番目は青森23. 次の低クラスが岩手で22. 続いて低いのが福島の22. 低ランキングの次が群馬と栃木のお隣同士で21. 9%となっている。 東日本である。 一方で上位は西日本だ。 トップの座は奈良にあり17. 2位が鹿児島の17. 4%、京都が3位で17. 5%、香川と島根が17. 7%で4位という順位である。 それでも2割近い人が吸い、男だけでみれば3割近いのである。 全国平均が19. 男31. 1%、女9. 5%という数字が報告されている。 テレビや映画ではカッコイい男や女が煙をくゆらす。 憧れる者も多いであろう。 受動喫煙を防ごうとする健康増進法の改正案はつぶれた。 法で縛れば効力は高いのに残念だ。 二十代の半ばまで私も吸っていたが、今はタバコの煙が苦手だ。 道端で吸う人がいれば息を止めて通り過ぎる。 もう一歩二歩と禁煙の方向が定まってくれたらありがたい。 (秋の七草・ススキ。 秋を満喫しよう。 空気と食欲を満喫するためには、喫煙で汚れては美味しくないからね) 島根のある中学校では生徒会選挙、大激戦だってね。 13人の役員ポストに候補者は41人。 すごいよ。 なり手がなくて困ってるのがふつうだから。 そういうあたしの学校も大変なのよ。 あたしのグループは新興勢力。 主流派を抑えて夏にあった委員会の選挙では大勝ちしたわ。 勢いづいてこの秋生徒会の本選挙に臨むんだけど、自分で言うのもなんだけど、人気あるわけよ。 ただし、人材面と政策面で少し不安があるんだ。 役員候補の数が十分じゃないし、公約も漠然としていておぼつかない。 だから主流派にコブみたいにくっついている人たちに秋波を送って波風起こそうとしたんだけど、彼らの気持ちは動かなかったみたい。 でも昨日ね、いっしょにやろうって申し出があったんだ。 主流派に挑むんだけどいつも足元にも及ばなくて苦杯をなめ続けてる非主流派から。 そこのリーダーが目指すのはただ一つ。 主流派にこのまま権力を握らせてはいけない。 引きずり下ろすんだってこと。 でもね、彼らも何年か前の先輩たちがリーダーシップをとったんだけど、まっひどいもんだったらしいよ。 今でも人気ないし、造反者が次々と離れていく状態なの。 それでリーダーはこう考えたらしいのよ。 選挙で負けるのは見えている、バラバラでは主流派に対抗できない、ならば人気のある彼女たちと組んで主流派を追い落とそう、自分のグループの名前も無くしてしまうって。 彼女ってあたしのことよ。 大逆転の発想よね。 絶体絶命、窮鼠猫を噛む。 驚いたわ! 政策面ですり合わせも必要だけど、あたしの気持ちも動いているわ。 ここは一丁、やってみようかしら。 面白くなるかもよ。 でもね、風に乗るって怖いよ。 あとでツケが回ってくるから…。 (蕎麦の花が満開。 やがて実になり収穫を迎える。 解散総選挙が終わると新ソバが食べられる? いやまだ早い) オレが大足広げたら ちっとは早く走れるかも ギターが弾けないあいつでも 好きになったら弾けるはず 勉強できないオレでさえ やればあいつのように出来るはず あいつもオレも同んなじ仲間 違っていいはず、ないじゃんか こいつも奴も仲がいい 毎日ラインで数百件、お互いさまで忙しい あいつと、こいつと、そしてオレ、 みんな同んなじ、だからいい。 むろんのこと、金子みすゞの『私と小鳥と鈴と』のモジリである。 差異を認めない。 同じことを考えて、同じ空間にいて、SNSもずっといっしょ。 狭い世界で限定的に生きている。 それ以外の事柄に想像が及ばない。 歯車が狂って排除されたら一巻の終わりとあきらめる。 あとで考えれば何のこともないけれど、そのときは世界の終わりが来たかのように嘆く。 平等と公平の違いがわからない。 強い者が弱い者を見下し、イジるイジメる破壊する。 無名な者が有名な者を妬む。 わずかな落ち度、ちょっとした不祥事をことさらに騒ぎ立てて世間の耳目を集めさせて引きずり落とす。 20年30年前には笑ってすまされたことが今やコンプライアンスと言って糾弾の元となる。 これもあれも、みんなが同じがいい、というメンタリティのあらわれだ。 あいつと、こいつと、それからオレ、 みんなちがって、みんないい。 そんなふうに、誰もが大らかに朗らかに生きる日本にしてみたい。 (秋の七草・フジバカマ。 傍目には同んなじように見えてても、それぞれ個性があるものさ) しゃんしゃん 鈴なりの鈴が揺られて鳴る。 多いほどに響きが重厚になって空気が震える。 祭りや何かの喜びごとに人の気持ちが奮い立つ。 しゃんしゃん 手を打って事が無事に決着したことを喜ぶ。 ただし周りに流されて納得いかないままに、しゃんしゃんと手打ちはいけませんぞ。 しゃんしゃん 精神的にも肉体的にも健康で元気のよいさま。 湯が盛んに沸きたつ様子を昔はしゃんしゃんと言ったようだが、そこからお年寄りが元気なさまを表すようになったのだろう。 シャンシャン 香香(しゃんしゃん)は上野動物園の赤ちゃんパンダ。 生後100日、無事育つ。 甘え、愛され、人気者になって長生きしてくれや。 (しゃんと立って元気な黄色をふりまいている菊芋(きくいも)。 根の先には芋があって糖分を多く含んでいるという) ダニエル・ブレイクはいけ好かない奴だった。 腕のいい職人だったが、心臓を煩って働けなくなった。 所得保障を申請した。 小難しくて皮肉が先に出るタイプだったもので、査定員の質問に対して斜に構えてちゃんと答えない。 結果として福祉の恩恵にあずかることはなかった。 やむを得ずダニエルは失業保険を申請した。 働けないのに求職を続けるという矛盾。 ダニエルにとっては耐えがたかった。 救いの存在となったのが、シングルマザーのケイティと子どもたちだった。 私は関係ない、さっさとどっかへ行って!と言わんばかりの役所の窓口。 不誠実でぞんざいな担当者。 書類が足らない、書いてない、担当部署はここじゃないとたらい回しにされたダニエル。 書類はウェブでどうぞと言われても、ダニエルにはネットを使うことは高い壁だった。 不運なつまづきがあると、あれよという間に貧困に陥ってしまう現代の危うさを描きたいという制作者の意図はわかる。 ただ、ダニエル・ブレイクには共感できなかった。 映画が発する「生活弱者が複雑で無慈悲な制度の前になすすべなく、貧困と困窮に落ち込んでいく苦悩」というメッセージを素直に受け取れないでいた。 やがて、ケイティ一家と助け合い、寄り添いながら前へ進もうとするダニエルを見ているうちに、わたしの気持ちは変わっていった。 しかし、ハッピーエンドはなかった。 悲しかった。 それでも「私はダニエル・ブレイクだ。 自分は自分、生き方を貫くぞ」と、決意をこめた落書きをして快哉を浴びる。 少し気が晴れた。 『わたしは、ダニエル・ブレイク』はそんな映画である。 (清楚なモナ・ラベンダー。 淡い紫色がまるで造りもののようだが、これも現実だ) わたしは輸血をされたことがない。 血液製剤を使う手術や治療も同様だ。 入院したこともないのが幸いだ(幼児の頃グミの実を食べ過ぎて腹をひどく下して一晩泊まりしたことはある)。 わたしは献血する。 血をあげるばっかりだ。 最初に献血したのは高校生だったか、大学のときかは覚えていない。 26才のとき、東京に住んでいるころだったが、妻が目黒に用事があったので付いていった。 時間待ちが長く、目黒駅前で献血車に乗った。 200ccから400ccへの過渡期でわたしは始めて400ccを提供したのだが、終わって妻と合流したころに気分が悪くなった。 血を取り過ぎた副作用だった。 やがて成分献血が始まると、そればっかりになった。 時間はかかる。 受付して自己申告のチェックを受けて血を採り検査をして血圧測定も含めた問診がある。 医師の診断を受けて水分をたっぷり取りトイレをすませて順番を待つ。 リクライニングのベッドに横になって太い針を刺されて血が機械に入っていく。 採っては必要な成分を濾過して溜まったら体に戻して再び血を採って4回か5回繰り返すのだ。 終わると血圧を計って異常がないかを確認し止血する。 初期は図書券やテレホンカードをもらっていたと思うが、売血に相当するということでなくなってからは記念品をもらうようになった。 スポンサーから提供された米や歯ブラシセット、レトルト食品などがあった。 血液センターの行き帰りはタクシーチケットを使わせてくれた。 拘束時間は長くてもお茶を飲みテレビを見たり本を読む。 昼寝をするのも自由だ。 約1時間半の休息時間が楽しみだった。 昨日は出雲保健所で「厚生労働大臣表彰状及び感謝状、島根県献血推進協議会功労者表彰伝達式」に出席してきた。 わたしは100回以上の個人として県表彰を受け、奇しくも出雲工業高校は厚生労働大臣感謝状を受けた。 長い間生徒と教員が献血推進をしてきた功労による。 その他いくつかの団体が表彰を受けられた。 個人で受けた人の中に200回以上の猛者がおられたのには驚いた。 アッパレ!である。 (血のような赤さではないが、今日は赤い曼珠沙華。 これは彼岸花と表現したほうが、しっくりくる) 田舎の人と話すときには翻訳が必要だ。 方言の問題ではない。 相手が親族ならば来歴やら幼い頃からの経験で誰かの噂話をされても内容がわかるが、ベースが違う人だとまるでわからない。 しかも田舎の人は、自分が思っていることは当然として、他人がしゃべる内容も直接話法で話す(私の母が典型)。 直接話法の定義のように、ある人が述べたり書いたりした内容を引用符に入れて直接的に正確に伝えてくれたらいいのだが、あたかもその人が乗り移ったがごとくに生き生きと成り代わって話す。 自分の思いや過去の言葉、目の前にいない人の言葉も、思いも、態度までも一緒くたにして直接話法で喋るものだから、聞いているこちらは判別不能。 誰が言った言葉なのか、思っていることなのかわからないのだ。 何かを論証したり、順序だてて説明してもらわないといけない場合にはとても苦労する。 ほかの第三者がその場にいる時は言い換えてわかりやすくしてあげないといけないし、私も言葉を遮って「今のは誰の言葉?」と聞き直さないといけない時が多い。 どうしても円滑さに欠けてしまう。 喋るって、聴くって難しい。 (ヤマボウシの実がなっている。 六角形が集まったサッカーボールのような形。 むいて口に含むと中身は甘い) 煙霧です。 高台の出雲工業高校から見ると視界は2キロあまりで、JR出雲市駅より遠いところは霞んで見えませんでした。 街路を歩くとごく薄いベールに覆われたような印象です。 煙霧とは、乾燥した小さな塵埃が空気中に増えた状態ですから、霧とはひと味違います。 小さな塵芥ということは、PM2. 5ですか? 油断できませんね。 煙霧とは特殊な気象現象かと思っていましたが、快晴や雨と同じように天気を表す言葉であることを知りました。 特に珍しい現象ではないようです。 気象庁が発表する気象情報には15種類あるそうですが、煙霧はその一つです。 ほかには次の14種類あります。 快晴、晴れ、薄曇、曇り、砂塵嵐、地吹雪、霧、霧雨、雨、霙(みぞれ)、雪、霰(あられ)、雹(ひょう)、雷 さてさて、あした天気にな〜ぁれ! です。 (明るい花ブーゲンビリア。 南国を彩るブーゲンビリア) 遠く離れた村の祭りで、娘は若者と恋に落ちた。 しかし、まつりが おわってみれば、 むすめと若者はあうこともない。 むすめは、ぼんやりと 山をみている日が おおくなった。 あの山さえ なかったら…… (絵本『つつじのむすめ』より) 娘は山を5つ越えて走った。 胸は苦しく膝はふるえ足がもつれた。 愛しさをエネルギーにひたすら走った。 朝まで睦まじくすごす二人は幸せだった。 愛しあう若い二人が毎晩のように密愛し翌朝も当たり前に仕事をすれば異変は起こる。 痩せて青白くなった若者を見て仲間は心配した。 そりゃ、魔ものだ、魔性のものだ。 人間の女じゃあねえぞ。 若者の心に疑いが生じた。 愛おしさがいとわしさに変わった。 娘の言葉が信用できなくなった。 ある夜、若者は山で待ちぶせした。 髪をふり乱し風のように走る娘は、月光に照らされて魔性のものに見えた。 若者の目は曇ってしまったのだ。 おのれ 魔ものめ、おもいしれ! 娘は真っ逆さまに崖から転落した。 哀れな娘の血がしたたって真っ赤な躑躅(ツツジ)が咲き乱れるようになったとさ。 松谷みよ子作の絵本『つつじのむすめ』は悲しいお話だ。 正視眼で物事を見ることの大切さを訴える。 絵本の教訓。 何ものかを評価する際に必要なのは、隣人の評判ではない。 自分を全開にして五感を働かせることなのだ。 (日日草は新しい花が次々に咲き代わって、この夏も日照りのなかで元気に咲いていた。 娘の血はもっと赤かった) 人だかりには何か楽しいことがある。 思いがけない出会いがある。 人混みは好奇心を刺激するけれども、危険な目に遭うおそれはある。 騒がしい広場では通り魔事件が起こっているかもしれない。 爆発物によって人泣かせに不慮の災難が降りかかっては人生台無しだ。 好奇心はひとまず置いて、君子危うきに近づかずである。 やたらと野次馬根性を発揮してはならない。 その分損することもあるだろうがやむを得ない。 弾道ミサイルが某国から発射されるとJアラートが発動する。 15日朝は襟裳岬の上空までわずか7,8分ほど。 着弾したり破片の落下まで時間はない。 ただちに頑丈な建物に避難して窓から離れる。 広い場所ならば地面に伏せて頭部を守る。 意外と難しい。 自分は大丈夫と考える人も多い。 核攻撃以外ならば被害の確率は低いけれども、武力攻撃に対しては心の備えが必要だ。 テロ、突然の暴力、事故や災害など不慮の出来事は日常的に起こりうる。 これも心していかなければならない。 (アベリアは道路脇にある低木。 日本名は花園衝羽根空木(はなぞのつくばねうつぎ)。 甘く淡く香る) フランスのある小学校を舞台にして、何げないエピソードがいくつも描かれる。 思春期前の小学生たちは、可愛くもあるし小憎らしくもある。 『トリュフォーの思春期』の監督と脚本はフランソワ・トリュフォー。 子供への温かい眼差しがある。 パトリックはローランのママに恋した。 思いはつのり、小遣いをはたいて薔薇の花束をプレゼントしたのだが、一言「お父さんによろしく」と。 恋は終わり夏休み。 パトリックは気をとりなおし新しい恋をした。 林間学校でとびきりの女の子マルチーヌと相思相愛になったのだった。 子供たちの群像劇である。 危険やいじめ、とりとめもないエピソード(本人にとっては大事件)が描かれる。 子供はみずみずしい。 優しくもあり残酷でもある。 明るくてたくましい。 ときには寂しさに耐えられず、悲しい感情をぶちまける。 生き生きとして描かれた子供たちの周りで、大人もまた幸せだ。 市井の人びとが自然に描かれている。 ヌーベルバークの巨匠の映画ではあるが、肩肘張らずに自然体で眺める映画であった。 壁はそびえ立つ 土壁 岩壁 石垣 コンクリート壁 ひとの壁 記録の壁を破った 100m10秒の壁 日本陸上界の夢 9秒98 大きな一歩 偉大な進化 悲願を成し遂げた 故障の壁と闘い 重圧の壁と戦う この夏の失意の壁も乗り越えた 次なる壁を突き破り 世界のファイナリストに残ってくれよ 桐生に続く男は誰なりや 破れないのは核の壁 核廃絶への道は遠い 北朝鮮だけが悪いのか さにあらず 万を越える核弾頭を持ち 地球を震撼させている核兵器大国たちよ アメリカと核の相合い傘に入る 悦にいってる日本でいいのかい 核兵器禁止条約を認めよう 核兵器は悪魔 それを使う者はサタン (カボチャの花が元気いっぱい咲いている。 核の恐怖を植え付けられては元気でいられない) 高校の授業料は無償とならない、のが大方の流れとなりそうです。 大阪地裁は原告勝訴の例外的判決を出したものの、東京と広島地裁では朝鮮学校への就学支援金(授業料相当分)は支給しないと決めた国の判断が正当だとしました。 審理中の2地裁もダメの判決を下すような気がしています。 朝鮮総連とつながりが深く、北朝鮮信奉者のための教育機関は高校にあらずという考えです。 拉致問題が未解決の現状では国民の理解が得られない、核ミサイルが不安視される状況にあってはとんでもない!という発想です。 朝鮮学校が朝鮮総連と一体的なのは間違いありません。 資金も北朝鮮に流れているでしょう。 国連が束になって制裁を科す今は、中国とロシアも北朝鮮への支援の道を狭めるしかありません。 アメリカは完璧な兵糧攻めを目論んでいます。 窮鼠猫を噛んだらどうしよう。 日本と韓国の惨状は想像すらできません。 わたしは思うのです。 君らの同胞が日本にいるんだ、よもや攻めてくることなどあるまいね? と外交カードに使えばいいんです。 歴代の独裁者を至上として敬っていようが構いませんよ。 投入する税金だって大した金額ではないのです。 安全の担保として就学支援金を利用したらどうでしょう。 (韮(にら)の花盛り。 私は好きだが、独特の臭いを「においきらう」人も多い。 略してニラと変化したという説。 北朝鮮をにおい嫌うのはそれぞれだが、安全保障の背に腹は代えられない) 名前を間違ったまま憶えていることがある。 橋田さんなのに橋本さん。 これは勘違いか、読み違いからくる。 同音の多い日本語にあっては端本を橋本に、なんてこともよくある。 フクダさんなのか、フクタさんか。 濁音が入る入らないも大きな問題だ。 人だけでなく、物事の名もそう。 大昔わたしは公務員の給与比較に使うラスパイレス指数を、ライパレス指数と憶えていたことがあった。 友人に指摘され直したが、以降も「ライパレスでなくてラスパイレスだ」と心中で確認してからでないと口に出せなかった。 最近ではアナフィラキシーショック。 死ぬこともある印象からか、アナフィ「キラ」シーと憶えていたのだ。 日々膨大な情報が目や耳から入ってくる。 インプット情報がすべて頭に残ることはない。 それでも記憶に残しておきたいものはある。 残念ながら残らない。 努力して口に繰り返し、目で見て文字に書いて憶えようとする。 忘れても諦めずにまた憶える。 なんとか記憶の端に残ってくれると嬉しいものだ。 だから記憶違いもたまにはあるんですよ。 そりゃしょっちゅうですけどね。 (薮蘭が花盛り。 やがて葡萄のようにして黒褐色の実がなる) ギリシャ神話の世界で神々は戦います。 そして異性を見初めたら見境なく略奪します。 日本のゲス不倫など足元にも及びません。 映画『ワンダーウーマン』の主人公のプリンセス・ダイアナも恋をします。 ただしきれいな正統派の恋。 しかもとてつもなく強い。 戦っても戦っても少々打ちのめされても、頬にかすり傷ひとつつきません。 なんと言っても大神ゼウスの子供なのですから。 冒頭に桃源郷のような古代社会が出てきてびっくりしました。 そのアマゾン族全てが大神ゼウスの子供たちというではありませんか。 しかも女だけの社会。 ゼウスの子アレスは戦いの神。 荒ぶる暴虐の神です。 世界を滅亡させる機をうかがっています。 それに備えてアマゾン族は戦闘訓練を怠りません。 アレスは思いがけないところにいたのですが、わたしには何か象徴的に思えたのです。 アレスはどこにでもいる。 人間誰もの心に潜み人々を恐怖のどん底に突き落とす。 アレスだけが諸悪の根元ではなく、人間すべてに悪の命が巣くうと感じました。 北朝鮮の核弾頭攻撃が目下の大問題です。 元はといえば、ソ連がコントロールを誤ったからです。 さらに原因を探れば南北を分断統治、さかのぼって日本が朝鮮を植民地にしたのが悪かった。 中国の歴代王朝が朝鮮を属国化していたからです。 地勢学的な観点に当地の文化や人々の心理条件が重なって、今の北朝鮮国家が出来上がっています。 北朝鮮体制が正しいとはとても言えませんが、北朝鮮だけをアレスとみなして叩いても、別の何かが次々と頭をもたげていくでしょう。 ダイアナは人間には悪の側面のほかに善もあると悟りました。 それを頼みに人間を救いたいと感じます。 ダイアナは21世紀の現代も年をとることなく生き続け(神の子ですから)、人間社会に留まっています。 シリーズの次回が楽しみです。 主演女優はガル・ガドット。 天然系の笑顔に魅せられました。 心を許した人への人なつっこい笑顔が素晴らしい。 長身でスタイル抜群、筋肉ムキムキの一歩手前まで鍛え上げた肉体。 あわせて走りが美しいこと。 それでいてかすり傷すら出来ないほど強い。 だからラブシーンがたまらなく愛おしいのです。 (ダイアナにはハイビスカスのような鮮やかな色がよく似合う) 日曜日の昼下がり、電車で私の隣には20代前半の女の子。 若いけれども学生ではない。 若いビジネスウーマンが休日のレジャーを楽しむ風情のファッション。 路線は都営地下鉄・大江戸線。 凛として淑女然として座る姿は好ましく映る。 珍しくスマホをいじる様子はなかった。 やがてウトウトしだして左に揺れる。 そのたびに私の右肩を髪や頭がかすめる。 別に不快ではないが(むしろおじさんは愉快)、結構乗客が多い車内でどうなることかと案じていた。 六本木駅に着いた。 車内アナウンスが流れ、ゆっくり車両が止まって乗り降りする乗客が多かった。 隣の彼女はというと、数秒前までコクリコクリやっていたにもかかわらず、目覚めたかと思うと脱兎のごとく駆け出して、閉まるドアからタッチの差で飛び出していった。 駆ける姿は淑女にあらず。 バタバタとした歩みで幼い印象を受けた。 地が出たのかもしれない。 都会人の瞬発力に驚いた。 (東京・信濃町の街路に咲くピンク色のムクゲ。 蒸し暑い午後だった) ヒロインのカホコ(高畑充希)は、全ての行動を母親任せにする超過保護。 世間知らずで思い込んだら猛進するがうまくはいかない。 そのカホコが正反対の性格の青年・麦野はじめ(竹内涼真)と出会って恋をして人生が一変する。 初めて自分って何?と目覚めた。 この夏のシーズンでは水10の民放ドラマ『過保護のカホコ』を楽しんでいる。 初体験の出来事があるたびに、それが喜びであろうと不安であろうと、カホコは興奮して「私こんなの初めて!」と叫ぶ。 カホコの誉め言葉はワンパターンだ。 だが、「スッばらしい」と言うたびに相手には思いがけない化学反応が起こって新たな局面が展開していくのが楽しい。 私は3人の男に注目してきた。 父と、父方と母方の祖父である。 父は母の言いなりで意見が言えない気弱さだ。 父方のおじいちゃんは「また明日」が常套句で先送りばかり。 母方のじいじは、ばあばの庇護のもと不甲斐ない日々を送っている。 この3人がどう変わるのかが、物語の鍵になるのではないかと想像してきたのだ。 父は一度は反抗してみたものの不発に終わりくすぶっている。 父方のおじいちゃんは、今やると変化が見られた。 でもまだまだだ。 先週は母方のばあばが病気で死んだ。 この一族を束ねる要の存在だったにも関わらず死んでしまった。 来週水曜日が最終回だという。 3人の男たちはどうなるのか、母を筆頭とする3人姉妹はうまくやっていけるのか、それぞれの家族模様も収まっていくのか、母に大反対されているカホコの恋は成就するのか、非行に走る従姉妹の糸は戻ってくるのか…。 これをあと一回でどう収めてくれるのか。 興味が尽きない。 (街路にあって目を引く瑠璃茉莉 (るりまつり)。 水色のくっきりした5弁花が素晴らしい。 東京・練馬にて) 宍道湖の上には黒い雲がかかっており遠くは見渡せない。 松江方面は霧が深いのだろう。 霧も雲も混然となって辺りは日の出を待っていた。 簸川平野は昨日に続き今日も霧がかかった。 霧には濃淡がある。 車で走ると波のように流れを感じる。 収穫を終えた田んぼにドヨンと霧が乗っている。 粟など雑穀が混じった稲穂の群落には白い靄が入り込んでいる。 手入れのよくない大豆畑にも霧は差し込んでいる。 霧は日の出とともに消え去った。 動いていないと寒かった。 駐車していた車は暑さで蒸した。 ツクツクボウシやミンミンゼミが鳴いている。 夏の名残はたくさんあるが秋は今ここにある。 (背の高い大きな花、ジンジャー。 深緑の葉っぱに清い白色。 香りはクチナシを弱くしたよう。 霧の朝に似合う) 評論家の小林秀雄は詩人について、こう論じている(美を求める心『読書について』中央公論新社)。 詩人は表現者である。 そして分解する人であるとともに、統合する人でもある。 そして普通の人が思いもしなかった事と事、物と物をつなげて新しい地平を見せてくれる。 詩人は、思うにまかせぬ悲嘆にくれる弱きを助け、傲慢な強きをくじくのだ。 一輪の花に美しい姿がある様に、放って置けば消えて了う、取るに足らぬ小さな自分の悲しみにも、これを粗末に扱わず、はっきり見定めれば、美しい姿のあることを知っている人です。 (中略)これを読んで、感動する人は、まるで、自分の悲しみを歌って貰ったような気持ちになるでしょう。 悲しい気持ちに誘われるでしょうが、もうその悲しみは、ふだんの生活のなかで悲しみ、心が乱れ、涙を流し、苦しい思いをする、その悲しみとは違うでしょう。 悲しみの安らかな、静かな姿を感じるでしょう。 時折、クライシスに神経をすり減らし、有頂天に喜び躍ることもあるだろう。 日常は繰り返す。 微細な違いはあっても同じようなことを繰り返すのに意味がある。 それは安定の別名であるからだ。 時折、ふだんとは違う非日常がやってきて、ドギマギしたり楽しんだり知恵を絞ったりする。 これも必要なことだ。 危機に襲われることがある。 突然のケガや病気、不慮の事故もあるかもしれない。 自分に起こることもあれば、家族や縁者に襲いかかることもある。 クライシスにどう対処していくかが、危機管理のいろはでもある。 来てほしくない出来事ではあるが、想定しておくに越したことはない。 ピンチはチャンスとも言うとおり、そこでの動きが後々局面を変えていく。 事態が好転するよう全力を尽くしたい。 魔は天界に棲むという言葉がある。 物事が成功裏に終わり、周囲からも絶賛される状態になると人は有頂天になって冷静さを失いがちだ。 チャンスに隠れてピンチは暗躍する。 日常的な安穏な生活は望ましい。 しかしそうは問屋がおろさない。 時折骨休めをしながらも、懸命にそして賢明にもがいていこう。 (古の人がもがいて苦しんで、かきむしった泥壁…ではない。 石見銀山・大森のメインストリートにある群言堂本店の壁。 庄屋屋敷を再生したステキなショップ・ギャラリー&カフェだ) 映画『スパイダーマン ホームカミング』は、成績優秀だがパラノイア的にしゃべくりまくり、頭に何か浮かんだらすぐさま動きだし、無謀にも単独で相手を懲らしめようとする少年が主人公だ。 しかも反省なく同じことをくり返す。 見ているうちに私はだんだん不快になってきた。 それを諫める大人が、アイアンマンのトニー・スターク。 幸いに最後はスパイダーマンも成長し、次回作に乞うご期待!で終わった。 いわば少年の成長譚である。 激しいアクションの連続だった。 思わず息を止めてしまうほど目を見張る動きに圧倒されはしたが、所詮は空想的技術(21世紀初頭の今は、という意味)を描いているわけで、疲れるほどのことはなかった。 もちろん映画はうまく収まってくれるわけだから。 ソニー・ピクチャーズとマーベルが相互契約を結び、スパイダーマンは見事にアベンジャーズのキャラクターに参入した。 次回の「アベンジャーズ」はもっと楽しく派手になることだろう。 さらに「ワンダーウーマン」まで参加することになったら、もっともっと素敵になるだろうな。 (仮にスパイダーマンがゴジラに挑んだら、どちらが勝つだろうか。 そもそも挑む必要などないか) 行政暴力対策責任者を対象にした講習を受けたので備忘録として。 講師は県警のその道のプロ。 さらに暴力追放県民センター(略称暴追センター)からも歴戦の講師が赴いてくれた。 暴力的で不当な行為は暴力団に限ったことではないが、平成4年に暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律が施行され、暴追センターが発足した。 島根県でも平成23年度に暴力団排除条例を施行した。 現在も暴力団構成員と準構成員を加えると全国で4万人弱。 金づるを(いわゆるシノギ)求めて反社会的勢力は蠅のようにたかってくる。 不当な要求は断固拒否しなければならず、警察や暴追センターとの連携が重要だ。 雑音防止のために下にタオルを置くとか、ハンカチで包んでポケットに入れる工夫がクリアな証拠を生む。 (夏の青空に映える瑠璃柳(るりやなぎ)のようにみんな綺麗でいてくれたらいいのに…) 大きなスペード型の葉っぱ。 ツルを伸ばして、あれよという間に一面を覆いつくすのが葛(くず)です。 かつては葛餅の葛粉を根からとったり、風邪をひいたときに発汗や鎮痛のため使っていたといいます(生薬の葛根湯はひき初めに効く)。 茎は強靭ですから、カゴを編んだりロープとして使っていましたが、今はほとんど使われません。 林と草地、林と畑の境目あたりに陣取って根と茎を広げ木や他の草にも絡みつき、ずんずん侵食しますからやっかいな存在ではありますが、葛は別名「森のマント」と呼ばれます。 暑さ寒さを和らげ、湿気も適度に保つのです。 マントの奥には多くの生物が棲んで食の連鎖も盛んです。 花に蜜と花粉を求め、虫や蝶、カエル類を求めて鳥がやってきます。 花がこのとおり、案外にきれいなんです。 藤の花に似ています(同じマメ科)。 しかもいい香りがします。 クチナシほどとは言いませんが、癒される甘い匂いです。 明治の頃にアメリカに輸出されたそうです。 園芸用に持っていかれたといいますから、繁茂する葉の陰で密やかに香る姿が好まれたのかもしれません。 でも今では、アメリカでも外来迷惑種として、バッサバッサと切られているようですね。 珈琲を飲む。 ホットコーヒーがいい。 舌に熱さを感じ、苦味が唾液と混じって舌を通って喉へと流れ胃におさまっていく。 口中に苦味とともに食べ物が残す旨味が、淡い甘味となって感じられる。 珈琲の甘さでもあろう。 漆黒ではない茶系の黒。 黒鳶色とでも言うべきか。 カップ内側に茶色の泡が張りついている。 湯気が珈琲の表面をなぞり立ち上る。 磁気の器と皿。 絵と釉薬の具合がおもしろく、少し凹凸がある。 ミルクを入れた。 表面に残り渦を巻く一方で、勢いよく注がれた白い濁りは底から持ちあがって混ざる。 熱さの対流で白と茶色が渦を巻く。 グラデーションが刻々動くのは見飽きない。 スプーンでかき回す。 一気に単色になるかと思いきや、完全には混じらない。 ミルクが入り味は変化した。 口中で甘味を感じ、余韻に苦味が出る。 ブラックのときとは反対だ。 歯ぐきに入った汁が唾液とともに喉を下っていく。 デザートのケーキに手を伸ばす。 スポンジもクリームもぐっと甘く感じる。 珈琲の甘味とは異質の甘さ。 グラス入りの冷水を飲む。 珈琲とケーキが洗い流される。 するとまた別の甘味がやってくる。 水って美味しいな、氷の音がカラコロ鳴って涼しげだ。 おいしかった食事と珈琲の余韻を残して、あの日の外食は終わった。 ああ、満足した。 (夏の終わりに咲く落花生の花。 かわいらしく涼やかだ。 そして地に根を張って強い。 花が終わると柄が伸びて地面にもぐり実が生るという。 今年は観察しよう) 『おしゃれ泥棒』はオードリー・ヘプバーンが30代中盤の映画である。 題名を巡って意外な展開が度々ある。 ニコル(オードリー)が泥棒かと思いきや、泥棒は深夜忍び込んできたハンサムな男。 この男シモン(ピーター・オトゥール/アラビアのロレンスの主演)がおしゃれなのか? 確かにタキシードは着ていたが、そんなはずはない。 オードリーの下着姿も含めて、シーンごとに変幻する衣装に目を引かれる。 白、赤、黄、黒、紺など多くの色を駆使したオシャレさんであった。 ジバンシーのデザインなのだろう。 ニコルはやがて危ない橋を渡る。 シモンとともに厳重に警戒された美術館に泥棒に入るのだ。 父親が美術品贋作の作家兼ディーラーとして逮捕されるのを防ごうとする孝行娘。 だから泥棒さんの協力を得ようとした。 シモンが美術鑑定士兼探偵であることも知らずに…。 カネの力にあかせて札束を振り回すアメリカ人美術収集家を揶揄していた。 原題は「How to steel a million」。 百万ドルの盗み方という題のとおり、欲深いアメリカ人から100万ドルをせしめるよう話は進む。 a millionには「素晴らしい」という意味もある。 すなわち可憐にして美の化身、お茶目にしてクリクリ動く大きな目のいたずらっ子。 好きになった途端に情熱的なキスで迎え入れるニコルに捧げられる題名であり、オードリーへの賛歌なのだ(多分…)。 値段のつけられない素晴らしいニコルの心を盗んだシモンがうらやましい。 (どんな艶やかな花だってオードリーの前では添え物でしかなかったことだろう。 ) 政令指定都市というのがあります。 現在20都市が指定されています。 私はかつて厚生省で仕事をしていたことがありますが、そのころ指定都市は10しかありませんでした。 1956年に制度が始まり、戦前からの五大都市が最初に指定されています。 名古屋市,横浜市,京都市,大阪市,神戸市。 続いて、 北九州市(1963年)、 札幌市,福岡市,川崎市(72年)、 広島市(80年)。 これで10都市です。 しばらく間をおきますが、 仙台市(89年)、 千葉市(92年)、 さいたま市(2003年)、 静岡市(05年)、 堺市(06年)、 新潟市,浜松市(07年)、 岡山市(09年)、 相模原市(10年)、 熊本市(12年)。 これで、20都市になりました。 もともと政令指定都市というと100万都市のイメージです。 規定上は50万人以上でも可能なのですが、実際は静岡市が70万人で最小です(ちなみに横浜市は373万人のメガ都市)。 なんと全国民の2割が政令指定都市に住んでいるんだそうです。 東京都も入れると3割以上。 これでは一票の格差が大きくなりますね。 (桃花色がさわやかな花虎ノ尾。 政令指定都市とは全く関係はございません) 映画『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』。 舞台となった千葉・飯岡町は九十九里浜の北端の町。 旭市と合併して今はない。 茂下駅は総武線の架空駅である。 なずな(声は広瀬すず)は典道(菅田将暉)とともに「もしも」の旅に出た。 地名がもしも(茂下)、灯台の明かりのフィラメントは「if」に輝いている。 魔法の玉が誘って二人は『if もしも』の世界に引きこまれる。 最初は、もしもプールで50m競争に勝っていたら…。 2度目は、もしも一緒に電車に乗っていれば…。 魔法の玉は二人をおかしな時空に誘った。 タラ・レバだ。 現実世界でタラ・レバはない。 恋するかどうかも分からない二人だが、恋の奇跡をくり返す。 夏の別れの一日に、花火が上がった一瞬に、後悔をくり返すまいと中学生二人は奇跡に乗じて時空を楽しんだ。 奇跡は、なにも恋だけではない。 友達関係にしても家族にしても、勉強にしても部活にしても、後悔ばかりの毎日に奇跡を起こしたくなるもんだ。 もう一度あのときに戻りたい。 タラ・レバはある。 魔法の玉は持てないけれども、くり返すに等しいほどの時間が少年たちには、たっぷりある。 望みはかなう。 きっとイメージのとおりに事は運ぶ。 諦めなければ道は開ける。 少年よ若者よ、期待せよ。 タラ・レバを引き起こせ! そんなメッセージが聞こえてくる。 タラ・レバ、それは未来にこそある。 文科省が8月17日付けで「平成29年度自殺予防週間の実施について」と題して通知を出した。 18歳以下の日別自殺者数を過去40年間でみると、学校の長期休業開けやゴールデンウイーク等連休後に自殺者が多いことがわかる。 なかでも9月1日が突出している。 明日は9月1日。 小中高すべてがこぞって始業式を迎えることは今ではなくなったが、夏休み明けは危険である。 タラ・レバでよい。 時間はある。 タラ・レバは未来だ。 苦しくても今をしのいでほしい。 若い君たちよ! そんなメッセージを映画に感じたのは私だけか? (少年たちよ、見てみたまえ。 下から見ても花火とは円弧を描くものだと分かるだろ? 円弧はすなわち球体。 上から見ても横から見ても花火は丸いのだよ。 ここでは展示の見方をかえてみた。 下から見るのではなく、横から見たのである。 まるで、映画『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか? 』のようだ。 横から見るというのは、展示品だけパッと見るやすぐに下の説明書に目を移すことを止めて、まずは展示品をじっくり眺めるようにするというものだ。 要は能書きにとらわれず、絵や文書を読みこんでみて、補足としてキャプションを読んでみようとの試みである。 結論から言えば、絵画などの美術品はともかくとして、丁銀や銀コイン、古文書、古い地図、銀製品などを説明書きなしに解釈していくのは難しい。 順を追ってじっくり読み進めなければ、全体像がわからない。 ただ疲れる。 銀を手にとって、ためつすがめつ愛でてみなければ価値がわかるまいと思う。 銀は腐食しにくい。 金ほどではないにしても、貨幣や共通の財産として価値が急速に高まり、世界的に需要が増えた。 スペインやポルトガルを中心とした西洋のグローバル経済が浮上していった。 すなわち大航海時代であり、中世から近世に時代が移る際の立役者が銀だったのではあるまいか。 その中心的役割を石見銀山は果たした。 今はひなびた中山間地になってしまったが、石見銀山には壮大なロマンがある。 それらを下から見るのがいいか、横から見るのがいいかは、銀山に関しては少々勉強が足らないことがよくわかったのが、収穫だったといえる。 (ミントの花も上から見るのと、下から見るのとでは違いがある。 角度を変えて順序を変えると、新しい視点が生まれる) 将軍様はおっしゃらなかった。 今朝発射した弾道ミサイルのことを事前に国際機関や周辺各国、特に日本に通告せよと、おっしゃらなかった。 日本では大騒ぎだ。 「ミサイル発射。 ミサイル発射。 北朝鮮からミサイルが発射された模様です。 頑丈な建物や地下に避難して下さい」。 Jアラートで日本政府が6時2分に茨城県から北の住民に避難を呼びかける。 直ちに菅官房長官も「これまでにない深刻かつ重大な脅威」と声明を発表した。 将軍様は事前に通告するな!とはおっしゃらなかったが、通告しないとこんなに騒がれる。 あとが心配だ。 かといって通告したらしたで、グアム沖へ落とすと予告した時のように各国がこちらを威嚇してくることはもちろん、トランプ大統領も核の発射ボタンを今にも押しそうな気配を漂わせた。 これもマズい。 今や将軍様の命令はもちろん言葉の端々まで、言われたとおりのことをするしかない状況だ。 下手に忖度し、無謀にも注進しようものならば、その日のうちに家族もろとも粛清されかねない。 私も外交筋の一員として心を痛める毎日だが、いかんともしがたいのだ。 写真はこの夏お忍びで訪れた世界遺産石見銀山の街並みだ。 大森地区では観光客と地元の人が調和して穏やかな雰囲気をかもし出していい感じだった。 隣国日本に大きな混乱をもたらしてはならないと思う。 一衣帯水の両国が共に栄える道はないものか。 と、今朝は想像の物語。 大型ハリケーンのハービーが米国テキサス州に上陸し、大雨と洪水の大被害をもたらしています。 ヒューストンでは取り残された人びとの救出作業が続いており、さらに雨は降り続くと予想されています。 2005年にカトリーナが襲来したときニューオーリンズを中心に千人を超える死者がいたことを思えば、小規模ではありますが、被害に遭われた方々の悲しみや如何。 お悔やみ申し上げます。 トランプ大統領が近々被災地を訪問するようですが、地球温暖化対策のためのパリ協定から離脱したトランプ政権です。 この甚大な被害を目の当たりにして、温暖化問題の深刻さを実感し気持ちを入れ替えてくれないかと期待しています。 (南アメリカ原産の柳花笠 (やなぎはながさ)は春から今もずっと咲いている。 シリーズ第1作を見て以来なので筋書きは今ひとつわからないが、金属生命体が車や飛行機からロボット形に変身する過程にはぞくぞくする。 地球外の金属生命体の善玉と悪玉が、一方は人類を守ろうとし、かたや人類を滅亡させて支配を広げようとする。 攻防の構図は同じである。 今回は善玉の総司令官オプティマスプライムが悪玉のディセプティコンに心を支配されて敵方についており、人類の側もトランスフォーマーすべてを敵とみなして戦う部隊TRFがあったりして、少々様相が違う。 善玉たちと共に闘うのが主人公ケイド。 そこにヒロインのヴィヴィアンが参入。 彼女はオックスフォードの歴史学教授という設定で、アンジェリーナ・ジョリー似のグラマラスな美女。 彼女もケイドと共に戦う。 アーサー王伝説が謎解きの鍵となり事態は収拾に向かう。 有史以前からトランスフォーマーたちは人類の戦争に関わっていたという驚くべき設定だ。 第二次世界大戦で連合国がドイツを撃退したことも金属生命体の助けがあったからだという。 眠気をもよおすこともなく、娯楽を楽しんだ2時間あまりだった。 (トランスフォーマーの躯体ではない。 上野動物園・爬虫類館のゾウガメの甲羅) 今夜は天頂に天の川が見えます。 ひさしぶりに見るすっきりした星空です。 夏の星座から秋へと移るのは9月半ば以降ですが、今日の昼間はムンと鼻を突く熱い空気を感じませんでした。 西の空には三日月が見えます。 数日前アメリカ合衆国で人々を驚喜させた日食を演出したあの月です。 月はどんなに騒がれようとも粛々と運行を続けます。 某気象予報士さんが夏の終わりを宣言しました。 西日本では(太平洋側を除く)、今日から空気がスッキリした秋のものに入れ替わったとのことです。 まだ暑い日はあるようですが、その文章は確実に秋が近づく喜びにあふれています。 スズムシが鳴いています。 エンマコオロギも涼やかな声を出しています。 マツムシだってやがて鳴き始めるでしょう。 風邪を引かないようにしなければなりません。 (日差しは強くても爽やかな空気が漂っていた今日の石見銀山。 大田市・大森にて) 今日は出雲工業高校の二学期の始まり。 多くの生徒が賑やかな空気をかもし出してくれて嬉しく思った。 始業式でのこと。 体育館の外の森で忽然とミンミンゼミが鳴きだした。 いつもの当たり前のパターンではない。 耳をそばだてた。 「いつもの」というのは最初の「ミーン」をのばして次の「ミンミンミン」を3、4回。 最後に長〜い「ミーン」を終えたら一瞬小休止して、同じことを繰り返すものだが、今朝のは違う。 その日手始めの鳴きだったのだ。 「ミンミンミンミンミンミンミンミンミン・・・」と際限のないほどに同じリズムと小さめの声でミンを繰り返す。 ゆったり粛々と鳴くのだ。 わたしは回数を数えた。 その厳かさがずっと続いてくれるよう願った。 ミンミンゼミは50回ほど厳粛なミンを繰り返してから止まった。 そして「いつもの」のように鳴き出した。 もちろん「いつもの」ヤツも好きだ。 森や林の中で響いて外までよく聞こえてくる。 ミンミンのひと声をとっても微妙な揺らぎがあって味わい深い。 それでも今朝の初っぱなの鳴き声を十数年ぶりに聴き惚れてしまった。 いつもの鳴きが始まったとき、校歌斉唱が始まった。 なんてステキなタイミング。 わたしはセミのように朗々と校歌を歌った。 宇宙を拓く工業の学びの道に励まなん、このフレーズがよく響いた。 (セキチクは大和撫子の仲間だが、長らく咲いている。 梅雨のころから今もなお) ちょっとあんた! なんであたしのことを屁だの糞だのって言うんだよ! 無礼じゃないかい? 小ぶりの白花。 メガホン形に深くえぐれた五つの花弁は白地だよ。 内側には五角形で臙脂色の模様がある。 いいだろ? 結構あたしゃ気に入ってんだよ、自分のことを。 誰だい、あたしを屁糞蔓 (へくそかずら)って名付けたのは? ホント失礼しちゃうよ。 バッカじゃねえの? だいたいね、あたしを手にとって匂ってごらんよ。 肉をたっぷり食べたあとの屁みたいに臭いかい? 道端で悪臭を放つ糞みたいに鼻をつまみたくなるかい? ちがうだろ? 少しはあたしを正当に評価してくれよ。 ツルを伸ばして夏に咲くから「夏伸び白蔓」はどうだい? つぼみが棍棒みたいだし朝露でも付いたらいい感じだから「朝露棒蔓」は? 今ひとつだな。 まっ名前はともかく、昔はな、茶色い実の汁をシモヤケやあかぎれに塗ったもんだよ。 あんたもやってみな。 それにしても毎日暑いじゃない。 お盆のころ涼しくなったもんだから、そのあと暑さがぶり返して大変よ! しかも雨は二週間も降ってない。 あたしゃ乾きに強いんだけどね、こうも雨の降る間隔あいてしまったんじゃ、さすがのあたしもお手上げだ。 ひと雨欲しいね。 この文は、ひとが生き抜くことの大切さを示す箴言として、さすがゲーテ!と言いたくはなるが、少し斜めから考えてみたい。 マラソン選手が苦しい息を吐きながらロードで練習する際に、あの電柱まで走ろう、電柱に行き着いたら、次の電柱まで、その次はあのマウンドまで、と小さな目標に達したら一つずつ一つずつ、次の目標を目指していく。 そうやって引き延ばしていくうちに、一定の練習をこなしていく。 そんな話を思い出す。 わたしは風呂に入る前に腕立て伏せをする。 80回くらいを目処にやる。 始めたばかりでは80回は遠くにある。 それを5回ずつ区切りを入れるのである。 20回が過ぎたら次は25回、続いて30回・・・。 そうすると80回は意外と早めにやってきて、100回くらいまでできることだってある。 何事も小さな達成目標を見つけていくことが大事だと学ぶのだ。 (茄子だって夕日に茄子紺が映えるまで育つのに、少しずつ大きくなっていく) 【耄】という字を知った。 音読みではモウ。 耄碌(もうろく)・老耄(ろうもう)と使う。 訓読みではオイボレ(老い耄れとも書く)。 かつては70歳以上の高齢者を意味していたが、今や80歳どころか90歳でもシャキシャキの人は多い。 惚ける(ほうける)や呆ける(ぼける)と同じ読みで、「耄ける」とも書くから、五感が鈍くなりぼんやりする様子は昔から老人の特質として顕著だったわけだ。 耄耄(もうもう)と重ねたら、耳元で大きな声を出してもらってやっと聞こえる程度ヨボヨボで歩くのは杖をついてやっとこさのお年寄りのイメージがわいてくる。 老の下の毛は単に音としてのモウを表すだけではあるまい。 毛のように細く弱くなる足腰を示すのではあるまいか。 などと、今夕は夢も希望もない話。 せめて、つい今し方出雲の空に見えた虹でもご覧にいれましょう。 ドラマでよくある回想シーン。 主人公は回想を語り終わり、相手方はその記憶を寸分の狂いもなく理解する。 視聴者は以前の場面を再確認し、そこにいる者すべてが認識を一致させて、ドラマは滞りなく進む。 わたしはいつも憧れてしまうのだ。 まるで記憶データがダウンロードされたかのように、ダンブルドア校長が憂いの篩(ふるい)で記憶の糸をハリー・ポッターに注いだように、ある出来事や周りの状況が精確に伝わっていく。 なんて素晴らしいんだ。 そんなことは決して有りえない。 記憶は曖昧模糊として頼りない。 記憶は脳に押し沈められて容易に現れてこない。 勘違いもある。 強烈な印象によって記憶が曲げられてしまうことすらある。 その結果が「真相は藪の中」になるのである。 しかも記憶の中身を説明するのは本当に難儀だ。 時系列で順を追って説明するのか、それとも核心部分に絞るのか。 それによっても相手の受け取り方と理解度は違ってくる。 記憶と事実。 両者は永久に一致することなど有りえないのだ。 (この百日紅(サルスベリ)をどれほど長らく観察しても、記憶に頼って細部の色形を説明するなんて不可能だ) 藤山浩氏(持続可能な地域社会総合研究所長)は、2060年の島根県の人口は秋田県を上回ると述べている(島根39万5千人、秋田37万6千人)。 根拠は若い世代の女性の流出率では島根が相対的に低く、子育て世代が安定して推移するからだという。 ちなみに現在は秋田が102万人、島根が69万人で33万人もの差がある。 氏は隠岐島前地域のフィールドワークを重ねた結果、安定推移の理由として考えられるのが、他者への優しさがあり、地域ぐるみで(U・Iターン者を)支える意識が強みとなっているとのこと。 さらに、「人間らしい暮らしの良さに気付いた人から田舎に帰る。 女性の方が敏感に変化を感じ取」るから島根への回帰が進むのだと述べる。 【以上、「島根定住考・下」8月14日付け山陰中央新報より】 40年後は40万人か。 寂しいもんだ。 私が就職したころに79万だった。 それが今や69万まで減って、さらに4割減になるなんて信じられないけれども、現実に統計学はそう突きつけているのだ。 さて「他者への優しさと地域ぐるみでUIターン者を支える意識」を考えてみる。 多くの移住者を受け入れる島前地域や山間地の邑南町には確かにその意識は強い。 だが、私の住む田舎を含めた田舎の人の意識はどうか。 劣等感や優越感に裏腹の猜疑心や嫉妬心、面従腹背と憎悪が絡みあった現実の姿、集団化した時のあの異質な空気感、陰湿なイジメ体質・・・そうした暗い現実を見聞きすると、他者への優しさを期待することができるだろうか、と気持ちがしぼんでしまうのだ。 (水引草は上から見ると赤く、下から見ると白く見えるのを紅白の水引に見立てたとか。 人口増加と維持は望めないにしても、せめて地域の存続を水引をもって祝おう) 昨年夏、西日本在住の50代女性が、弱った野良猫を保護したときに噛まれて亡くなられたといいます。 マダニが媒介する重症熱性血小板減少症候群(SFTS)を発症したのです。 マダニが直接吸血してウイルス感染したのではなく、哺乳類を介して感染し死亡した例は世界で初めてだそうです。 感染し発症すると、発熱や下痢、嘔吐、さらには意識障害や失語、出血症状、すなわちSFTSとなります。 日本では2013年に報告されて以来、これまでに266人が感染し57人が死亡しています。 致死率21%。 殺人蟻と恐れられているヒアリよりずっと危険です。 マダニは人里離れて棲むだけではありません。 庭先や裏山、畑、あぜ道にも多く生息します。 野ネズミ、野ウサギ、鹿、猪から吸血してウイルスを感染させるので野生動物との接触はできるだけ避けよと厚労省は言っています。 猫でもこうした例が出たとおり、散歩中の犬からも吸血するといいます。 油断がなりません。 小さい頃わが家で飼っていた猫にダニが食い込んでいたことがあります。 指でつまみ取ろうとしても無理でした。 赤黒くピチピチに膨らんでいたことを思い出します。 マダニが活発に活動するのは3月から11月。 幼ダニ、若ダニ、成ダニの各ステージで1回ずつ、つまり生涯で3回吸血するのです。 SFTSのワクチンを国立感染症研究所が開発中ですが、当面草刈りや薮、山に入る際には少々暑くても皮膚を露出しないよう気をつけなければなりません。 (野山にはマダニがたくさんいる。 花火の火花の比ではない) 今朝のラジオ体操は長崎・大村市。 講師に応えて来場者の明るい挨拶が響きわたり、ラジオ体操の歌がこだましていく。 夏休みの間、講師やアシスタント、ピアノ伴奏者が全国各地を巡回する日本の夏を代表する行事。 戦前から始まったものだそうだ。 子供の頃、この放送を毎朝聞いた。 第1体操が終わると補助体操がある。 首を中心とした体操でピアノ伴奏はアドリブも入って、今思えばオリジナリティあふれる工夫がいっぱいだったのに違いない。 しかし私たち子供はタラタラして何もしなかった。 そして第2体操。 これもチンタラやって、終わりの音楽が流れ10分間は過ぎる。 主催する自治会の家の人が判子を押してくれて(毎夏持ち回りだった)、ラジオ体操カードのマスを今日も埋めた。 マスが赤い判子で詰まっていくことだけを楽しみに眠いのをガマンしながら通ったものだ。 だから体調不良で出られないのは屈辱ものだった。 親戚に行っても当地で必ず出た。 懐かしい子供のころの記憶。 (女郎花(オミナエシ)は秋の七草。 でも7月初めから咲いている。 小さな星形がかわいらしい) 先日クレーム対応研修を受けた。 講師はソフトブレーン・サービス(株)の湯浅宗浩氏で、満足のいく研修だったことに感謝したい。 クレームという言葉について認識を改めた。 クレームとは居座って高圧的に要求するイメージをもっていたが、いちゃもんを付ける(理不尽な要求)のと、クレーム(正当な要求)は違う。 クレームとは、困ったこの状況をなんとかしてほしいと相手が訴えているのだと。 確かにクレーム(claim)の訳語は要求や請求だ。 無体なないものねだりとは区別しなければならない。 目から鱗の落ちる思いがした。 大切なのはクレームを起こさない職場づくり。 接客のマナーが悪く、態度や言葉が雑で乱れていると相手が不快に思う。 それでなくてもイラつく相手の怒りに火をつけないように、身だしなみ(名札着用、立ち上がって応対、きちんとした服装)を整え、よい応対(うなづく、相づちをうつ)をすれば、クレームが倍加するリスクは低い。 改めて公務のプロであることを肝に銘じようと思う。 詳細は記さないが、相手の感情に巻き込まれないで、冷静に事実確認をし、謝り方にも細心の注意を払うこと(事実確認ができていない段階では謝罪連発は危険)などを具体的に学ぶことができた。 特に私の場合、クッション言葉に使い慣れていない。 相手の心情を逆なでしないように「ご足労をおかけしますが、」「恐れ入りますが、」「お手数ですが、」「差し支えなければ、」、これらをサラリと使えるように使用頻度を上げていきたい。

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【講義のようす】 : 要約筆記者になりたい

甲賀 ゆれ の 説明 として 正しい もの は 次 の うち どれ か

彼は【どの】競技の選手でしょう。 次の選択肢のうち、開催が 11月に延期となったのは【どれ】でしょう。 中華人民共和国の「国務院」は、 日本を始めとする他国での 【 どれ 】に最も近いでしょう。 4年連続で幕内初優勝力士が 誕生している大相撲「1月場所」。 今年(2019年)で、プロ野球・日本シリーズは 第【 何 】回を数えるでしょう。 ウィキペディア日本語版「季語一覧」によると、 『サッカー』は【どれ】に分類されるでしょう。 空欄に入るスポーツ選手は【 誰 】でしょう。 In May 2019, 【 誰 】 was awarded the Presidential Medal of Freedom, and is the fourth golfer to receive the honor. 【 何 】城は、……徳川家康の将軍宣下に伴う賀儀と、 徳川慶喜の大政奉還が行われ、 江戸幕府の始まりと終わりの場所でもある。 また、後の近代においては大正天皇即位の儀式 である大典の饗宴場として使用された場所となった。 【 誰 】は、室町幕府第15代(最後)の将軍 (在職:永禄11年(1568年) - 天正16年(1588年))。 信長が本能寺の変によって横死した後も将軍職にあったが、 豊臣政権確立後はこれを辞し、豊臣秀吉から山城国槙島1万石 の大名として認められ、前将軍だった貴人として遇され余生を送った。 応仁の乱は、室町時代の応仁元年に発生し、 文明9年までの約11年間にわたって継続した内乱。 十数年に亘る戦乱は和睦の結果、 【 何 】軍が解体され収束したが、主要な戦場となった 京都全域が壊滅的な被害を受けて荒廃した。 空欄に入る漢字1字を、《漢字に変換》してお答え下さい。 空欄に共通して入るカナ6文字は? 『【 何 】とヴァルトブルクの歌合戦』は、 リヒャルト・ワーグナーが作曲した、 全3幕で構成されるオペラ。 WWV. 一般的には『【 何 】』の題名で知られている。 空欄に共通して入る漢字3文字は? ルーペ [編集] 「【 何 】」はこの項目へ転送されています。 名前が「【 何 】」であるYouTuberの 東海オンエアのメンバーについては「東海オンエア」をご覧ください。 空欄に共通して入る単語は【 何 】でしょう。 鉄道においては、車両が【 何 】に接触することは異常事態や事故であり稀で、 鉄道車両用の【 何 】は頻繁に車両が接触や衝突することを考慮しておらず、 【 何 】自体が破損することで衝突の衝撃を緩和する構造のものが多い。 空欄に共通して入る方角は? 【何】町田グランベリーパーク駅は、…… 東京都に所在する鉄道駅としては 最も【何】に位置している。 空欄に入る1桁の整数は?(算用数字可) 「がん」の進行度を表すものとして「TNM分類」や 「ステージ分類」がある。 …… ・ステージ【 何 】 がん腫瘍が広がっているが、 筋肉層でとどまっている。 リンパ節への転移はない。 空欄に入るアルファベット1文字は? 折茂武彦は、……国内トップリーグ日本人選手初の通算10000得点を達成。 50代近くになっても未だにそのシュート力は衰えていない。 空欄に入るキャラクターは【 誰 】でしょう。 【 誰 】は、鳥山明の漫画『ドラゴンボール』 およびそれを原作とするアニメに登場する架空の人物。 …… 孫悟空とは亀仙流の兄弟弟子にして無二の親友。 悟空と共に戦う仲間の中では亀仙人、ヤムチャに次ぐ古参。 空欄に入るサイト名は【 何 】でしょう。 【 何 】は、株式会社ぐるなびが かつて運営していた、時刻表のウェブサイトである。 ……2019年3月29日を以ってサービスを全て終了した。 空欄に入るのは【 何 】でしょう。 10月31日は、グレゴリオ暦で年始から304日目にあたり、 年末まであと61日ある。 10月の最終日である。 …… ・1989年 - 三菱地所がニューヨークの 【 何 】・センターを買収。 空欄に入るのは【 何 】でしょう。 禁門の変は、元治元年7月19日(1864年8月20日)に、 京都で起きた武力衝突事件。 【 何 】御門の変、元治の変とも呼ばれる。 畿内における大名勢力同士の交戦は大坂夏の陣(1615年)以来であり、 京都市中も戦火により約3万戸が焼失するなど、太平の世を揺るがす大事件であった。 空欄に入るのは【 何 】でしょう。 元々は、【 何 】センターとして外部からの電話対応業務を行ってきたが、 近年、電話対応業務だけでなく、FAX、Eメール、チャットやウェブを利用した問い合わせなど、 複数のメディアが使われる事になってきた為、 ……コンタクトセンターという名前を使用するようになった。 空欄に入るのは【 何 】の停車場? 『銀河鉄道の夜』は、宮沢賢治の童話作品。 …… 七、北十字とプリオシン海岸 北十字の前を通った後、【 何 】の停車場で20分停車する。 二人はその間にプリオシン海岸へ行き、クルミの化石を拾う。 空欄に入るのは【 何 】駅でしょう。 九州鉄道は、九州初の鉄道路線を開通した会社である。 …… 初の路線は……後に鹿児島本線の一部となった。 なお、2017年現在も開通当初から現存する駅は、 【 何 】駅を含めた鹿児島本線の二日市駅、原田駅、田代駅、鳥栖駅の5つである。 空欄に入るのは日本より人口の多い国です。 【どこ】でしょう。 菊池 梨沙(きくち りさ、1995年〈平成7年〉6月3日 - )は、 日本のグラビアアイドル。 夫はTOKIOの城島茂。 …… 母が日本人、父が【どこ】人のハーフ。 空欄に入る駅名は【 何 】でしょう。 J【 何 】駅は、……東日本旅客鉄道……の鉄道駅(臨時駅)である。 2019年(平成31年)4月20日開業。 平成の日本において最後に開業した鉄道駅となった。 また、……日本で唯一の「ヴ」がつく駅である。 空欄に入る演目は【 何 】帳? 2008年8月2日、タモリの才能を見抜き、地元・福岡から上京させて、 自宅マンションに居候までさせた 漫画家・赤塚不二夫が逝去。 …… その告別式では「私もあなたの数多くの作品の一つです」との弔辞を読み上げた。 この弔辞は7分56秒にも及ぶものであり、 手にしていた紙を何度も見ながら時折涙声で読んでいたが、 実際にはその紙は全くの「白紙」で、 【 何 】帳のごとく、何も書いていなかった。 空欄に入る漢字2文字は? 後桜町天皇は、日本の第117代天皇。 2019年(令和元年)現在、最後の【 何 】天皇。 空欄に入る曲名は【 何 】でしょう。 タイトルの『【 何 】』は、上越新幹線の東京発新潟行き下り列車で、 2012年9月30日から2019年3月15日まで実在した便名。 歌唱メンバーは、兼任の柏木由紀を除く 発売当時に在籍していた25名となっている。 空欄に入る見出しを《 漢字に変換して 》お答え下さい。 【 何 】(指定:《 漢字に変換 》してお答え下さい。 ) ・米米CLUBのシングル。 本稿で記述。 ・中国語で「頑張れ」の意味。 空欄に入る見出し語(の一部)は? 【 何 】スクールの概念はきわめて多義的で、 1. アメリカの授業料無償の公立小学校…… 6. 不登校の子供が通う非学校的な施設(日本) などの意味で用いられる。 空欄に入る見出し語の一部は? 【 何 】作戦は、アメリカ軍の作戦名の一つである。 …… 2011年3月11日、日本で発生した 東日本大震災に対して行う 災害救助・救援および復興支援を活動内容とする。 空欄に入る見出し語の一部は? 2019年【 何 】犯条例改正案…… 空港アクセス鉄道の線路上に障害物を投げ入れたり、 近隣にある東涌駅にデモ隊が乱入し、駅の設備を破壊するなどで 長時間にわたり運転を見合わせるなどの影響が出た。 空欄に入る見出し語は? 【 誰 】山秀男は、新潟県……出身で立浪部屋所属の元大相撲力士。 そのぶちかましの威力から蒸気機関車の代名詞 「デゴイチ」の異名をとった。 また、額の広いことで「デボネア」とのあだ名もあった。 空欄に入る見出し語は【 何 】でしょう。 【 何 】は、日本において 天皇の肖像写真や肖像画を敬って呼ぶ語。 空欄に入る見出し語は【 何 】でしょう。 【 何 】は、江戸時代における 江戸幕府の直轄地の俗称で、 このほか幕府直轄領、徳川幕府領、徳川支配地、幕府領、幕領 など様々な呼称があり、必ずしも絶対的な単一の歴史用語ではない。 空欄に入る見出し語は【 何 】でしょう。 【 何 】は、浅井企画所属のお笑いコンビ。 コンビ名の由来は「どぶのような男(森)」と 「ろくでもない男(江口)」。 キングオブコント2019王者。 空欄に入る国は【どこ】でしょう。 【どこ】国立博物館は、かつて……存在した博物館である。 建設から200年が経過し、老朽化が進んだため補修工事の必要性が指摘されてきたが、 2016年の……オリンピック以降は予算が削減され、工事は進まなかった。 2018年9月2日に大規模火災が発生し、建物はほぼ全焼。 2000万点以上あった収蔵品の多くが失われた。 空欄に入る女性は【 誰 】でしょう。 ・2015年 - ニコニコ生放送で活動を開始。 ・2016年 - 同じくニコ生配信者であったおかなちゃんと共に「箸ころ少女」の名前で活動を開始。 ・6月1日、YouTubeに「箸ころ少女」のチャンネルを開設。 ・8月25日、自身のTwitterにて「箸ころ少女」の解散を発表。 これに伴いYouTubeのアカウント名が「【 誰 】ちゃんねる」へと変更された。 ・2019年 - チャンネル登録者数100万人を突破。 空欄に入る人物は【 誰 】でしょう。 【 誰 】(……、1988年11月1日 - )は、 1990年代から2010年代にかけて 活躍した日本の卓球選手。 宮城県仙台市生まれ、身長155cm、血液型B型。 空欄に入る政策は【 何 】でしょう。 【 何 】に反対した日本のアーティストでは、 1989年に「青空」をリリースしたTHE BLUE HEARTSや、 現地の政治デモに参加した爆風スランプの サンプラザ中野くんとパッパラー河合が有名。 空欄に入る精神科医は【 誰 】でしょう。 夢を占いから学術的研究の対象にまで 持ち上げ夢分析をはじめたのは 【 誰 】であった。 空欄に入る臓器は【 何 】でしょう。 胆石(たんせき、英語: gallstone)は、 【 何 】から分泌される、胆汁の成分が 固まって胆嚢内・胆管内に溜まったもの(結石)である。 空欄に入る単語(の一部)は【 何 】でしょう。 「14」はゲーム【 何 】ファンの間で 通じる暗号のようなものであり、 『グレイルクエスト』へのオマージュ要素 を含む他作品でもしばしば死を意味する番号として扱われる。 空欄に入る天皇名は? 【 何 】天皇の……葬儀そのものは 泉涌寺において仏式で営まれた。 歴代天皇で 最後に仏式で葬儀が営まれた天皇となった。 見出し語を《 アルファベット4文字 》の略称でお答え下さい。 【 何 】 とは、運営主体を問わず、 情報通信技術を活用することにより 自家用車以外の全ての交通手段による移動を 1つのサービスとして捉え、シームレスにつなぐ新たな『移動』の概念。 ( 第199回国会開会式 ) ここに,国会が,【 何 】の最高機関として, 当面する内外の諸問題に対処するに当たり, その使命を十分に果たし,国民の信託に応えることを切に希望します。 アニメ『放課後さいころ倶楽部』第1話のセリフです。 空欄に入るモロッコの都市は? 大野翠(CV. 空欄に入る歌詞は【 何 】でしょう。 北海道釧路市知人町にあった 太平洋石炭販売輸送臨港線の駅です。 【 何 】駅と読むでしょう。 「鬼滅の刃」の中で、全ての呼吸法の 開祖(始まり)とされるものです。 カナ1文字を正しい漢字に 《 変換 》してお答え下さい。 カナ部分のみを適当な 《 漢字に変換 》して下さい。 【 セントウ 】御所は、退位した天皇の御所。 【 セントウ 】とは本来仙人の住み処をいう。 カナ部分を、適した漢字に《 変換 》してお答え下さい。 空欄に入る2桁の自然数は【 何 】でしょう。 空欄に入るアニソン歌手は【 誰 】でしょう。 空欄に入るのは【 何 】(駅)でしょう。 空欄に入るのは【 何 】(本)線でしょう。 空欄に入る見出しの一部は【 何 】でしょう。 空欄に入る国は【どこ】でしょう。 空欄に入る自然数は【 何 】でしょう。 空欄に入る自然数は【 何 】でしょう。 空欄に入る人物は【 誰 】でしょう。 (新明解) 空欄に共通して入る《 かな3文字 》は? 【 何 】 (一)接待役の主人。 主催者。 (二)女性客の相手をする男性。 (三)【 何 】 コンピューター。 (広辞苑) いし【石】 (1)岩より小さく、【 何 】より大きい 鉱物質のかたまり。 空欄に入る競走馬名は【 何 】でしょう。 空欄に入る熟語は【 何 】でしょう。 2019年1月の「レイクサイド世界選手権」 を制した日本のダーツプレイヤーです。 読みを《 かな 》でお答え下さい。 空欄に入るカナ5文字は【 何 】でしょう。 空欄に入る漢字2文字は【 何 】でしょう。 空欄に入る漢字1文字は【 何 】でしょう。 いわゆる「国鉄三大ミステリー事件」を 起きたのが早い順に並べ、「123」など3桁の数字で答えなさい。 次の漢字を並べ替えて 出来るのは【 何 】駅でしょう。 次の文章を並べ替えて出来る 2019年秋アニメは【 何 】でしょう。 世界陸上2019、男子400メートルリレー決勝 に出走した第1から第4走者を、 「1234」などの4桁の数字で答えなさい。 結晶のような構造をもたない 「非晶質」のことを指す 単語に並べ替えて下さい。 カナで示した異名を、最も適した 《 漢字に変換 》しなさい。 1980年代・最強のジャンパーとされる スキージャンプ選手のマッチ・ニッカネンは、 日本では「【 チョウジン 】」として親しまれた。 94万kW)営業運転開始 これらの情報から連想されるのは 【 何 】電力株式会社でしょう。 北海道電力株式会社 (Hokkaido Electric Power Co. , Inc. これらのヒントから連想される アニメのタイトルは【 何 】でしょう。 空欄に入るのは《 【 何 】み 》でしょう。 スポーツ(アメリカ英語: sports、イギリス英語: sport)とは、 一定のルールに則って勝敗を競ったり、 《 【 何 】み 》を求めたりする身体運動の総称である。 空欄に入る皇帝は【 誰 】でしょう。 (表記ゆれを認めます。 ) 【 誰 】の西征は、13世紀にモンゴル帝国によって行われた征服戦争。 1219年から1223年までの一連の戦闘によって モンゴル帝国は飛躍的に領土を広げ、1225年に帰還した。 「大正野球娘。 本大会の出場枠は、この大会から 【 何 】か国となったでしょう。 労働安全衛生法や労働安全衛生規則では【何】m以上の高所作業を行う場合、 事業者は適切な墜落防止措置を行う必要があ……るが、 これらは労働ではなく教育の一貫で行われている 学校での組体操では適用されず、対策も特に行われていないことも多い。 よっちゃん食品工業株式会社 (YOTCHAN FOODS CO. , LTD. 2%) 2位 : 羽生結弦(8. 0%) 3位 : 大谷翔平(6. 現在、「京都郡みやこ町」 (みやこぐん・みやこちょう)があるのは、 京都府ではなく、【 何 】県でしょう。 ちなみに空欄には ある1等星と同じ名前が入ります。 (指定:《 記号不可 》、日本語でお答え下さい。 路線名の2つの漢字が示す 当時の地名は、 【 何 】(府)と仁川でしょう。 」俳句他流試合で披露され、 審査員・高野ムツオに「作者(Kis-My-Ft2千賀健永)も 句の良さを知っていない」と評された俳句です。 空欄に入る季語は【 何 】忌でしょう。 」の 第1話「豚汁の味」の挿入歌として流れた、 今から30年ほど前のヒットソングは 『【 何 】』でしょう。 作品名には「娘」や「魔王」が含まれます。 『うちの娘の為ならば、俺はもしかしたら魔王も倒せるかもしれない。 》 でしょう。 空欄に入る漢字2文字をお答え下さい。 アニメ作中に登場する架空のグループ名をお答え下さい。 』が 2019年9月16日付オリコンアルバムランキングで 週間1位となり、同チャート初となる 70代での首位獲得となった 歌手は【 誰 】でしょう。 第一国立銀行ほか、東京瓦斯、東京海上火災保険、王子製紙、田園都市、 秩父セメント、帝国ホテル、秩父鉄道、京阪電気鉄道、 東京証券取引所、麒麟麦酒、サッポロビール、東洋紡績、 大日本製糖、明治製糖、澁澤倉庫など、 多種多様の会社設立に関わり、その数は500以上といわれている。 ちなみに、大坂夏の陣が起きたのは フリバでも触れましたが、西暦1615年です。 主人公の浩史役を中尾明慶が、 兄の靖史役を宮下雄也が演じた 2009年3月、テレビ東京系列で放送されたドラマは 『14歳 〜【 誰 】 たった1人の闘い』でしょう。 史上最短キャリア【 何 】戦目で菊花賞を、 史上最短キャリア6戦目で天皇賞(春)を制したでしょう。 開業したのは、令和元年(2019年) 【 何 】月24日のことだったでしょう。 1』で メインキャストを務めたのは、 ハロー!プロジェクトに所属する 【 何 】というアイドルグループの メンバーたちだったでしょう。 空欄に入る「熟語」は【 何 】でしょう。 1決定戦」を2連覇中である、 菊田竜大、秋山寛貴、岡部大による お笑いトリオの名前は【 何 】でしょう。 日本での放送チャンネルは、 《 NHK BS【 何 】 》でしょう。 空欄に入るのは【 誰 】でしょう。 だから、【 誰 】からダビデまでの代は合わせて十四代、 ダビデからバビロンへ移されるまでは十四代、 そして、バビロンへ移されてからキリストまでは十四代である。 空欄に入る漢字1文字は【 何 】でしょう。 それぞれのアルファベットがあたるキャラクターで、 「P」といえば【 誰 】のことでしょう。

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吉川英治 新書太閤記 第十分冊

甲賀 ゆれ の 説明 として 正しい もの は 次 の うち どれ か

それから四、五十日の日が過ぎた。 南国らしい暑さの夏! 雄大な雲の峰の下に、徳島の城下は、海の 端 ( はし )に平たく見えて、 瓦 ( かわら )も焼けるようなギラギラする 陽 ( ひ )に照らされている。 カチ、カチ、カチ! たえまのない 石工 ( いしく )の 鑿 ( のみ )のひびきが、炎天にもめげず、お城のほうから聞えてくる。 町人の 怠惰 ( たいだ )を 鞭 ( むち )うつようだ。 徳島城の 出丸櫓 ( でまるやぐら )は、もうあらかた工事ができている。 今は、いつか 崩壊 ( ほうかい )した石垣の修築が少し残っているばかり、元気のいい 鑿 ( のみ )の音は、そこで火を出しているひびきである。 阿波守重喜 ( あわのかみしげよし )も、その後、めっきり快方に向っていた。 ひと頃、家臣たちが眉をひそめた、病的な 乱行 ( らんぎょう )も 止 ( や )まって、今では、神経衰弱のかげもない程、まっ黒に日にやけている。 あまたの若侍と一緒に、徳島城の大手から津田の浜へ、 悍馬 ( かんば )をとばしてゆく重喜の姿をよく見かける。 水馬、水泳、浜ではさかんな稽古である。 ある時は、 家中 ( かちゅう )をあげて、 陣練 ( じんねり )、兵船の 櫓稽古 ( やぐらげいこ )などが行われた。 今日も阿波守は、 水襦袢 ( みずじゅばん )に 馬乗袴 ( うまのりばかま )をつけた りりしい姿で、津田の浜のお茶屋に腰をすえ、生れ変ったような顔を潮風に磨かせていた。 そして、白浪をあげて乗り廻している水馬の群れを眺めて、時々、ニッコとさえしている。 健康とともに、強い希望の火が、かれの行く手によみがえってきていた。 赫々 ( かっかく )としてきた。 潮音、海風、すべて 討幕 ( とうばく )の声! そう胸を 衝 ( う )つのである。 炎日、 灼土 ( しゃくど )、すべて 回天 ( かいてん )の熱! そう感じられてくるのである。 健康な心には、迷信の 棲 ( す )みうる闇はなかった。 間者牢 ( かんじゃろう )のことも俵一八郎の死も、阿波守の脳裏からいつか駆逐されて、その後には、ただ大きな望みだけが 占 ( し )めていた。 ことに。 もう五十日ほど前に、 沼島 ( ぬしま )の沖合で、 法月弦之丞 ( のりづきげんのじょう )とお綱とが、 暴風雨 ( あらし )の狂瀾を目がけて身を躍らせたので、とうとう、それなり海のもくずになったであろうという三位卿の報告は、かれをして、ホッとした息をつかせたに違いない。 「 幸先 ( さいさき )はよいぞ!」 阿波守の意気があがるとともに、 出丸曲輪 ( でまるぐるわ )の工事は成り、石垣の 普請 ( ふしん )は近く手を離れるばかり、火薬は 硝薬庫 ( しょうやくぐら )にみち、兵船はそろい、家中の士気は揃ってくる。 すべてが、不思議なほどトントン拍子に吉事を重ねてくる。 近くは、前もって盟約のある京の代表者、 徳大寺 ( とくだいじ )家の密使をはじめ、加担の西国大名、 筑後 ( ちくご )の 柳川 ( やながわ )、 大洲 ( おおず )の 加藤 ( かとう )、 金森 ( かなもり )、 鍋島 ( なべしま )、そのほかの藩から、それぞれの使者が徳島城に集まって、幕府討て! 大義にくみせよ! の最後にして最初の 狼火 ( のろし )をあげる 諜 ( しめ )しあわせをすることになっている。 で、阿波守の 爽 ( さわ )やかな胸から、時々、明るい笑いが頬へのぼる。 波を見ては 笑 ( え )み、人をみては笑み、馬をみては笑む。 「阿波殿!」 と、お茶屋の端にかけている三位卿が、それを見て声をかけた。 「あれにいるのは何者か?」 と、重喜が妙な顔をした。 ひとりは頭巾をつけ、ひとりは 総髪 ( そうはつ )。 どちらも大名の前に出られる 風姿 ( なり )ではない。 「もと 川島郷 ( かわしまごう )の 原士 ( はらし )、関屋孫兵衛です」 と、待っていたように、有村がひきあわせた。 「ひとりは旅川周馬という浪人、一角にも劣らず、弦之丞を討つについて骨を折りました」 「ウム」 重喜は 鷹揚 ( おうよう )にうなずいた。 さきに、天堂一角から推挙があったので、その名前だけは耳にしていた。 有村は、お言葉をたまわりたいと願った。 そして、関屋孫兵衛は、某所で果し合いをした折の 刀傷 ( かたなきず )を病んでおるので、頭巾のままおゆるしを願いたいとつけ足した。 これは、三位卿も真偽を知らないことだが、孫兵衛のいうままを取次いだのである。 で、機嫌のよい阿波守は、 謁 ( えつ )をゆるして、当座の手当を与えるように 近侍 ( きんじ )へいいつけた。 納戸方の侍の手から、金一封ずつが渡された。 すくない金ではないらしい。 「なお、いずれ後日には、何かのお沙汰があるであろう」 ということに、周馬も孫兵衛も予期どおりな つぼへ来たわえと、内心ニタリとして、 殊勝 ( しゅしょう )らしく引退った。 だが頭巾のことでは、さすがなお十夜も冷汗をかいたらしく、 腋 ( わき )の下を拭きながら、周馬とくすぐったがりながら、空いている浜小屋のひとつへ入ってくる、とそこに天堂一角が、水 襦袢 ( じゅばん )に馬乗 袴 ( ばかま )の姿で、腕をくんで 鬱 ( ふさ )いでいた。 「お」と、顔を見あわせて、 「どうした」 と、肩を叩く。 「う……」と一角は元気がない。 「水馬で疲れたとみえる」 「そうでもない」 「今、阿波守に 拝謁 ( はいえつ )してきた」 「ふーん……」 「貴公の推挙もあり、三位卿の口添えも 利 ( き )いて、すっかり面目をほどこしたというわけさ」 「そうか」 「よろこんでくれ」 「うム」 「おれも川島へ帰って、元の原士千石の身分になれる。 周馬だって、いずれ、近習とまではゆかなくっても、馬廻りやお納戸ぐらいには役づくことになるだろう」 「早いな、話は」 「とにかく、吉運到来だよ」 「そうかしら」 「オイ、一角」 「え」 「そうかしらって、お 前 ( めえ )だって、噂にきけば、たいそういい運が向いてきたというじゃねエか」 「ウム、 加増 ( かぞう )のお 墨付 ( すみつき )をいただいた」 「不足なのか」 「過分さ」 「じゃあ」 少し話がこじれてきた。 周馬が代って、 「おれたちが仕官したり帰参するのが気にいらないのか」 とひがんでいう。 「ばかをいえ!」 と一角は 傲岸 ( ごうがん )になった。 「お互いに立身出世の 緒口 ( いとぐち )がついたのを、誰が気にいらない奴がある」 「それならよろこんでしかるべきじゃないか」 「だからよろこんでおるではないか」 「ちッ、まずい 面 ( つら )をしているくせに」 「ほかに 屈託 ( くったく )があるからだ」 「なんだ?」 「おれは少し気になってきた」 と一角はまた首をたれて考えこんでしまった。 「どうしたっていうんだ。 天堂一角にも似合わん憂鬱じゃないか。 今、蜂須賀家もおれたちも、吉兆と吉運にめぐまれているのに」 「だからよ、その夢が 凶 ( わる )く、裏切られてきやしないかと心配しているのだ」 「妙なことをいう……」 解 ( げ )せない。 ふたりは眉をひそめて一角を見た。 一角は何か真剣になって苦念していた。 剽悍 ( ひょうかん )で一徹者、何ごとにも荒けずりな性格を見せる天堂が、妙に楽しまぬ色で、考えこんでいるので、周馬と孫兵衛がだんだんたずねると、やっと、口を開いた。 「どうも、吾々の吉運到来は夢らしいぞ。 夢はいいが、さめた後の悪さが思いやられる」 と、何かに、おびえていうのである。 「なぜ?」 「どうも、弦之丞とお綱は、まだ死んではおるまいと思われる。 もし、ふたたびかれが姿をあらわすことでもあった日には、殿を 欺 ( だま )したことになる」 「ばかな!」と周馬は一蹴して、 「あの 怒濤 ( どとう )の中へおどりこんで、助かるわけがあるものか」 お十夜も同意した。 「一角、そりゃ、余りお 前 ( めえ )が考え過ぎるよ」と。 そして、もう 一言 ( ひとこと )、冷笑をまぜてつけ加えた。 「運が向くと人間は臆病になる。 金持になると病気ばかり怖くなる、この夢がさめるな、この夢がさめるなってやつよ。 それと同じだ。 ばかばかしい。 夢といってしまえば、棺桶の底へ あぐらを組むまでは、みんな夢じゃないか」 「くだらんことをしゃべってくれるな、拙者は心の底から心配しているのだ。 恩賞の帰参のと、吉運に酔っている貴公たちを見るといっそう後が思いやられる。 決して、 根柢 ( こんてい )もなく取越し苦労をしているのではない」 「どうして急にそんなことを考えだしたのか。 おれたちにはおかしくってしようがない」 「実をいうと、拙者も、今しがたまでは得意だった。 で、今日この浜で出会った叔父貴にも自慢をしたくらいなのだが」 「ウム」 「叔父というのは水泳 指南番 ( しなんばん )で、 赤組頭 ( あかぐみがしら )、 生島流 ( いくしまりゅう )の達人で、 平常 ( へいぜい )は船預かりという役名で四百石いただいている、海には苦労をしている人間だ」 「 成瀬銀左衛門 ( なるせぎんざえもん )のことではないか」 「そうだ」 「その成瀬に自慢をしたというのは、法月弦之丞のことをだな」 「 刃 ( やいば )で 止 ( とど )めを刺したのではないが、とにかく、海の 藻 ( も )くずになったことは分りきっておる。 かたがたお墨付をいただいたから、それを話したのだ。 さだめし、叔父にしても家中へ鼻が高かろうと思って」 「なるほど、そしたら?」 「おめでたい奴じゃ! 頭からそうどなられたものではないか」 「ふウむ、変り者だな」 「どうして、常識過ぎるくらいな常識家だ。 その叔父が 苦 ( にが )りきって、 罵倒 ( ばとう )するのだから、拙者もちょッと面食らった。 必ずどこからか陸地へ上がっている! 祝杯に酔ッぱらうなよ、阿波守様はいい時にはいい殿だが、悪い時にはその逆がひどく出るお方だぞ! こう叱るのだ、拙者をな。 で、だんだん叔父貴の説に耳をかしてみると、どうも彼はまだ生きているという結論になってくる」 周馬もお十夜も、なんだか嫌な気持になった。 あまり正確な推理がそのあとから出るのが怖ろしく思えた。 「深いことはいわないが、叔父は水泳と船術の経験から、近海の潮流に詳しい。 また、みずから海へ飛びこんだ程の弦之丞だから、必ず自信があったろう。 相当にいける者なら、あの晩の波ぐらいは大したものではない。 ことに隠密というものは、捕われるまでも決して自殺をしないものだ、 拷問 ( ごうもん )にたえ、恥をしのび、首を斬られる最後の一瞬まで、生きて 命 ( めい )をまっとうしようともがく 粘 ( ねば )り 気 ( け )のあるところに、隠密の本分と、かれらの誇りがある。 その辺は なみの武士のいわゆる最期の美とはよほど違う。 だから、弦之丞も、お綱を引っ抱えて海へ入ったのは、おそらく、逃げるだけの自信があってしたことに違いないし、船も阿波の沖へ近づいていたといえば、かたがた 油断 ( ゆだん )はなるまいというのだ」 「けれど、もう五十日あまり過ぎた今日になっても、かれがどこに潜伏していたという知らせも、ないではないか」 「その代りに、かれの死骸がどこへ流れ着いたということも聞かない」 「そういえばそうだなア……」と周馬の声は 溜息 ( ためいき )に似てきた。 吉運到来の歓喜は苦もなくぐらつきだした。 そう疑いをもってくると、弦之丞の変幻自在なことから推しても、ヒョッとすると、徳島の城下あたりを澄まして歩いているような気がする。 下手をすれば、浜で動いている足軽や人足、お城に取ッついている石工の仲間などに、かれが巧妙な変装をしていない限りもない。 「祝杯に酔っぱらうなよ!」 海で苦労をした人間がいったという言葉が、気味わるく耳にこびりついてきた。 阿波守が浜から帰城した後で、三人は思案にあまった顔を揃え、三位卿にどうしたものか相談してみた。 「ふウム……」と聞いていたが、かれも専門家の成瀬銀左衛門がいった説というのでは、頭から否定もしきれないで、 「そういわれてみると、ほうってもおけぬな」 と、同じ疑念にとらわれてしまった。 そして、またこういった。 「なにしろ万全を尽くしておくに限る。 それには、第一案も第二案もあるから決して心配することはない」 翌日、かれは三名の者をつれて、 助任町 ( すけとうまち )の代官所に 桐井角兵衛 ( きりいかくべえ )をおとずれた。 「こういう者であるが」 と有村が、代官の角兵衛に示したのは、前夜、周馬が入念に 描 ( か )いた弦之丞とお綱の人相書で、骨格、年配、特徴、 背丈 ( せたけ )などが、微細にわたっている二枚の巻半紙。 それをひろげながら、 「今から五十三日前の 暴風雨 ( あらし )の夜から後に、こういう男女の死骸が、御領内の沿岸へ上がったことはないか。 あるいは、無智の 漁師 ( りょうし )などが、 曲者 ( くせもの )に 騙 ( かた )られて 匿 ( かくま )っているような様子はないか、また、巧みに変装して御城下などにまぎれ込んでおるようなことはあるまいか、どうか、入念に至急、お調べを願いたい」 と、むずかしい注文を持ちこんだ。 桐井角兵衛は罪人の 揚屋 ( あがりや )を預かり、手代手先の下役を使って、阿波全土の十手を支配している役儀上、いやとはいえないで、すぐに人相書を十数枚複写させ、それを 美馬 ( みま )、 海部 ( かいふ )、 板野 ( いたの )、 三好 ( みよし )などの各地の配下へ持たせて、 しらみ 潰 ( つぶ )しに各村を調べさせた一方、代官所の手先に命じて、城下はいうに及ばず、阿波の沿海、残るくまなく捜索させた。 叩けば ほこりの道理で、その結果いろいろな報告が集まった。 だが、ひとつとして取るに足るような手がかりはなかった。 ただ、あの 暴風雨 ( あらし )から数日の後、徳島より南の 燧崎 ( ひうちざき )に、一枚の渋合羽が流れついたということと、まるで方角違いな、 富岡郷 ( とみおかごう )の山林の中に、日数をへた男女の死骸が抱き合って朽ちていた、という二つの事実があったが、それも深く探ってみると、いずれも縁のない暗合に過ぎない。 ふたりの消息は、依然として 謎 ( なぞ )であった。 求め得たものは、そういう偶然が起こさせる 錯覚 ( さっかく )と、吉運をおびやかす疑惑、それだけである。 で、有村は、前から阿波守には内密に考えていた、第二の案を実行しようとした。 それを天堂や孫兵衛や周馬に打ち明けると、三人も異議なく 雷同 ( らいどう )した。 重喜 ( しげよし )に話せば、無論許されないにきまっていることであった。 許されないよりは或いは激怒を買うかもしれないと思ったので、秘密に出立しようとなった。 山支度! できうる限りの軽装で、竹屋三位卿以下、夜にまぎれて城下を抜けだし、剣山へ指して行った。 お十夜孫兵衛だけは、久しぶりで、途中郷土の川島 郷 ( ごう )へ立ち寄りたいというので、それより一日前に立っていた。 そして、後の者を川島で待ちあわせ、そこで、何かの手筈を 諜 ( しめ )しあわせる約束。 孫兵衛にしても木の 股 ( また )から生れた男でない以上、川島へ帰ってみれば、老いさらぼうた祖父だとか、顔を知らない 甥 ( おい )だとか、麦畑でねじ伏せた女だとか、古い記憶の中から彼を取りまくさまざまな人があった。 「おれもこんどは落ちつくぜ。 うム、御恩賞と 扶持米 ( ふちまい )を大事に守って、昔のとおり川島の 原士 ( はらし )となって、この屋敷を建てなおすつもりだ」 周囲の者にも、こんな放浪児らしくない気持をもらした。 焼きが廻ったというものであろうか、それとも、人間らしいところへ落ちついてきたのであろうか、とにかく、吉運到来がだいぶ 獰猛 ( どうもう )性を 和 ( やわら )げているのは事実だ。 「おれだって、後生は 安穏 ( あんのん )に送りてえからな」 といったところが本音であろう。 そこへ有村が来てかれを誘い、一行四人、吉野川の上流へと急いだ。 灼 ( や )くような 陽 ( ひ )が、かれらの笠の上から 焦 ( い )りつけた。 有村も一角も、 袴 ( はかま )の上から小袖を脱いで、白い肌着になっていた。 柄頭 ( つかがしら )の金具や刀の 鍔 ( つば )も、手をふれると熱いほど焼けている。 やがて仰ぐ行く手の雲と雲の間に 剣山 ( つるぎさん )の姿が どっしりと沈んで見えた。 甲賀世阿弥 ( こうがよあみ )のいる山だ。 全身の血と ぎらん草の汁をしぼって、かれが 孜々 ( しし )と書き 綴 ( つづ )っていたものは、もうどの辺まで進んでいるか? 三位卿たちは世阿弥が最後の仕事として、そういうことに魂を打ちこんでいるとは夢にも知らなかった。 だが、ぜひとも、かれを殺してしまうことが、最善の手段だとは考えついていた。 いずれ、お綱は父に会うべく、また、弦之丞は世阿弥から阿波の内秘を聞きとるべく、剣山へ目指してくることは想像される。 こう有村は考えたのであった。 そして、それを実行するために、四人は焼け土を踏んで剣山へ急ぐのだった。 鼬 ( いたち )のような鋭さをして、今朝、 塀裏町 ( へいうらまち )の 横丁 ( よこちょう )を出てきた手先の 眼 ( がん )八は、ツンのめるようなかっこうで、牢屋 塀 ( べい )の下草へ 痰 ( たん )つばを吐きかけながら、そそくさと、代官屋敷のほうへ急いで行った。 それを見かけると、城下の者は、 「オヤ、何かまた朝ッぱらからお 召捕 ( めしとり )があるぜ、眼八が大股で行った」 と、すぐに伝えあうほどな記録を持っているすごい眼八。 手拭でふくれている 懐中 ( ふところ )も、人一倍長い 捕縄 ( とりなわ )の束でアアなっているのだろうと 恐 ( こわ )がられている手先である。 「お早う」 と、その眼八が門に立った。 黒い 冠木門 ( かぶきもん )の外から中へ、玉砂利が奥ふかくしきつめてある。 城下代官と町奉行を兼ねている 桐井角兵衛 ( きりいかくべえ )の役宅だ。 箒 ( ほうき )と打水で、役宅の前を掃除していた 菖蒲革 ( しょうぶがわ )の 袴 ( はかま )と、尻 はしょりの 折助 ( おりすけ )が、 「やあ、眼八」 と、朝機嫌のいい声を出して、 「ばかに早いな、何かあるのか」 と、竹箒を肩に立てかけた。 待っている間、眼八と折助は、何かの話の末に思いだして、 「そういやあ、森の屋敷の宅助はどうしたろう?」 と、眼八からいいだした。 「あいつにこまごまと積もって、十両ばかりの 貸 ( か )しがあるンだが」 「借金で首が廻らないところから、出先で 随徳寺 ( ずいとくじ )をきめてしまったンじゃあないか」 「だが、主人の啓之助も、まだ御城下には帰っていないらしい」 「噂によると、何かマズいことがあって、大阪表でお 扶持 ( ふち )放れとなったそうだ」 「ヘエ、森啓之助が?」 「なんでも浪人したという話だ」 そこへさっきの菖蒲革が帰ってきて、 「眼八、やはりお役宅のほうで待っていろとおっしゃったよ、すぐにお越しになるだろう」 「ありがとうぞんじました」 と、およその時間を計りながら、そこで、二、三服煙草を吸ってから、役宅の奥へ入って行った。 案内を知っている代官部屋を 覗 ( のぞ )いてみると、桐井角兵衛はもう机に積み重ねてあるいろいろな書類をめくっている。 それがみんなこの間うちから八郡の地方代官所へ問いあわせをした、人相書の反響かと思うと、眼八は、なんとなくおかしくって、しばらく、苦笑を押えていた。 と、それに気がついて、 「眼八ではないか、早朝から折り入って話したいこととは何だな」 と声をかけた。 ところで、何かそちの手で、めぼしいことが 挙 ( あが )ったか」 「ちょっとばかり心当たりがございますので、それで、お指図をうけに上がりました」 と眼八は、 煙管 ( きせる )を抜いて、指に挟んだが、煙草盆が遠いので、その手を空しくさせたまま、しばらく言葉を切っていた。 「ふウム……そうか!」 と桐井角兵衛は、机に山積している各地の 郡奉行 ( こおりぶぎょう )の報告よりは、眼八が、煙草入れの 筒 ( つつ )と一緒に抜いた心当たりという一句に、すっかり引きずり込まれて、 「して、その二人の生死は?」 と、まず、 訊 ( たず )ねた。 「奴らは、たしかに死んではおりません」 と眼八は、 濁 ( にご )りのない声で、言いきった。 ゆうべ、手先の眼八は、 免許町 ( めんきょまち )の 刀研師 ( かたなとぎし ) 大黒宗理 ( おおぐろそうり )の店へ寄って、ある兇行に使われた 小柄 ( こづか )の 目利 ( めきき )をして貰っている間に、思いがけない拾いものにぶつかった。 髪切虫 ( かみきりむし )のヒゲみたいに鋭いかれの感覚は、そこへ来た男と宗理の対話を 二言三言 ( ふたことみこと )聞いただけで、 「こいつあ 」 と、思った。 職業的な興奮を 超 ( こ )えて、一種の功名心に燃ゆる 動悸 ( どうき )さえうった。 この間うちから、阿波全土の代官や手先や町同心が、 蚤取眼 ( のみとりまなこ )でたずねていても、なお、その生死すら判定しない法月弦之丞という江戸方の隠密と、お綱という女を、ひとつ、この眼八の手で、アッサリ引っくくってみたら、節穴同様な目玉をもって納まっている町同心や郡奉行などが、どんな 面 ( つら )をするだろうか? 思ってみるだけでも痛快だ。 乗り気になる 値 ( あたい )がある。 で、眼八。 その男が帰ったあとで、何食わぬ顔をして、宗理の口 うらをひいて家へ戻ってきた。 寝床の中で、 とっくりと前後のことを綜合してみると、やはり弦之丞もお綱も立派に阿波へ入って、どこかにほとぼりをさましているという結論が生れてくる。 眼八は寝られなかった。 当たった 富札 ( とみふだ )をふり廻しているような興奮で一世一代の仕事だと考えた。 初めは直接に三位卿のところへ持ち込んで、城内で 羽振 ( はぶり )のきく若公卿に取り入ろうと 胸算 ( むなざん )をとったが、それもあまり支配者を出しぬく形になるので、とにかく 蒼惶 ( そうこう )として起き抜けに代官屋敷へやってきたわけ。 それは桐井角兵衛にも寝耳に水であった。 「で、お前がいた時に、大黒宗理の所へ来あわせた男というのは、いったい、何者なのだ? まさか弦之丞自身ではあるまい」 「そうです、無論弦之丞じゃありません、どこかこの辺の浜へ稼ぎに来ていた船大工の 手間取 ( てまとり )。 そいつが 研師 ( とぎし )の宗理の手から、 研 ( と )ぎ上がった二本の刀を受け取って帰って行きました」 「船大工が?」 「ヘエ、しかし、ひとつは、無銘の長い 刀 ( やつ )、ひとつは新藤五という小脇差で、すばらしい名作、 鑿 ( のみ )や 手斧 ( ちょうな )なら知らないこと、船大工風情の手にある 代物 ( しろもの )でないことは分っています。 で、頼み主はと台帳を見て貰うと、 海部 ( かいふ )の 日和佐 ( ひわさ )の 宿 ( しゅく )、 大勘 ( だいかん )という 棟梁 ( とうりょう )の名になっています」 「ふム、そして?」 「 頼 ( たの )み 人 ( て )の名に偽りのないことは、品物が大事な金目のものだけに、まあ、嘘はないと見ておきました。 それに日和佐の宿あたりには、それ程の刀を 研 ( と )ぐ腕の研師はありますまいから、わざわざ徳島の城下まで持ってきたに違いありません。 ことに、その刀もただの 研 ( とぎ )ではなく、 潮水浸 ( しおびた )しになったのを、 鞘 ( さや )、 柄糸 ( つかいと )、 拭上 ( ぬぐいあ )げまですっかり手入れをしなおしたもので、宗理の手もとでも五十日ほどかかったという話。 というなあ、無銘の方の 小柄 ( こづか )には、弦之丞の 印 ( しるし )と聞いた三日月紋の 切銘 ( きりめい )があり、もう一腰の新藤五の古い 鞘 ( さや )には、甲賀 世阿弥 ( よあみ )という 細字 ( さいじ )が 沈金彫 ( ちんきんぼり )に埋めこんでありました。 で、もうこれ以上の 詮索 ( せんさく )は無用でしょう。 すぐに使いの男をつけて、その場から 日和佐 ( ひわさ )へ突ッ走ってもいいところですが、大事を取って一応ご相談に上がったわけです」 「ウーム、そうか」 桐井角兵衛にも、もう少しも疑う余地がなかった。 「日和佐の宿に 潜伏 ( せんぷく )して、刀の手入れのできるのを待っているものとみえる」 「それと、これにゃ弦之丞をかくまっている奴が、ありそうですから、ただいきなり捕手をくりだしても、風を食らってしまうでしょう」 「とにかく、何より先に、このことを、有村 卿 ( きょう )のお耳に入れて、お指図をうけた後の手配とするが順序であろう」 「あれが仕上がって届いたとすると、弦之丞はすぐにも日和佐にいないかもしれません。 どうか、ご相談に暇どって、大事な 機 ( おり )をはずさないようにお願いいたします」 にわかに 蒼惶 ( そうこう )とした気持で、桐井角兵衛は使いをもって、このことを城内の三位卿に知らせてやると、その有村は、きのう山支度をして、かねて望んでいた剣山の踏破に出かけてしまったという返辞。 「あれほど役人の手を騒がしておきながら」 と、かれの 腹蔵 ( ふくぞう )を知らない桐井角兵衛は、三位卿の行動を不快に思ったが、みすみす眼八がつきとめてきたものを、悠々と、有村の帰りを待ってはいられないので、かれは彼の独断で、日和佐へ手配することにきめた。 手先の眼八は わらじをはいた。 足は自慢な男である。 城下から海ぞいに、土佐街道を南へ十四里ばかり、日和佐の宿へ急いだのだ。 磯の香の高い 海辺町 ( うみべまち )にはいった晩、かれの姿は、すぐと、 海部 ( かいふ )代官所の中へ消えていた。 で、何かの手筈はその晩にすんだとみえて、翌日になると眼八、旅職人の 風 ( ふう )つきで、わざと間のぬけた顔をしながら、 厄除橋 ( やくよけばし )の辺をウロついていた。 薄暮の海が眺められた。 漁港らしい灯が日和佐川に映っている。 宿 ( しゅく )の中を通っている街道には、ひとしきり 荷駄 ( にだ )の鈴や、宿引きの女の声や、さまざまな旅人の影が織っていた。 四国二十三番の 札所 ( ふだしょ ) 薬王寺 ( やくおうじ )にゆく足だまりにもなるので、 遍路 ( へんろ )の人のほの 白 ( じろ )い姿と、あわれにふる鈴の 音 ( ね )もこのたそがれのわびしい点景。 「あ、こちら様だナ」 と、やっと見つかったというふうに、眼八、とある 角構 ( かどがま )えの格子先に腰をのばした。 船玉祀 ( ふなだままつ )りの 御幣柱 ( ごへいばしら )が、 廂 ( ひさし )の裏に掛けわたしてあり、荒格子に三 間 ( げん ) 土間 ( どま )、雑多な履物が上げ潮でよせられたほど脱いである。 部屋にいる手間取か内弟子か分らないが、いけぞンざいな若いのが出てきて、 「なんだい」と見下ろした。 「 旅人 ( たびにん )でございます。 親方のお名前を承知しまして、お頼り申してまいりました」 「同職か」 「ヘエ」 「 上 ( あ )がンねエ」 「ありがとうぞんじます」 「裏へ廻ると井戸がある。 その側に小屋があるから、そこでゆっくり泊ってゆくがいい。 朝立つ時にゃちょっと俺たちの部屋へ声をかけて行きな、 わらじ銭と 午飯 ( ひるめし )だけは 餞別 ( せんべつ )してやることになっているんだから」 「ご厄介になります」 格子を出て裏へ廻った。 路次の横に窓があった。 すだれ越しにチラと見ると、 羅漢 ( らかん )のような裸ぞろいが、よからぬ 弄戯 ( あそび )に 耽 ( ふけ )っている。 同職の渡り者といえば、宿なし犬に縁の下を貸すくらいな気安さで泊めてはくれるが、ちゃんとあしらいの寸法がきまっていて、何ひとつ道具のない部屋で、 塗 ( ぬ )りの 剥 ( は )げた 箱膳 ( はこぜん )に、 沢庵 ( たくあん )四きれ、汁一 椀 ( わん )、野菜の煮しめが一皿ついて、あたりに人はなしといえども、それをあぐらで食うわけにはいかない。 禅僧のように、椀や皿の残り汁まで、きれいに湯で洗って飲んで、きちんと隅へ下げておく。 一椀の恩に対する作法である。 そこへ中年の小僧が、 「客人、すんだかい」と膳をさげに来て、 「 蒲団 ( ふとん )と 行燈 ( あんどん )は、その板戸をあけると中にあるから勝手に出してくんな。 油があったかしら、油壺を見てくンないか、客人」 「ございます、どうもご馳走様で」 「そうか、じゃお 寝 ( やす )み」 「もし、もし。 ちょっとお待ちなすって」 「何か用かね」 「親方にご挨拶をしたいと存じますから、ひとつお取次ぎを願います」 「親方はいないよ、この間うちから留守なんだ」 「じゃお 内儀 ( かみ )さんか誰か、お身内の方に、ちょっと会わせて貰えませんでしょうか」 「お内儀さんは近所の衆と、 遍路 ( へんろ )に出て今は留守だし、ほかにゃ弟子か部屋の者ばかりだが、何か用かい、客人」 「ナニ、別段なことじゃございませんけれど……じゃ、お前さんに伺ってみますが、誰か、ここの家に商売違いなお客が二人ほど、お世話になっちゃあいませんかね?」 「商売ちがいな?」 「若い男と女です」 「いねエなあ、そんな者は」 「いませんか……」と眼八が、ダメを押して 額越 ( ひたいご )しに相手を見つめた。 ひょいと、その眼光りが変ったのを自分でも気がついて、 「へ、へ、へ、へ。 まことに、妙なことをきくようですが、私の身寄りの者で、今は、大勘さんの家にお世話になっているというような噂を、ちょっとよそで聞いたもんですからね……それで、何ですが……じゃ、そんな方はおりませんか?」 「いつ頃のことだい、それやあ」 「さようで……」 と、額に 平掌 ( ひらて )をあてて、わざと考えるふうを 装 ( よそお )いながら、にわかに、思いだしたように、鼻紙へ一分銀を一ツ包んだ。 「 兄哥 ( あにき )、これやホンの少しだけれど」 「いらねエや、お 前 ( めえ )は 旅人 ( たびにん )じゃないか。 旅人からそんな物を貰うと、部屋の者に叱られら」 「なアに、誰がそんなことをしゃべるもんですか、まア取っといておくんなさい、私だってこうしてお世話になれば、 旅籠賃 ( はたごちん )というものが助かっているんですから……。 エーところで、その若い男と女の客が、多分、こちらへ来たろうと思うのが、そうですネ、今から五十日前の前後か、それから後のことなんですが、よく考えてみておくんなさい、きっと、お心当たりがあるでしょう」 「ああ、そうか……」 「知っているね!」 と眼八、一分銀を握らせたその腕くびをギュッとつかんで、 「それごらんなせえ、やっぱり、お前さんが忘れていたんだ」 眼八の誘いにツリこまれて、大勘の内弟子は、うっかり、 「ア、そういえばネ、客人」 と、しゃべりだした。 「似た話があるぜ」 「ある? ふム」 「もう一月あまりも前なんで、すっかり忘れていたけれど、ちょうど、客人のいった頃にあたるよ。 小雨がソボソボ降っていた、 暴風 ( しけ )あがりからズッと降り通しで、部屋の者も仕事がなしで、早く床についた晩なのさ」 へたな言葉をさし挟んで、相手のしゃべる 図 ( ず )をはずすまいと、眼八、大事そうにソッとひとつうなずいた。 「……とネ、宵の 五刻 ( いつつ )ごろ、トントンと表をたたく人があるんだ。 おらあ親方の 瘤 ( こぶ )みたいな肩を 揉 ( も )ませられていたので、イイ 機 ( しお )だと思ったから、親方、誰か表に客人でございますヨ、そういって顔を 覗 ( のぞ )くと、ふム、分っているとうなずいて、部屋の奴アみんな寝たか、とこう聞くんでございます」 「なるほど」 「ヘエというと、親方は、いずれ今頃ウロついてくる客は、旅人だろうから、あっちの小屋へ 行燈 ( あんどん )を入れておけ、そして、後はおれが見てやるから、てめえは床に着くがイイ。 しかも、頭から 酒菰 ( さかごも )をかぶって、まるで 乞食 ( こじき )のような風態をしているのに、親方はばかに親切に世話をしていました。 すると、てめえはあっちへ行って寝ろといわれたので、そのまま、 母屋 ( おもや )のほうへ戻りながら、井戸端で足を洗っているお 菰 ( こも )を見ると、とても、白い足をしているんで、オヤ、とその時気がつきました。 ひとりのほうは、ゾッとするようないい女、ひとりは五分 月代 ( さかやき )の若い浪人者です」 しめた! と眼八は、腹の中で 雀躍 ( こおど )りしていた。 なお、さあらぬふうで、言葉巧みに聞き出してみると、その晩、ここへ泊った素姓の知れない 男女 ( ふたり )は、翌朝、部屋の者が眼をさました時分には、もうどこかへ立ち去っていて、誰も知らないくらいであったという話。 「そうでしたか、それでおよその事情が分りました。 イヤ、 大 ( おお )きにありがとう」 眼八はていねいにこういってから、自分の 振分 ( ふりわけ )を解いて、 「うるさいことをきいてすみませんが、ついでに、もうひとつお伺いしたいと存じますが……」荷物の中から取り出した渋紙の端をほごすと、コロコロと一本の 鑿 ( のみ )がころがりだした。 商売道具。 「 平鑿 ( ひらのみ )だネ」 と、すぐに向うも目をつけた。 「エ、なかなかよく使いこんである 鑿 ( のみ )です」 「売るつもりなら部屋の者に見せてあげるぜ」 「なに、これは、手放すわけにはゆかない品なんで」 と、眼八、 のみの平首に 拇指 ( おやゆび )を当てて、ピカリと、ひとつ引っくり返した。 「これや、私が徳島の城下はずれで、フイと拾った物なんです。 眼八は拇指の腹であご 髯 ( ひげ )をコスリながら、畳へおいた 平鑿 ( ひらのみ )を見つめておった。 何かのクサビになるだろうと、この間、 研師 ( とぎし )大黒宗理の店さきで、そこにいた職人の道具箱からソッと一本かすめておいた品物だ。 「この鑿を持っている源次という職人を取ッちめてみれば、大黒宗理のところから受け取って行った刀を、どこへ届けたか分ってくる。 そいつさえ当たりがつけば、もうしめたものだが……」と、息を殺していると、 「ここか」と、外で職人らしい声がした。 「客人」 と、前の中年者が顔を出して、 「聞いてみたら、やっぱり鑿を 失 ( な )くしたのは部屋の源次という人だった」 「ア、それやどうも、お世話様で」 「先でも、使い馴れていた 稼業 ( かぎょう )道具を 失 ( な )くして、困っていたところなんで、話してやったら大よろこびさ。 で、今ここへ連れてきたからね」 「そうですか」 と、片手をついて身をねじりながら、 「源次さんとおっしゃるのは? ……」 と、土間の外を見ると、まぎれもなく、この間、宗理の店から、弦之丞とお綱の刀をうけ取って帰った、あの若い男である。 失くしたとばかり思っていた道具が手に戻って、大工の源次は、わけは知らずに礼をいった。 「近づきの 印 ( しるし )に、どこかで 一杯 ( ひとくち )やろうじゃねエか」 どっちから誘うでもなく、涼み半分、ぶらりと、連れ立って飲みに出かける。 眼八には思う 壺 ( つぼ )。 「不案内でございますから」 と、ついて行った。 源次は礼におごるつもりなので、町の西端れの 馴染 ( なじ )みの家へ案内した。 だが、そこの払いも眼八が先に越して、 「どうせ、今から部屋へ帰っても、この暑さじゃ寝つかれやしません。 少し、どこかで涼んで行こうじゃありませんか」 と、 厄除薬師 ( やくよけやくし )の石段を上りかける。 「上へあがってみなせエ、寒いようだから」 同職と思って、源次はすっかり気をゆるめているらしい。 だが腹の底はしまった男とみえて、飲屋で話しあっている間に眼八がチョイチョイ かまを試みたが、いっこう、口を 辷 ( すべ )らせてこなかった。 で、かれは、少し 業 ( ごう )が煮えていた。 どこかで睨みの 利 ( き )くところを見せて泥を吐かせてしまおう胸算。 足場ばかり見廻している。 山は 医王山 ( いおうざん )の 幽翠 ( ゆうすい )を背負って、 閑古鳥 ( かんこどり )でも 啼 ( な )きそうにさびていた。 厄年 ( やくどし )の男女がふめば厄難をはらうという、四十二段、三十三段の石段を上ると、日和佐川の はけ口から、 弧 ( こ )をえがいている磯の白浪、ひと目のうちだ。 明鏡のような夏の月が、荒海から天へ洗い上げられている。 うろこ雲の徐々とした歩みに、月光が変るにつれ、海もたえず明暗の変化を見せていた。 その、冴えきった一瞬には、 水天髣髴 ( すいてんほうふつ )の境、 紀 ( き )の 路 ( じ )の山が、ありやなしやに見えている。 「エエ、気味のいい風だ」 と汗をひそめて、眼八は境内の捨石へ腰をすえ、 「なるほど、ここはいい所だ」といった。 眺めのいい所という意味と、源次を ひっぱたくにはいいお 白洲 ( しらす )だという二様の意味にとれる。 「夏知らずというところさ、あっしゃあ、 昨日 ( きのう )もここでウットリとしてしまった」 「昨日?」 と、眼八は、すぐに 揚足 ( あげあし )をとって、 「きのうは浜へ仕事に行ったと言いなすったが」 「なに、ちょっとこの辺へ使いがあってね」 「 一昨日 ( おととい )はたしか徳島にいなすった」 「エエ、親方の代りに、 新造船 ( しんぞう )の絵図をとりに行って、帰りに、御城下を少しブラついてきた」と、源次もそこで 鑿 ( のみ )をなくしたという事実があるので、これだけは隠されなかった。 よウし! この辺からソロソロ 締木 ( しめぎ )を責めてやろうか。 眼八はそう思いながら、 「源さん、まア掛けねえな」と、 煙管 ( きせる )の先で、杉の木の根あがりを指した。 「 御輿 ( みこし )をすえると、眠くなるからなあ」 「眠くならねエようにしてやるから、とにかく、そこへ落ちつきねえ」 「いやだぜ、悪い 喉 ( のど )なんかを聞かせちゃ」 「いいやな、お 前 ( めえ )、ここは四国二十三番の 札所 ( ふだしょ )だ、 御詠歌 ( ごえいか )ぐらいはおつとめしなくっちゃ、霊地へ対して申しわけがない。 そこでぼつぼつ始めるが……オイ、源次ッ」 と、肩を突ッ張って、にわかに鋭くなった。 「なんだ、旅人」 と源次はあッ気にとられた顔をした。 「お 前 ( めえ )は何か、 先刻 ( さっき )おれが返してやった 平鑿 ( ひらのみ )を、徳島のどこでなくしたか気がついているか?」 「冗談いうない、落した所を知っているくらいなら、何も、わざわざ 他人 ( ひと )に拾われやしねえ」 「そうだろう。 じゃ教えてやるが、実は、あれや御城下の刀 研 ( と )ぎ、 大黒宗理 ( おおぐろそうり )の店先で、お 前 ( めえ )が頼み 刀 ( もの )をうけ取っている間に、道具箱からぬけだしていたんだ。 なにも、平鑿に足が生えたわけじゃねえから、無論、おれの指先が、黙ってお預かりと出かけたんだが……」 源次は静かに顔色をかえていた。 その時、宗理の店で、背中合せに掛けていた男の姿を思い浮かべて、かれは、しまった! と 臍 ( ほぞ )をかんでいるらしかった。 眼八は相手の 眸 ( ひとみ )を読みながら、 「オイオイ、駄目だ駄目だ、逃げようたって逃がしゃあしねえ。 徳島奉行の御配下で、 釘抜 ( くぎぬ )きの眼八といわれている 鬼手先 ( おにてさき )だ。 その釘抜きが噛みついてしまった以上は、めったにここをズラからすものか」 「野郎!」 と、源次は片足ひいて、 「じゃてめえは、旅人といっていたが、徳島から 潜 ( もぐ )りこんできやがった岡ッ引だな!」 「神妙にしろッ」 「やかましいやいッ」 手拭にくるんでいた平鑿が、風を切って眼八の脳天に跳びかかってきた。 「ふざけやがって!」と、眼八は身をねじって、鑿の腕くびを引っつかみ、デンと投げ 業 ( わざ )をかけたが利かず、腰をくだいて、ふたつの体、よじれながら横ざまにぶっ倒れた。 「ちイッ……この野郎」 「御用だ……御ッ……御用」 と、組んず、ほぐれつ。 龍姿 ( りゅうし )の松をすく月の 斑 ( ふ )に、ここを必死に、キラめき合う鑿と十手。 月光の 下 ( もと )に、黒いふたつの体、ややしばらくというもの、転々と、上になり下になってよじれ合っている。 下に組み伏せられたと見えた眼八、 足業 ( あしわざ )にかけて、相手の胴を 万力 ( まんりき )のように締めつけ、源次が、 「うッ」 と、気を遠くしたのを見すまして、 「骨を折らしゃアがった」 と、起きかえって、側を離れてくると、その手と源次の間に、いつのまにかタランと、 捕縄 ( とりなわ )がつながれている。 源次はもう抵抗しなかった。 肘 ( ひじ )で、やっと体を起こしながら、縛られている自分の手へ眼を落したままうつむいている。 「ばかな奴だ」 と、月に光っている足もとの 鑿 ( のみ )を遠くの方へ蹴とばして、眼八、捕縄の端を三尺ばかり垂らして持った。 「名 うてな釘抜きだといい聞かせているのに、ムダなあがきをしやがって、ふざけた野郎だ。 さッ、お 白洲 ( しらす )だぞ、世話をやかせずに、泥を吐かねえと、捕縄の端の 鉛玉 ( なまりだま )が横ッ面へ飛んで行くからそう思えッ」 と、凄味を加えた言葉つきで、右腕の袖をつまみあげた。 宗理の店の 研物 ( とぎもの )台帳から、ちゃんと洗いあげてあるンだから、いい 遁 ( のが )れはかなわねえ。 あの 双腰 ( ふたこし )を、てめえいったいどこへ届けてやったのか、まず、それからひとつ 訊 ( き )こうじゃねえか」 「……おれに訊いたって無駄だからよしてくれ、源次は口が固いと見込まれて、親方から固く頼まれてしたこと、代官所へショッ曳かれたって、 算盤 ( そろばん )ゴザへ坐らせられたって、決して口を 開 ( あ )きゃしねエから」 「ふん……面白い」 と、あざ笑って、 「てめえがそういう男なら、眼八の釘抜き根性も、いっそう 脂 ( あぶら )がのってくるというもンだ。 腕によりをかけても、その口を開かしてやるから見ていろいッ。 おうッ、 吐 ( ぬ )かさねえか」 ブランと 提 ( さ )げていた縄の端で、 荷馬 ( にうま )の尻をなぐるように、いきなり二ツ三ツ源次の頬を見舞った。 「さッ、申し上げちまえッ。 あの双腰を誰に届けてやった! いや、その届け主は読めている、場所をいえ、隠れ場所を!」 「そんなことまでおれは知らねえ」 「ナニ、知らねえ!」 「知らねえ! おらあ、そんな深いことまで知っちゃいねえ」 「甘く見るなッ」とまたひとつ、鉛玉をビュッとうならせて、源次の顔に血を吹かせた。 「ア 痛 ( つ )ッ……」 「いてえか!」 「し、知らねえものを」 「野郎」 と、土足でその背中を踏みつけて、 「知らねえというなア申し上げますという枕言葉だ。 そんな 白 ( しら )をいくら切っても、手加減をするような眼八じゃあねえ! 吐 ( ぬ )かせ、いえ、ひとこというのが遅れるたびに、ひとつずつてめえの 面 ( つら )にアザが 殖 ( ふ )えるぞ」 ばらばらと冷たいものが降りかかった。 いくらてめえが親方に義理だてをしたところが、やがてすぐに判ることじゃあねえか、つまらぬ強情を突っ張っていねえで、 潮 ( しお )びたしをなおしにやったあの刀を、どこへ届けた。 その 匿 ( かく )れ 家 ( が )を白状してしまえ。 すなおに泥を吐いてしまえば、眼八のとりなしで、お 上 ( かみ )のお 咎 ( とが )めはいいようにしてやるぜ。 どうだ源次、オイ源次、よく胸に手をあてて考えなおせよ」 「徳島へ出かけたついでに、刀を受け取ってきたのはたしかだが、それを途中で 棟梁 ( とうりょう )の手へ渡したきり、後のことは何にも知らねえ」 「しぶてえ奴だ、じゃ、どうあっても 実 ( じつ )を吐かねえな、よし」 と、捕縄に輪を描かせて、グルグルと源次の 喉 ( のど )へからませたやつを、グンと引っ張って、 「知りませんという 音 ( ね )を止めねえうちは、しばらく、こうしてやるから、 根 ( こん )くらべをするがいい」 「ウーム……」と、源次は縄の輪に 喉笛 ( のどぶえ )をしめられて、苦しそうな眼を吊りあげた。 そこから木立を隔てて見えるのは、月光の底に沈んでいる二十八柱の 大伽藍 ( だいがらん )、僧 行基 ( ぎょうき )のひらくという医王山 薬師如来 ( やくしにょらい )の 広前 ( ひろまえ )あたり、 嫋々 ( じょうじょう )としてもの淋しい 遍路 ( へんろ )の 鈴 ( りん )が 寂寞 ( せきばく )をゆすって鳴る……。 その鈴は、この境内では常に聞くところの、珍しくない 音 ( ね )であったが、伽藍の森厳にひえびえとした夜気を流して、なんとなく、釘抜きの眼八の鬼の心をも寒くさせた。 で、場所が悪いと気がさしてきたものか、 「立て!」 といって、源次の首の 輪縄 ( わなわ )をはずし、その縄尻をショッ 曳 ( ぴ )いて、 「せっかくここで、おっ放してやろうと思っていたが、そう情を突っぱるならゼヒがねえ、代官所の砂利を 咬 ( か )ませて、ゆっくり、荒療治で聞くとしよう。 ばかな奴だ、ここで白状してしまえば、眼八の胸ひとつ、お 咎 ( とが )めなしに見のがしてやるものを、向うへ行きゃあ 公然 ( おおっぴら )になる、泣いてもわめいても間に合わねえぞ」 「…………」 「棟梁の大勘が、どれほど口止めしたかは知らねえが、こんなことで臭い飯をくうなんて、気の 利 ( き )かねえ話があるものか。 御牢舎ぐらいですみゃいいが、隠密を 匿 ( かくま )いだてした 連累 ( れんるい )となると、とても、そんなことじゃすむまいぜ……エエ源次」 「…………」 「船大工の部屋にゴロついているお 前 ( めえ )にしろ、どこかの在所にゃ、肉親もいるだろうに、 助任川 ( すけとうがわ )の 曝 ( さら )し場へてめえの首が乗ってみろ、親兄弟にまで、泣きを見せなくちゃなるまい。 アア、口が 酸 ( す )ッぱくなった、俺にもこれ以上の親切気は持ちきれねえ、さ、立ちなよ、そろそろ行く所へ行くとしよう」 「……ま、待って下さい」 「腰が立たねえのか」 「いってしまいます、隠していたなあ、あっしが悪うございました」 「白状するっていうのか」 「ヘイ……」と源次はしおれ返って、唇の血を吸うように噛みしめた。 「じゃ、弦之丞とお綱の奴は、いったい、どこに 匿 ( かくま )われているのだ」 「それだけは、まったく源次も知らないことなんです……ただ、あっしの知ってるだけを白状します」 「嘘はあるめえな」 「ヘエ、嘘と 真 ( まこと )を七分三分にまぜたところで、なんの役にも立ちゃしません。 ほかのことは、洗いざらい申し上げます」 「ウム」 「あっしは、あの侍と若い女が、法月というのかお綱という女か、国者かどこの者か、 皆目 ( かいもく )、そんなことだって知りゃしません。 ただ棟梁の大勘が、お家様の義理合いでやむなく一時の 匿 ( かく )れ 家 ( が )を、どこかへ探してやったことから、細かい用事をあっしにいいつけたんでございます」 「そのお家様というのは」 「徳島の御城下と大阪表に出店のある、四国屋のお 久良 ( くら )様、たしか、そういったと思います」 「ふウム」 どうやら筋がほぐれてきた。 眼八は、釘抜きのように固く結んでいた口もとから、大きな前歯をニッとむいて、 「その四国屋のお久良に、大勘のやつは、どういう義理合いをうけているんだ」 「あすこの持船以外の仕事は、 雑魚 ( ざこ )舟ひとつつくろわないというほどな 大顧客 ( おおとくい )でございます」 「ウ、なるほど」 「ことに、お家様には可愛がられている大勘なので、こんどのことも、嫌とはいえずに頼まれたことだろうと思います」 「そういう仲じゃ無理はねえ、そして、お久良は今大阪にいるはずだが、どうしてそんな打合せができたのか」 「ちょうど、先々月の 月半 ( つきなか )ばでした」 「ウム」 と、胸で日数を繰っている。 「お久良様からきた飛脚をうけて、棟梁が何か心配そうに考えていました。 「ウーム……それから」と、 笑壺 ( えつぼ )にいって一心に聞く。 「その十九日の朝、棟梁が突然、 小松島 ( こまつじま )に長崎型の船が入っているから、仕事のために見ておこうといって出かけました。 わっしも、自分から頼んでついてゆくと、向うへ着いたのはもう夕方で、浜へ行ったが、そんな船は見当たらねえんです。 「それから?」 と眼八は、相手に顧慮のいとまを与えないで、問いつめた。 「じゃあ船図面を取りに来たわけじゃないンですか、ときくと、棟梁は、ウム、と少し怖い顔をして、小松島の磯をブラブラあるいていましたが、そのうちに、どこからか、船頭三人、ギーと棟梁の前へ漕いできて、どっちも 黙 ( だ )ンまりで乗りました」 「それが、十九日の夕方だな」 「そうです。 宵はよかったが 夜半 ( よなか )です、イヤな雲になってきました」 と源次は、その晩のことを思い浮かべるらしく、海の方へ眼をやった。 宵に飲んだ酒の気もどこへやら、 更 ( ふ )けるほど冴えてきた月明りに病人のような顔色だ。 で、みんなヘトヘトに疲れた頃、真っ黒な沖合に、ポチと、赤い灯が一ツ、浪にもまれて見えました」 「……オオ、……ウム……」 「あれだ! というと棟梁が、三人の船頭に、十両ずつの 酒代 ( さかて )を投げだして、腕ッ限り 漕 ( こ )がせました。 何がなんだか分りゃあしません、途方もねえ 大暴風雨 ( おおあらし )です。 だが、ヒョイと目を開いた時には、向うの船の赤い灯が、前よりよッぽど大きく見えて、なんだか、わーッという声が聞こえやした。 近寄ったナ、と思う途端に、その灯も消えれば向うの船も、グルグル廻っているようでした。 なおワッワッという人間の声です。 まもなく 白々 ( しらじら )と夜が明けて、少し 凪 ( な )いだ時には、こっちの船は、 昨日 ( きのう )の小松島を素通りにして、 日和佐 ( ひわさ )手前の 由岐 ( ゆき )の 浜 ( はま )へ、ギッギッと帰っていたんです。 ……ヘイ、これだけいえば、もうお分りでございましょう、その船の中へ、何をすくい込んで来たか、これ以上、棟梁のしたことをはッきりいうのは、なんぼなんでも、舌がしびれていえません。 どうか、お察しなすって下さいまし」 いかにも眼八には、これ以上の 贅言 ( ぜいげん )をきく必要がない。 あの理智の澄んだ四国屋のお久良が、大阪表から つづらを首尾よく乗せただけで、阿波に到達した時の、より以上きびしい岡崎の 船関 ( ふなぜき )や、 撫養 ( むや )の木戸の厳重を、案じていない筈はない。 で、沼島の沖あたりで、こう、かく、というような 諜 ( しめ )しあわせは、とくから 諜 ( しめ )しあわされてあったのだ。 してみると。 そして、あの晩の 暴風 ( しけ )と、弦之丞の運命が窮極にまで行ったと見えたことが、それから後、 二月 ( ふたつき )あまりの経過とともに、すっかり阿波の要心をゆるませ、かなり目ばしこい三位卿にしてからが、一度は、弦之丞の最期を 漠然 ( ばくぜん )と信じたものだ。 眼八は、息を内へひいて源次の自白を聞いていた。 かれも、大阪以来の 顛末 ( てんまつ )は承知していたが、こんな裏面があろうとは、想像もつかないこと、潮びたしの刀から足をつけてここに到ったのは、自分ながら、あやまちの功名という気持がする。 「そうか! ……」 と太い息と一緒に、聞き終って、 「その晩 傭 ( やと )われた船頭、誰と誰だか、覚えているだろうな」 「存じません。 へい」 「徳島 訛 ( なま )りか、それとも日和佐の船頭か」 「この辺の者ではなく、おそらく、 抜荷屋渡世 ( ぬきやとせい )の仲間だろうと思うんで」 「抜荷屋か? ……」と眼八も少しウンザリした顔だ。 弦之丞の召捕をすました後で、大勘をはじめそいつらも、 芋 ( いも ) づるにあげてしまおう下心で聞いたのが、海鳥のように、巣を定めない抜荷屋では、いくら釘抜きでも手がつけられない。 長崎沖渡しで、 蛮船 ( ばんせん )から禁制の火薬や兵器を買いこむため、一時、蜂須賀家を利用した抜荷屋のともがらが、いまだに近海の 野々島 ( ののしま )、出羽島、弁天島あたりに巣を食っていて、手のつけられない 海辺漂泊者 ( かいへんひょうはくしゃ )となっている。 山の 山窩 ( さんか )、海の 抜荷屋 ( ぬきや )、どっちもどっちのしろものだ。 「じゃ、まあ、それはいいとして……」と、 匙 ( さじ )を投げて「 由岐 ( ゆき )の 浜 ( はま )へあがってからどうしていた?」 「あっしはすぐに、 潮水浸 ( しおびた )しになったお 両人 ( ふたり )の刀を、大黒宗理の所へ頼んでくれと渡されて、棟梁と別れました」 「そこは?」 「八幡様の森でした」 「弦之丞と口をきいたか」 「あっしがいる 間 ( うち )は、棟梁もその人も、黙りあっておりました。 「そうか、それですっかり事情が分った。 まア、今のところじゃこの辺でよかろう、オイ源次、立ってくれ」 「ヘイ、ありがとうございます」 「なにがありがてえんだ」 「知ってる限りのことは白状しました。 約束どおり、放しておくんなさるんでしょう」 「けッ、虫のいいことをいうなッ」 と、いきなり縄尻をしぼった眼八、 「さ、代官所へ歩け!」 と、源次の腰を蹴って、石段の方へ引きずってきた。 欺 ( だま )しに乗ったと知って、源次は、地 だんだをふんだ。 いまさら、大勘の信を裏切ったことをすまなく思う。 親方の秘密を売って助かろうと思った根性が、われながら情けない。 だが、もう追いつかない。 ただ、歯ぎしりを噛むばかりであった。 釘抜きの眼八に、弱腰を蹴とばされて、勢いよく突ンのめりながら、何かわめいた。 眼八は、セセラ笑いをして、 「さ、出かけた、出かけた!」 と、もう一つ、足をあげて 弾 ( はず )みをくれる。 よろけた途端に、捕縄が張って、また仰むけにひっくりかえった。 もう 自棄 ( やけ )だという風に、 「畜生ッ」 と、かぶりついてくるのを、 「 亡者 ( もうじゃ )めッ」 と、 用捨 ( ようしゃ )のない捕縄の端で、牛を 懲 ( こ )らすようにひッぱたく。 そして、半死半生にさせながら、女坂をゴロゴロと蹴転がして行った。 すると。 眼八は、 「あっ?」と、 むねを 衝 ( う )ったが、その明りの一つに、 海部代官所 ( かいふだいかんしょ )という朱文字を認めてホッとした。 桐井角兵衛 ( きりいかくべえ )のさしずで、少し遅れて 出張 ( でば )ってきた徳島の 町同心 ( まちどうしん )、 浅間丈太郎 ( あさまじょうたろう )、田宮善助、 助同心 ( すけどうしん )岡村 勘解由 ( かげゆ )。 提灯 ( しるし )を持っているほうは、海部同心の安井 民右衛門 ( たみえもん )と 土岐 ( とき )鉄馬のふたり。 「どうしてここにおったか」 と、一同、不審な顔つきである。 実をいうと眼八は、大勘の家へ旅人として静かに泊り込んだまま、 夜半 ( よなか )に、外へ迫る 捕手 ( とりて )へ案内をする約束であった。 それが、 無益 ( むだ )だとみぬけたし、源次という者に執着をもったので、急に独断で方針をかえた。 そして、これからその源次を代官所へ曳いて、 断 ( ことわ )りに行こうと思っていた 出鼻 ( でばな )だったので、向うも、合点がゆかない様子である。 手短かに、源次から調べ上げた事実を話すと、五人の同心、少し出しぬかれて 鼻白 ( はなじろ )んだ様子に見えた。 眼八は 傲慢 ( ごうまん )に胸を張って、 「じゃ、こいつを渡しておくから、弦之丞を 召捕 ( あげ )るまで、海部の 揚屋 ( あがりや )へ預かっておいて貰おうか」といった。 海部側の同心は、 言下 ( げんか )に、 「それは困る」と 拒 ( こば )んだ。 すわとばかり、代官所の騒ぎである。 折から、助勢にきて打合せ中の徳島同心、浅間、岡村、田宮の三名も加わって、捕手はうしろ巻きとして山下に伏せ、五人は先廻りをしてここへ登ってきたところ。 「今、源次をここで預かるのは困る」と、にべなくいったのも、ムリではない。 寸刻を争っているのだ。 だが、眼八は 我 ( が )を曲げない。 ここは、海部代官の支配区域、本来、お手前たちの腕だけで、こんな者は、とうにパキパキと 召捕 ( あげ )てみせなければならないのではないか。 それを、徳島から釘抜きの眼八様が 助 ( すけ )に来てやっているんだ。 おまけに、縄までかけて渡してやるんだ。 慢心もあるし、 郡奉行 ( こおりぶぎょう )の配下というと低く見る癖がついている。 で自然と、手先のくせに同心を 顎 ( あご )あつかいな物言いぷし、海部側も納まらない、ガヤガヤしばらくもめていた。 ところへ、捕手のひとりが飛んできた。 大勘の姿が、 参詣 ( さんけい )道に見えたという。 もうグズグズしてはいられなかった。 「おい、捕方」 と、仲を取って、 助同心 ( すけどうしん )の岡村 勘解由 ( かげゆ )が、 「お前が暫時これを預かっておけ」 と、半死半生の縄つきを渡した。 渡された捕手は、源次を抱きこんで、女坂を駈け上がり、さっき、眼八が腰をすえたあたりの巨木へ、縄尻を巻いて、番に立った。 海部側も徳島側も、もうケチな仲間割れをいいあっているひまはない。 無言で、広い境内の物かげへ、思い思いに姿を散らかす……。 腕でこい! と眼八は、ふたたび前の木蔭へ返って、 伽藍 ( がらん )の正面につづく白い敷石を睨みながら、腹巻を固く締めた。 もう、 人気 ( ひとけ )は滅している。 時折、伽藍の近くから、 夜籠 ( よごも )りの 遍路 ( へんろ )の 鈴 ( りん )が、ゆるく、眠たげに……。 シーンとしてしまった。 月の位置もだいぶ変って、 細 ( こま )やかな針葉樹の影は、大地へ 蚊帳 ( かや )の目のようにゆれている。 石段の口から、一ツの影が上ってきた。 月に白い 菅笠 ( すげがさ )に、顔は暗く隠されているが、肩幅のひろい 巨男 ( おおおとこ )、 裾 ( すそ )をとって、 脚絆 ( きゃはん ) わらじ、道中差を落している。 ジッと、境内を見廻していたが、やがて、大股に本堂へ向ってきた。 と、思うと、またふと足を止めて、 参差 ( しんし )とした杉木立の奥をすかすように見た。 鈴 ( りん )が鳴っている。 かすかだが、耳にふれた。 夜籠りの 詠歌 ( えいか )の 鈴 ( りん )の 音 ( ね )。 それを便りに、木立の蔭へまぎれ込もうとすると、いきなり、 「大勘ッ」 と、おどりかかって行った釘抜きの眼八が十手で、力まかせに 肘 ( ひじ )を 撲 ( なぐ )りつけてから、 「御用だッ」 と 烈声 ( れっせい )をあげた。 「あッ」と、よろめきながら大勘。 「しまった!」 という様子で、 脱兎 ( だっと )のように後へ駆け戻ったが、もう、むらがる人数が足もとを待ちかまえて、 「御用ッ」と、 飛縄 ( ひじょう )の風! 「御用だ!」と十手の雨。 月光を 衝 ( つ )いてわめきかかってきた。 わらわらと八方を 塞 ( ふさ )いで、入れ代り立ち代り、からんでは離れ、組んでは解かれる。 「 退 ( ど )いた」 と眼八、海部側の者に見よがしとばかり、群れをわけて正面から飛びかかる。 大勘は道中差を抜いて、かれの 真 ( ま )っ 向 ( こう )を待ちかまえた。 だが、眼八の十手が、風を切って入るのと同時に、飛んできた 捕縄 ( とりなわ )が、拝み打ちに下ろしたかれの手元をさらって、ガラリと刃物を巻き落してしまった。 黒い人間の声が、山になって、ひとりの上へ 揉 ( も )みあった。 「ご苦労だった」 と、徳島の同心浅間丈太郎と田宮善助が、火事を消したように一同をねぎらった。 海部側の安井、 土岐 ( とき )の二同心も、自分たちが、手を下すにいたらなかったことを 同慶 ( どうけい )しあって、 「眼八、さすがに、鮮やかだな」 と、ほめた。 「オイ、そっちの奴も曳き出してこい」 助同心の岡村勘解由が、口へ手をかざして向うへどなると、 「おっ」と、さっきのひとりが預けられた縄付きの源次を曳いてくる。 「引きあげましょうか」 と同心連中、涼しい顔で、月明りの顔を見あった。 わざと、正面の参詣道を避けたのは、医王山薬師如来の霊地を意識するおそれであった。 かれらも、 不浄役人 ( ふじょうやくにん )ということを、気づかずに自認している。 「暗いな」 「こう廻るのが近道なのだ」 そういったほど、 喬木 ( きょうぼく )の厚ぼったい茂りが、一同の上をふさいできた。 みんな わらじばきなので、シト、シト、シト……と揃う 跫音 ( あしおと )が言葉のない間を静かにつなぐ。 ドウーッと、滝の落ちるような音の奥から、寒いような 嵐気 ( らんき )が樹々の眠りをさましてくる。 大勘は時折、ものいいたげに源次のほうを見た。 源次もうなだれて棟梁の影を眺めた。 だが、無論、 一言 ( ひとこと )声をかけることもできない。 白衣 ( びゃくえ )をまとった 遍路 ( へんろ )である。 紺 ( こん ) べりの 道者笠 ( どうじゃがさ )をかぶり、白木の杖と一個の 鈴 ( りん )を手にしていた。 そして、 黙然 ( もくねん )と、そこに突っ立った白い姿に、 絣 ( かすり )のような木の影が落ちている。 「 退 ( ど )けっ」 と、ひとりの捕手がどなった。 うつむき加減に、杖をついた道者笠は、月に咲いた 毒茸 ( どくだけ )のごとく、ジイと根を 生 ( は )やしたまま、 退 ( ど )こうともせず、驚いた様子も見せない。 道者笠の遍路、いやに、 おっとりとした物構えで、意気揚々と引き揚げてきた捕手の前に、 鷺 ( さぎ )とも見える 白木綿 ( しろもめん )の姿を立たせ、肩杖をついて、 黙然 ( もくねん )と、いつまでも狭い山笹の小道をふさいだまま、どなられても、動く様子がないので、先に立ってきた捕手の四、五人、少し、小気味がわるくなってきた顔色。 「オイ、同役」 と、後からボツボツ歩いてくる仲間を待ちあわして、 「変なやつがいる」 と、肩だけは突ッ張ったが、やや息を殺したかたちである。 「なんだ、 遍路人 ( へんろにん )ではないか」 「そうらしい」 「さっきから間の抜けた 鈴 ( りん )を振って、しきりと医王山の境内をウロついていた奴だろう。 退 ( ど )け 退 ( ど )けッ、海部代官所の者と徳島同心の方が、縄付をつれて通るところだ。 動かねえと蹴飛ばすぞ!」 遍路の笠へ顔をよせて、 威猛 ( いたけ )だかにどなりつけたが、かれは、依然として、ヌックと立ったまま、肩杖をついたまま、そして、紺 べりの笠をうつ向けたまま、返辞もせねば、微動もせぬ。 ははア! とそこで顔を見あわせたことである。 こいつア片輪だ。 ツンボか 唖 ( おし )か、気の変な脳病もちかに違いない。 常人なみにあしらって、 埒 ( らち )のあかないのはこっちの落ち度。 だが、不具者の遍路、お 上 ( かみ )の者といって手荒くもなるまい、どこかそこらの横へソッと抱いて片づけてしまえ! と目くばせで五、六人ゾロゾロと前へ出ると、その手も 触 ( ふ )れさせず、杖一歩、かえって向うから 一跨 ( ひとまた )ぎして、 「あいや」 と、少し笠を揺るがせる。 とは知らずに、得意な眼八と五人の同心組、なお十四、五人の捕手に縄付の前後をまもらせて、何かガヤガヤと話しあいながら、杉と杉との間をうねって押してきたが、道が狭いので三人と肩を並べては歩けず、そのまに先がつかえてしまった。 「オイ、どうしたんだ?」と、うしろのほうであせっているのは眼八の声。 その返辞もこずに前の者が、逆に、タジタジと 後退 ( あとずさ )ってきたので、のび上がってみると、ひとりの遍路を相手に何か言い争っているふうなので、眼八は縄付のそばを離れて、すばやくそこへ 潜 ( くぐ )って行った。 と見て、海部同心の安井、土岐、助同心の岡村 勘解由 ( かげゆ )、眼八について列の前へかき分けて出る。 遍路は、 磐石 ( ばんじゃく )のように 佇立 ( ちょりつ )したまま、しきりと 猛 ( たけ )る捕手などには、言葉もくれず、耳も 藉 ( か )さない。 そうして、同心組の者が来るのを待ち設けていたように思われる。 「てめえは夜籠りの遍路だろう、何をグズグズいっているんだ、ついでに海部の百姓牢へも 参籠 ( さんろう )して行きたいというのか」 と、眼八は無造作に見て、その 襟 ( えり )がみをつまみそうに、片腕の袖をまくりあげたが、キラッと笠の蔭から 射向 ( いむ )けられた眼光りに、そう簡単に手がのびなかった。 「お前たちに用はない、上役がおるであろう、同心の者をこれへ出せ」 「な、なにッ?」 「話がある! 同心衆」 呼ぶように腰を伸ばした。 「何者だッ、貴様は」 海部の安井民右衛門、胸を張って 威喝 ( いかつ )した。 浅間丈太郎、田宮善助、徳島側の者も何事かと騒いで、捕手を 排 ( はい )して進んできた。 そうして、口々にまた 咎 ( とが )めた。 「拙者は」 と、もの静かに名のりかけ、 「おのおのの尋ねている、法月弦之丞でござるが……」 と、澄みきった 態 ( さま )で、向うの 動 ( どう )じ方を眺め廻した。 ぎょッとして足もとを浮かしかけたが、同心も捕手の者もひるがえって、自分たちの耳を疑っているように。 こういったと思う相手の、こともなげな今の声を反復して、見つめあった。 そうして、彼とこれとの間に、氷のような無言が張りつまった。 徳島の城下はいうまでもなく、八郡の代官手代が、血眼になって検索している人間が、捕手や同心の集まっている直面へきて、こう冷然と、みずから名乗って立つ ばかがあろうか。 と、一度は思ったが……。 彼の 自若 ( じじゃく )として不敵な 態 ( さま )。 わずかにうかがわれる 面 ( おも )ざし、背 恰好 ( かっこう )、まぎれもあらず、人相書のそれとピッタリ。 無益な殺傷沙汰はしたくないと思う、で、話がある! 静かにせい」 と、自分の配下でも 鎮 ( しず )めるように威圧した。 十手を 把 ( と )る者が、これだけのことを、 対手 ( あいて )に 悠々 ( ゆうゆう )といわせただけでも恥辱の限りだ。 多少の犠牲者を出すまでも、一気に、召捕ってしまえ! そうはじりじり思ってみるが、どうにもならない 対手 ( あいて )だった、どこから飛びつく隙もない、いや、既にそういう衝動を作る大きな意気というものを失っていた。 弦之丞は知っている。 すでに、捕手の 頭 ( かしら )は冷智になって自分を見ている。 何か一瞬の狂人にさせるきッかけがなければ、かれらは決して、 朱 ( あけ )をあびる域へまで、捨身にかかってこられない。 「弦之丞!」 やむなく浅間丈太郎がいった。 しかし、拙者一身のため、 縛 ( ばく )をうけた大勘と源次を見捨ててもおかれぬ。 どうでもこのほうへ申しうけるぞ」 「だ、だまれッ」 「アイや」 「文句をいわさずに、弦之丞を召捕ってしまえ」 「騒ぐなッ、ここは医王山の霊域、汝ら、不浄な血と死骸を積んで、寺社奉行への申しわけ何とするか。 それはともあれ、仏地への 畏 ( おそ )れ、また第一足場が悪い。 まず騒がずにおいでなさい。 山を下るまでご同道申しあげよう」 先に立って歩きだした。 まさか、逃げるとは考えられない。 「 傍若無人 ( ぼうじゃくぶじん )なやつだ、よしッ、俺が」 と、釘抜きの歯がみをさせた眼八。 目をつぶってゆく気もちで、一 跳足 ( ちょうそく )に、かれの体へ貼りついた。 と、弦之丞、身をひねって、 「これッ」 と、眼八の小肥りな体を、左の腕の中へ締め込んで、グッと抱きあげ、 後 ( あと )の十手へ白木の杖を一 揮 ( ふ )りするや、急に、眼八をかかえたまま、女坂を闇の底へ、ドドドドドッと駈けだして行った。 怯智 ( きょうち )な居 すくみをどやされた捕手や同心たち、あッと眼色をかえ、初めて、瞬間的な狂人になり得て一散に、 麓 ( ふもと )へ小さくなる白いものを追いかけた。 やがて、薬王寺の山の 裾 ( すそ )で、ワーッと、乱闘の叫びが起こる。 目前にいた 対手 ( あいて )を逸して、今さら仰天した捕手のわめきであろう。 逃がしては大事と、駆け廻っている同心たちの 叱咤 ( しった )であろう。 ところが、皆の疾走したあとに、三、四人ほど駆けおくれていた。 召捕った二人の縄尻をつかまえていた者で、これは 空身 ( からみ )でないから、走るに走り得ないで、縄付を突きとばすように、後からあわてて気を急ぐ。 いちど走りだした同心の 土岐鉄馬 ( ときてつま )は、ふと思いあたって、 「アッ、もしや?」 と、途中から 踵 ( くびす )をめぐらし、大急ぎで後へ戻ってみた。 かれの推測は誤っていなかった。 はたして、大勘は、この機会にすなおになってはいなかった。 自分の縄尻をつかんでいる捕手を蹴倒し、源次も、腕はきかないが、親方の大勘と一緒に、死にもの狂いで、あばれ廻っていた。 近づくに従ってその様子の見えた土岐鉄馬は、いい所へ戻ってきたと一足 跳 ( と )びにそこへ来るが早いか、 「おのれ、まだ無用な 手抗 ( てむか )いをしているかッ」と、十手をもって、骨ぶしの砕けるほど、源次の肩を 撲 ( なぐ )りつけた。 「わッ……」 と、大地へ仆れたが、それは、打たれた源次ではなく、鉄馬であった。 後頭部から背すじへかけて、土岐鉄馬は斬られていた。 傷が浅いので死にきれず、ウームとうめいたかと思うと、十手をつかんだなり自分の血の中をころげている。 「あッ」と、縄尻をほうりだして、逃げかけた捕手も、 脛 ( すね )を払われて前へ のめった。 残るひとりは、源次が夢中で蹴とばした足の先に、 脾腹 ( ひばら )をかかえて 悶絶 ( もんぜつ )した。 その、 茫 ( ぼう )とみはった目の前には、ひとりの美女が立っていた。 艶 ( えん )とはいえないがすきとおる水のような美しさ、白い 行衣 ( ぎょうえ )を着た肌の白い黒髪の美女である。 「オオ、お綱さん!」 大勘は源次へ目くばせした。 源次は 縛 ( いまし )めを切られた腕をさすりながら、あたりを見廻してかがまり込む。 それはまだ大黒宗理の手で 研 ( と )がれてきたばかりの 刀 ( もの )、斬ってもその切ッ 尖 ( さき )に、口紅ほどの血も 止 ( と )めていない。 「ここにいては海部の捕手が、また押し返してくるにきまっているから、お綱さんは、源次に道案内をさせて、ここの裏山を抜けて、 赤河内 ( あかかわち )へお逃げなさい。 あっしは、捕手に追われて行った弦之丞様の安否を見届けて行きます」 「ご親切だけれど、それに及ばない。 弦之丞様は、わざと捕手を釣りこんで、麓のほうへ駆けだすから、後で三人はここから先に、土佐街道の 寒葉 ( かんば )へ出て、そこで待ちあわしていてくれろとおっしゃったのだから」 「ですけれど、あの人数に囲まれちゃあ……」と、大勘が不安らしくいうのを、お綱は、 微笑 ( ほほえ )んだきりで、自分から先に裏山の道を上りだした。 そして、予定どおりに 寒葉 ( かんば )の近くで、後から来た弦之丞と落ちあった。 かれの手甲と 裾 ( すそ )の 二所三所 ( ふたところみところ )に、黒い 血痕 ( けっこん )がついていた。 大勘は、怖ろしいような、不可解なような顔をして、歩をともにしてゆく、その人の横顔を眺めていた。 こんもりした 槙 ( まき )の森蔭で、わずかな眠りをとった後。 大勘はふところから一枚の山絵図を出して弦之丞に見せた。 お綱もそばへ寄って眼を落した。 剣山 ( つるぎさん )の山絵図である。 源次は森を出て見張っていた。 こうしている間も、 日和佐 ( ひわさ )から殺到してくるであろう捕手の跫音が聞えるようでならない。 「まるで、道がないような所です」 大勘は、数日家を空にして、苦心して描いた山絵図を前に、あれこれと、細かい心おぼえを説明した。 かれが指さす図面に目を 辿 ( たど )らすと、 彼岸 ( ひがん )剣山の 頂 ( いただき )へ行きつくには、まだ 重畳 ( ちょうじょう )たる山また山が 阻 ( はば )めている。 杣 ( そま )か 猟師 ( りょうし )でもなければ、通わない所が多い。 大体、剣山へのぼるべく、ここを選ぶのは順路ではない。 だが、順路をとって行かれぬ二人の目的、ぜひがなかった。 弦之丞とお綱よりは、二日半ほど早く徳島の城下を出ている竹屋三位卿とほか三人組が、急いで行ったあの道こそ、剣山へのぼるに都合のいい表道。 途中、お十夜の用で、川島に一日あまり費やしたにしても、かれらの一行は、やがて 貞光口 ( さだみつぐち )から 塵表 ( じんぴょう )の巨山を仰いでいるに違いない。 かれは北、これは南、かれは表道から、ふたりは道なき裏にかかっている。 だが、その者たちが、自身より一足早く、甲賀 世阿弥 ( よあみ )を殺しに向っているとは、もとより知らないふたりであった。 「何よりの心づけかたじけない」 大勘の厚意を謝して、弦之丞はその山絵図をふところに納め、追手の姿を見ぬうちにと、また一心に道を急いだ。 ある時は、口もきかず、ある時は、 行願 ( ぎょうがん )に向っているような汗をしぼっている自身に気づいた。 「剣山は……まだ?」 お綱はそういう言葉を、時折、大勘へくり返していた。 「まだ見えません」 …………。 「剣山は?」 「まだです」 清澄な空気、耳なれぬ 禽 ( とり )の声、 森々 ( しんしん )と深まさる山また山。 行けども山である、行けども山である。 沢を下り、 岨 ( そば )をめぐり、わずかな山村を眺め、また奥へ奥へと歩みつづける。 たまたま逢う 樵夫 ( きこり )や部落の人も、遍路姿のふたりに、何の怪しみも持たなかった。 「あれだ!」 力のこもった声で、大勘がこう指さした。 四人は、 星越峠 ( ほしごえとうげ )を踏んでいた。 「えっ、剣山?」 「あれが剣山です。 次郎笈 ( じろぎゅう )と 矢神丸 ( やじんまる )の間から、肩を張りだしている山がそうです」 「アア、あの……」と、お綱も大勘が指さすところを指さした。 弦之丞も 黙然 ( もくねん )と、ふたりの見まもる山を見つめている。 お綱は何かの感慨に 衝 ( う )たれて、白雲の流るる行く手に 佇立 ( ちょりつ )した。 そう思って見た山は、父の姿を仰ぐのと同じ感銘を与えた。 まだ見ぬ父の姿は、剣山を見て逢ったと等しい心地がした。 動こうともせずじっと山と直面しているうちに、お綱の目がしらは、涙でいッぱいになってきた。 涙で山が見えなくなった。 (お父さん! 生れてからまだ顔を知らないお父さん! お綱はここまで来ているんですよ! あなたに会いに、あなたが生涯をかけた仕事を 活 ( い )かしに) 声いッぱい、あなたの 雲表 ( うんぴょう )へ、お綱は呼びかけてみたかった。 だが、直前に見えるようでも、まだそこへは数里、それも、これからはいっそう 嶮 ( けわ )しい 峡谷 ( きょうこく )や岩脈に 阻 ( はば )まれている距離がある。 「では、大勘も源次も、どうか、ここまでとして、後へ帰ってくれるように」 弦之丞は、笠ぐるみ 頭 ( ず )を下げて、二人へ礼をのべ、袖を別つことを宣した。 「気の毒な……」と、弦之丞はふと暗くなった。 「じゃ……どうぞ御堅固に」 と大勘も別れをつげたが、弦之丞のすまぬ色を見て、言い足した。 「お案じ下さいますな。 あっしと源次は、これから土佐 境 ( ざかい )の港へ出て、そこから 抜荷屋 ( ぬきや )の仲間をたのみ、しばらくどこかの島でほとぼりをさましております。 そのうちには、四国屋のお家様にお目にかかって、何とかいたすつもり、そこは手に職のあるありがたさで、 尺金 ( さしがね )一 本 ( ぽん )さし込んでいれば、どこの国にも 天道様 ( てんとうさま )は照っております」 なおいろいろと、山へかかった場合の注意を残して、大勘と源次は後へ取って返した。 そこは廃寺の方丈のあとであろう。 荒れはてているが、古ぶすまの 白蓮 ( びゃくれん )には 雲母 ( きらら )のおもかげが残っていた。 古風な院作りの窓から青い月影がしのびやかに洩れている。 荒涼とした室内の、 くもの巣だらけな 欄間 ( らんま )や 厨子 ( ずし )に、はげ落ちた 螺鈿 ( らでん )の名残りが猫の目みたいに光っていて、 湿 ( しめ )っぽい 妖気 ( ようき )を漂わせ、 かびと土の香をまぜたような、一種の 臭 ( にお )いが 面 ( おもて )を 衝 ( う )つ。 「明日のために」 との心がまえで、あれから峠を下りた弦之丞とお綱は、充分な眠りをとるべく、この廃寺へ入った。 眠ろう。 眠らなければいけない。 お綱は 経筥 ( きょうばこ )にもたれ、弦之丞は何かに腰をかけて、杖に肩を 支 ( ささ )えていた。 しかし、しきりと 旋舞 ( せんぶ )する毒虫やバサと壁をうつ 蛾 ( が )の音に、ふたりの神経は容易にしずまらなかった。 「明日は剣山にかかるのだ」 そう思う 昂奮 ( こうふん )も、よけいに眠りを拒んでいる。 ほとんど、死の世界のような 寂寞 ( せきばく )さも、かえって心を冴えさせた。 うつうつとまどろんでいたかと思った弦之丞も、やはり眠りつかれずにいたとみえて、不意に立って、方丈を出て行った。 しばらくすると、枯れ杉と 榧 ( かや )の枝をつかんで戻ってきた。 そして、所を見計らって、その 榧 ( かや )の木をプスプスと 煤 ( いぶ )しはじめる。 お綱の眠りつけないでいる様子をみて、蚊や毒虫を追ってやろうとする、弦之丞の心づかいであった。 うすくまつわう煙の情けが、お綱の身を 和 ( やわ )らかに巻く。 ようやく、虫の責め苦からのがれた。 だが、お綱はまだ眠れなかった。 「弦之丞様、まだ夜明けには間がありましょうか」 「そちは少しも寝ないようだが」 「なんとなく気が冴えて」 「それはいけない」 「でも、ゆうべあの森で、だいぶよく眠りましたから」 いっそ夜の明けるまで語り明かしたいとお綱は思った。 弦之丞も眠られぬまま、つい答え、つい話頭を向ける気持になる。 万吉はどうしているだろうか? 常木 鴻山 ( こうざん )もさだめし消息を案じているだろう? 松平左京之介様は、自分たちの 吉左右 ( きっそう )を、首を長くして待っているに違いない。 そんな話。 かれは、それなり 黙然 ( もくねん )としてしまった。 お綱は自分のつつしみを破って、ふと弦之丞を 憂暗 ( ゆうあん )にさせたことをすまなく思った。 もとより、この人とお千絵様とは、切る、捨てる、ことのならない仲なのである。 生れた時から悲恋の宿命をもっている恋。 咲かない土に 芽生 ( めば )えた花、それが、自分の恋ではなかろうか。 普通の 境遇 ( きょうぐう )の人なら、なんでもない、実父の顔をひと目見るということが、生涯最大な希望になるほど 不幸 ( ふしあわ )せな身には、恋にも、同じような恵まれない宿命をもっていた。 自分の恋のゆるされる道のりだ。 そしてその恋も、あるものを 超 ( こ )えてはならない恋。 はかない! こんなはかない恋があろうか。 父の世阿弥に逢うという、希望の 彼岸 ( ひがん )に立った時は、恋人を、義理のあるお千絵様に返さねばならない時だ。 剣山のいただきは、お綱に最大な希望と最大な失望の二ツをもって待っている。 人生の悲喜明暗ふたいろの雲がそこには たなびいている。 弦之丞は沈黙をまもり、お綱は眠りを 装 ( よそお )って、思い悩む。 「ああ、もっとあの山が、遠ければいい……」剣山にいたることが遠ければ遠いほど、お綱の恋はこのままでいられる。 よしやそこに、あるものを 超 ( こ )えるまでの強い力が結ばれなくても、ふたりの世界、楽しい旅が、お綱にはある。 道が 嶮 ( けわ )しければ 嶮 ( けわ )しいほど、夜が暗ければ暗いほど、お綱の旅は人知れず楽しい。 しかし、もう二人は、剣山の 裾 ( すそ )まで来てしまった。 苦難、迫害、ふりかえってみても、お綱には、なお短かった心地がする。 明日 ( あす )は明暗の雲をわけて、間者牢に初めての父の顔を見る! それも待たれてやまぬものだ、今でも、想像の父の顔が、眼の前にチラつくほどである。 どういおう! なんと名乗ろう! 千々 ( ちぢ )に乱れて涙ばかりを見あわすであろう! そんな想像だけでも涙がわく。 と、かの 女 ( じょ )の乱れた胸に、微笑をそそるような空想がかすめた。 「死ぬという方法があるじゃないか。 剣山へ行きついた後に、弦之丞様とふたりで死ぬのが、すべての幸福をもちつづける一番いい道じゃないか。 死出の旅は長い! 剣山へ来たよりは遠い! そして静かで果てというものがない」 父に会った 歓 ( よろこ )びの絶頂に、弦之丞とともに手をとって死のう。 そう思うそばから、また、一方の心は、 (お千絵を不幸に 墜 ( おと )してもよいのか!) と責める声がする。 剣山に行きついて、剣山の土になるのは、いわゆる、 木乃伊 ( みいら )とりの 木乃伊 ( みいら )になるの 類 ( たぐい )で、弦之丞がここまでの 苦艱 ( くかん )も、結果は、無意味なものに帰してしまう。 ふたたび重囲の阿波を逃れ出なければならない。 その時になって、初めて、父の名も闇から光明へ、弦之丞も一箇の武士として、栄光の江戸に迎えられる。 すべての、いい結果を 呪 ( のろ )って、わがままな死の世界へ、弦之丞を導こうとする心を、お綱は自身でおののいた。 「そうはなれない、私の気性でもそうはなれない」 お綱は情熱と理智のたたかいにもまれて、固く 睫毛 ( まつげ )をふさいでいた。 「生きねばならない」 と、つよく思い返した。 「目ざして上る時よりも、いっそうなまっしぐらで、剣山をのがれ出なければならない。 私はそれを信じよう、考えてみればもともとから何もなかったお綱じゃあないか」 眠りを 粧 ( よそお )っている まぶたから、いつか、涙……涙……涙……とめどなくながれている。 廃寺の内陣で唱える人声があった。 お綱は、今宵この荒れ寺に、自分たちのほかにも行き暮れた遍路が雨露をしのいでいるのを知って、そっと、涙をふきながら弦之丞を見た。 杖により、壁にもたれて、 寂 ( じゃく )としているその人は、寝ているのか、起きているのか分らない。 お綱は遠いところの、 鉦 ( かね )と 詠歌 ( えいか )の声に、思わず耳をすませられた。 と、突然。 バリバリッと、院作りの窓を破り、おどり込んできた同心四、五名。 山支度をして十手をくわえ、まっ先に、 豹 ( ひょう )のごとく飛びこんだのは 海部同心 ( かいふどうしん )の 安井民右衛門 ( やすいたみえもん )。 「弦之丞、お綱、御用であるぞ」 と、雷声をつんざかせた。 眠っているように見えた弦之丞が、 咄嗟 ( とっさ )、そこを支えたのである。 「ウム!」と気丈な安井同心、杖をつかんで奪おうと試みた。 白刃を仕込んだ杖! 相手につかませておいて、弦之丞、 合口 ( あいくち )に掛けていた指を 弾 ( はじ )くように開いた。 と杖はそこから二ツに別れて、アッというと民右衛門、 鞘 ( さや )だけ持ってよろよろと後ろへ。 そこを 真 ( ま )っ 向 ( こう ) 胸落 ( むなおと )し! 切ッ 尖 ( さき )はなお余って、 膝行袴 ( たっつけ )の前まで裂いた。 たじろぐ隙に、弦之丞は、死骸のつかんでいる鞘をとり、それを下段に、白刃を片手上段に持って、四、五たび廃寺の廊下を駆け廻っていたが、やがて、お綱の姿をチラと見て、 庫裏 ( くり )の裏手へ飛び下り、大竹藪の深い闇へ、ふと、影をくらましてしまった。 間者牢 ( かんじゃろう )の 柵外 ( さくがい )に、山番が焼飯の 糧 ( かて )をおいてゆくのを取りに出る時と、 渓流 ( けいりゅう )へ口をそそぎにゆく時のほかは、 洞窟 ( どうくつ )の奥に 陽 ( ひ )のめも見ず、精と根を 秘帖 ( ひじょう )にそそいで、ここに百四十日あまり、血筆をとって岩磐の火皿にかがまったきりであった 甲賀世阿弥 ( こうがよあみ )も、今はようやく疲れてきた。 疲れてふと洞窟の 床 ( ゆか )へ身を投げて 臥 ( ふ )すと、 昏々 ( こんこん )として二日もさめないことがある。 そんな時、 頭心 ( とうしん )だけが 錐 ( きり )のように 研 ( と )げていた。 書こうとする意気をもつ、これを書き 遺 ( のこ )すことによって、自分は犬死をまぬがれる、 隠密生涯 ( おんみつしょうがい )の墓石が立つ、武士の本分をつくし得る。 で、書こうとして起つのである。 けれどその意気はあるが、今は精根がつづかない。 精根はしぼりだしても、筆を濡らす血がもう出ない。 指、腕、 股 ( もも )、かれの全身は油液を 採 ( と )りつくされた 漆 ( うるし )の木の皮みたいに傷だらけだった。 十幾年もの間この山牢に生きて、たださえ痩せ衰えていたかれは、血筆をもち初めてから一層 枯骨 ( ここつ )をむきだして、幽鬼のようになっていた。 一 行 ( ぎょう )に精をきらし、半行に血が出なくなると、世阿弥は落ちくぼんだ眼を光らして洞窟の外へ出てくる。 そして、餓鬼のように、 野葡萄 ( のぶどう )や山 苺 ( いちご )を食べ草の 茎 ( くき )を噛む。 渓流にかがみこんで、小魚や水に 棲 ( す )む虫まで口に入れた。 血を 摂 ( と )るべく食うのである。 生きようとする本能よりも、筆にぬる血墨をつくるために食うのが、この場合の世阿弥であった。 ひと頃、山牢の近くに春を染めていた 岐良牟草 ( ぎらんそう )のむらさき花も散りつくして、真ッ赤な山神の 錫杖 ( しゃくじょう )や 白龍胆 ( しろりんどう )や 桔梗 ( ききょう )の花がそれに代っていた。 かれはまた ぎらん草にかわる色素をたずねて、それには事を欠かさなかった。 ほんの常識的にわきまえていた 本草学 ( ほんぞうがく )が、どれほど実際に役立ったかしれない。 かれは自分の知識にある限りのことを今の上に応用した。 そして、ともあれ、三位卿の落した 小法帖形 ( こほうじょうがた )の海図の余白から裏へかけていちめん、微細な文字をもって埋めた。 もうわずかだ、もう五、六行。 そこまで 辿 ( たど )りついてきて、世阿弥はふと、 「おれは死ぬだろう」 と直覚して、筆の穂をふるわせた。 「あとの五、六行を書きおえたとたんに、おれはバッタリ眼をおとしてしまうに違いない! そんな気がする! アア、あと五、六行だ」 かれは高い山の 頂 ( いただき )へついた時のような呼吸の 逼塞 ( ひっそく )をおぼえだした。 指をやらなくても感じられるくらい、乱れた脈を 搏 ( う )っていた。 「アア、あと五、六行だ」 火皿の獣油がとぼりきれたのを 機 ( しお )に、洞窟から這いだした。 ぐッたりと山牢の口によりかかって、かれはしばらく目を閉じた。 そのわきに 合歓 ( ねむ )の大木が立っていた。 淡紅色の合歓の花と俊寛のようなかれの姿とは、あまりにふさわしくない対照であった。 尖 ( とが )った膝へ手を結んで、独り語につぶやいた。 「ここで、おれのなすべきことだけはした」 だが? ……と世阿弥はすぐに後の 哀寂 ( あいじゃく )にうたれた 態 ( さま )で、おそろしく光る、そして空虚な目を、 的 ( あて )なく空に向ける。 血をしぼってなしあげた穏密覚え書の一帖も、江戸の 大府 ( だいふ )へ送り届ける頼りはなし、このまま 木乃伊 ( みいら )となる 肋骨 ( あばらぼね )に、抱いてゆくより道はないのである。 「それでいい」 かれは、 諦 ( あきら )めるよりほかない所へさびしい 肯定 ( こうてい )を落して、 「それでいいのだ……」と重ねて、独り語をいった。 「やがて、おれの死に 骸 ( がら )からあの一帖を見出した時には、阿波の武士たちも、いかに大府 笹 ( ささ )の 間 ( ま )の隠密というものが、使命を奉じるに根強いものか、侍根性にない執着をもつものかを知って 慄然 ( りつぜん )とするだろう。 そして、後には人の口からわしの最期も江戸表へ通じるであろう。 しかし、それと共に、仲間で誇る隠密魂もおそらく、この世阿弥の終りと一緒に甲賀組にも亡ぶに違いない。 世の中が変っている、わしが江戸を出た時からもう 元和 ( げんな ) 寛永 ( かんえい )の世の中ではなかった。 その優しい膝の花を眺めていると、かれの想像は、ふッと 翅 ( はね )が生えたように飛んで、ふたりの可愛らしい少女をとらえてくる。 江戸表に残してきたお千絵であり、腹ちがいのお綱である。 もう二人の娘は、その頃の少女ではないと思っても、かれの想像はやはりあの当時の 稚 ( おさ )な顔を描いてみせる。 「ふびんな娘たちよ……」 合歓 ( ねむ )の花は世阿弥のくぼんだ眼からポロポロと涙を呼んだ。 「しまった!」 と、三位卿、素早く二の矢をつがえて向うを見た。 山牢のある 瘤山 ( こぶやま )の 裾 ( すそ )は、 覗 ( のぞ )き 滝 ( だき )の 深潭 ( しんたん )から 穴吹 ( あなふき )の渓谷へ落ちてゆく流れと、十数丁にあまる 柵 ( さく )が、そこの地域を囲っている。 柵外の 爼板岩 ( まないたいわ )の上に立つと、あなたのほうに洞窟の暗い口と、 合歓 ( ねむ )の巨木が見えた。 有村は、弓を構えて 磐石 ( ばんじゃく )の上に立っていたが、 「ちイッ……」と舌打ちして、しぼりかけた二の矢、弓ぐるみ、ガラリと手から捨ててしまった。 「お 手際 ( てぎわ )」 と、下から賞めた者がある。 「皮肉を申すな」 と三位卿は、岩から跳び下りて、天堂一角、お十夜孫兵衛、旅川周馬、その三人の前へ立った。 「むごい殺し方をするよりは、ただひと矢にと思ったのだが、一の矢、 襟元 ( えりもと )をかすめて合歓の木の幹へ刺さってしまった」 「では、世阿弥のやつ、 覚 ( さと )りましたな」 「ふいと姿を隠しおった。 しかし、逃げられる場所ではないから安心じゃ」 「 殺害 ( せつがい )しに来たのを知ったとなると、かなわぬまでも、さだめしジタバタするでしょう」 「なぶり殺しもぜひがない」 「衰えきった老いぼれ、大したことはあるまい。 じゃ一刻も早く殺してやるほうが、せめて 殺生 ( せっしょう )の罪も軽かろう。 おい、天堂」 と、お十夜は先に立って、 「どこから柵を超えるんだ?」 「もっと上だ、この辺は一帯に柵と激流が一緒になっているから、とても乗り超えてはゆかれない。 もう少し上へ登ると、山の腹へかけて流れに添っていない所がある」 「よし!」と、周馬も前へ出た。 周馬の 気負 ( きお )ったうしろ姿を見ると、天堂はニッと笑った。 決して、悪い意味ではなかった。 「最初は、ひどく油断のならない男と考えていたが、決して、ムキになって憎むほどの人間じゃない。 むしろ、愛すべき 稚気 ( ちき )さえ持っているじゃアないか! こうして世阿弥を殺すにも先に立ってゆくんだからな」 と、かれの背なかを眺めながらゆく。 お十夜は幾度も剣山を踏んでいるが、周馬は初めてなので、 嶮 ( けわ )しいのにあきれている、 倶利伽羅坂 ( くりからざか )でもかなりヘトヘトになった。 だが、ひと度 冷 ( ひや )やかな 山気 ( さんき )に 面 ( おもて )を吹かれると、その疲れも忘れてしまう。 次の山容をあおぎ、谷をのぞいて、森々たる 喬木林 ( きょうぼくりん )の間に、 合歓 ( ねむ )の木の多いのにも驚いた。 和州 ( わしゅう ) 多武 ( とう )の峰にのぼった折に、この花の多いと思った記憶はあるが、かくも 幽邃 ( ゆうすい )な光線と深い冷気のうちに 塵 ( ちり )もとめぬ神秘さをもった花とは違ったように思われた。 人を 殺害 ( せつがい )しにゆく人間にも、山は 冷寂 ( れいじゃく )な反省と幽美な感激を与えている。 けれど人間はなかなかそれに 浸 ( ひた )りきらず、邪念なかなかそれには消えない。 すでに四人は、大刀に 反 ( そ )りを打たせて踏み登ってくる。 世阿弥の 生命 ( いのち )は風前のともし灯。 さっき、かれがふと意識した脈音のみだれは、この 兇事 ( きょうじ )の来たることを肉体の持主に予察させた霊感の微妙であったろうか。 「死ぬナ、おれは」 不思議にみずからこういった。 しかし、人間にさほど霊の感知がありうるならば、父子同じ血をもっているお綱の血のうちへ、世阿弥の今 搏 ( う )つ脈音がひびいてゆかないものだろうか。 深夜、廃寺の方丈から、ふたたび徳島 海部 ( かいふ )の同心に追われた弦之丞とお綱は、あれから、深林、 峡谷 ( きょうこく )をよじのぼって、剣山の裏伝いへかかったことは想像に難くない。 それは弦之丞が、医王山の境内でも廃寺の折でも隙を見るや一散に逃げ去ったことであきらかに知れている。 かれには、 捕手 ( とりて )も同心もない。 ただあるのは、目指す剣山の山牢があるばかりだ。 けれど、 貞光口 ( さだみつぐち )から難なくここへ来た三位卿の一行と、道なき裏山の、それも山番の目を忍び忍びくる彼とは、時間にして半日、 嶮路 ( けんろ )の不利にしてだいぶな差がある。 ただ、 僥倖 ( しあわせ )というべきことは、 深更 ( しんこう )に十手の襲うところとなったため、勢い、あのまま暁へかけて、道を急ぎにかかったであろうと察しられる一点。 そうすると、 麓 ( ふもと )の見付役所で、山嵐の寝心地よく、遅くまで、熟睡してここへ着いたお十夜などよりは、ゆうに半日以上の 早駈 ( はやが )けとなり、時間の差だけは取り返して余りがある。 かれの消息については、漠然として 疑惧 ( ぎぐ )をもっただけで、徳島の城下を離れてきた有村や三人組、もとより 間髪 ( かんはつ )の差で、ここへ弦之丞とお綱がくるとは夢にも知らない。 急ぐうちにもどこか悠々として柵を越える場所を見廻してくると、やがて面前に見た 急坂 ( きゅうはん )の上から、早足に駆け下りてきた人物があった。 四人が姿を隠したと知らずに、そこへ駆け下りてきた男、 日除笠 ( ひよけがさ )をおさえて、大股にゆくところを、いきなり跳びついたお十夜が、どこをすくったか、気味よく投げた。 「あっ!」といったが、日除笠、すッくと向うに立ったので、怪しい! と天堂や周馬が、いちどに三方から姿を見せると、 「な、なンだ!」 声は でかいが、案外なあわてざま。 「貴様こそ何者だ、見れば、町人姿、山牢のあるこのあたりへ何の用があってウロついている」 「じゃあ、あなたがたは蜂須賀家の……」と言いかけたが、町人、小首をひねった。 総髪、十夜頭巾、顔の見えない編笠、見くらべて妙な顔をした。 「アー」と、そのうちに、後ろにいる三位卿を見つけると、あわてて、笠の 紐 ( ひも )を解いて、 「そちらにいるのは、御城内のお公卿様、わっしは、徳島御奉行の下廻り、釘抜きの眼八という者でございます」 「オ、手先の眼八か」 一角は顔を見知っていた。 「あ、天堂様でございましたか、ひどい目に会わせますな、あぶなく谷間へ玉転がし、命を棒にふるところでした。 だが……ああ、いい所で会ったもンだ」 胸板へ汗ビッショリ、押し 拭 ( ぬぐ )って、笠を 団扇 ( うちわ )に、ほっと一息ついている。 「眼八」と、一角は素振りを見て、 「妙なほうからやってきたな、いったい何用があってこの剣山へ来ているのか」 「ご存じはありますまい」と、眼八は、これほどのことを苦もなく話してしまうには惜しい気がして、 「何しろ 大事 ( おおごと )になったもんです」と、もったいをつけた。 そうした後で、眼八は、事実の細要より自分の功を誇り顔に、弦之丞とお綱の行動を手にとるように話した。 その生死すら疑惑にしていた四人は、聞くにつれて開いた口がふさがらない。 のみならず眼八の言によると、お綱と弦之丞のふたりは、 星越 ( ほしごえ )とこの山の中間にあたる廃寺からのがれだして、遂に剣山の樹海のような森林へ影を隠してしまったということである。 それにご承知のとおり土佐境から海部方面は、道が 嶮 ( けわ )しい代りに、目付役所もなく、山番も手薄なので、案外楽に来られるということを実地に踏んできましたから、こりゃあいけねえと、急に泡をくッて考えなおし、これから、 原士 ( はらし )衆の詰めている 麓 ( ふもと )の木戸へ行って、この大変をお 報 ( し )らせしようと存じ、急いで、 平家 ( へいけ )の馬場から降りてきたところでございます」 ひと息にいって、汗光りの 赭 ( あか )ら顔を手拭で拭き廻った。 「ではお綱と弦之丞めは、すでにこの山の深みへ入り込んでいると申すのじゃな」 「多分……」と少し 曖昧 ( あいまい )になったが、眼八、自分の見込みに誤りはないと自信をもって、 「……そうだろうと思います、いや、こっちで 下手 ( へた )を踏んでいると、いつ、この 間者牢 ( かんじゃろう )へあらわれて、世阿弥を助けだそうとするか分りません。 なにしろ、ご要心なすって下さい」 三位卿は混惑してきた 脳髄 ( のうずい )をいきなり 村正 ( むらまさ )かなんぞの鋭利な 閃刃 ( せんじん )で、スッカリと 薙 ( な )ぎ抜けられたような心地がして、踏みしめている足の裏から、かすかな戦慄さえおぼえた。 「ここへやって来る以上は弦之丞も、死にもの狂いに違いありません。 たださえ腕の冴えた奴、そいつが 夜叉 ( やしゃ )になって暴れ廻った日には、とても、同心方やあっしの手では抑えがつきません。 どうか、よろしく一つお手配を願いとうございます」 「そうか……」と、すべてを聞き終った有村は、下唇を締めて、こうしてはおられないという 焦躁 ( しょうそう )を、静かな動作のうちにゆるがせた。 「眼八、そちはこの足で麓へ急げ、そして山見付の 溜 ( たま )りへ急を知らせ、十分に、手分けをしておくよう、この有村がいいつけじゃと伝えるがよい」 「合点です、じゃ……」と、笠をかつぐのと目礼を一緒に、釘抜きの眼八、汗の乾くまもなく、足を急がせて、 倶利伽羅坂 ( くりからざか )を降りて行った。 後に残った四人、何かヒソヒソささやいていたが、やがて、目配せをしあって、 柵 ( さく )の尽きる所から 重畳 ( ちょうじょう )した岩脈へ這い上がり、ヒラリ、ヒラリ、山牢の地域へおどり込む。 まだ 七刻 ( ななつ )を過ぎたころ、 黄昏 ( たそがれ )には間のある時刻だが、剣山の高所、陽は遠く 山間 ( やまあい )に蔭って、 逆 ( さか )しまに 射 ( さ )す日光が 頂 ( いただき )にのみカッと 赫 ( あか )く、谷、 峡 ( かい )、山の ひだなどにはもう暗紫色な深い陰影がつくられている。 お十夜と天堂一角は、 抜刀 ( ぬきみ )を 背後 ( うしろ )へ廻して膝歩きに、ソッと、穴の両脇から、息を殺して暗い奥を 覗 ( のぞ )きこむ。 氷室 ( ひむろ )のような冷気を感じながら天堂とお十夜孫兵衛、洞窟の奥へスルスルと這い進んで行った。 「ヤ、いねえぞ」 先へ向った孫兵衛の声が、暗闇の突き当たりから、ガアーンと響いて返ってきた。 「ナニ、おらんと?」 「ウーム、見えない」 「さてはほかへ隠れおったな」 「隠れたって、間者牢の柵、あれより外へは出られねえものを」 「こんな中に生きていても、やはり 生命 ( いのち )は惜しいものとみえる。 出よう、外へ」 手探りで後戻りをしはじめたが天堂一角、またひょいと気がついたように、 「どこぞ横穴へでも へばりついているようなことはあるまいな」 「いや、そんな隠れ場所はねえようだが……」 と答えながら、お十夜は後ろを眺めなおした。 しかし、なくはなかった。 よくよく闇に眼を馴らしていると、妙な所が一ヵ所ある。 どんづまりの真ッ暗な岩壁が、右側へ少し 窪 ( くぼ )みこんでいるらしい。 その袋穴の 漆壺 ( うるしつぼ )みたいな狭い所に、人の眼らしいものがギラリと光っている。 動かずに光っている。 そして、孫兵衛を睨みつけている。 けれど、にわかにそれが人の眼だとは断定されない。 なにしろそれ以外には何も見えないのである。 すると、向うの呼吸が感じられた。 世阿弥はやはりそこにじっとしていたのだ。 一角は、孫兵衛の最初にいないといったのを信じて、気早に外へ這い出していた。 「ふーん、すくみこんでいるな」と感づいたけれど、お十夜は、あえて助勢を呼ぼうとは思わない。 十年以上、日蔭干しになっている死にぞこない、 そぼろ助広で一突きに 抉 ( えぐ )るくらいはなんの造作もないこと。 そう思っている。 しかし暗い、どんな得物を持って、どう構えているか見当がつかない。 窮鼠 ( きゅうそ ) 猫 ( ねこ )を噛むということも一応思ってみる必要がある。 ちょっと暗闇に 眸 ( ひとみ )が馴れてこないうちは 迂濶 ( うかつ )に飛びかかれぬ気もした。 すると不意に、岩壁の 窪 ( くぼ )みへじっとしたまま、 目無魚 ( めなしうお )のごとく動かずにいた甲賀世阿弥が、 「おおう! ……」と、不意に、太い息をもらして、さらにまた低く、 「オウ……」と驚いたような声を繰り返した。 この暗所に 棲 ( す )みなれている世阿弥の眸は、自然生理的に、闇の中でも見とおしが 利 ( き )く筈だが、お十夜には、皆目、 対手 ( あいて )の見当がつかない。 ただ、 爛 ( らん )と射る 双 ( ふた )つの眼を感じるばかりだ。 「狂いだすな、こいつア。 よし、そのほうが始末がいい」と、かれは世阿弥が 呻 ( うめ )いたのを、恐怖のあまりだと思って、爪を立って来る猛獣を待つくらいな覚悟をもった。 だが、相手は身ゆるぎもしないで、 「そこへまいったのは、川島 郷 ( ごう )に 棲 ( す )んでいた原士、関屋孫兵衛に相違ないと思うがどうだ」 といった。 「あっ……」孫兵衛は、ズバリと気構えを割られて、思わず、見えぬ闇にムダな目をみはった。 「世阿弥! てめえはどうしておれの 氏素姓 ( うじすじょう )を知っているのか」 「知っておるとも、知っているわけがあるのだ! 孫兵衛、お前もよく思いだしてみるがいい」 「思いだせ……ウーム、不思議だなあ……何しろそちの 面 ( つら )がまるで見えない」 「もう一昔も以前のことだから、こっちの顔が見えたにしろ、或いは思いだされまい。 わしも、わしを殺しに来た人間の前で、そんなことを思い浮かぶ筈はなかったが、フトお前の頭巾を見て思いだされた、その、 じゅうや頭巾を見て」 「な……なンだって……」 頭巾といわれて、孫兵衛の声は意気地なくみだれてきた。 外の光線で見たなら、 面貌 ( めんぼう )まッ 蒼 ( さお )に変っていたかもしれぬ。 世阿弥には、ありありとその 態 ( さま )が見て取れた。 「因縁だな……」 かれはこう嘆じた。 「お前がおれを殺しに来る……まさか川島にいたあの孫兵衛が、わしを殺しに来ようとは……、ウウム面白い、 冷 ( ひや )やかに生死を超えて人の世の流転を観じれば、おれがお前に殺されるのも面白い」 「とすると、てめえはこの山牢へ捕まってくる前に、川島の村にも忍んでいたことがあるんだな」 「川島の 郷 ( さと )はおろか、阿波の要所、探り廻らぬところはない。 まだ誰に話したこともないが、徳島城の殿中にまで、わしの足跡が 印 ( しる )してある。 そして、一番永く身を隠していた家が、孫兵衛、お前とお前の母親とがふたり 暮 ( ぐ )らしで棲んでいた川島の丘のお前の屋敷だ」 「えっ! お、おれの元の屋敷にいたッて?」 「しかし、そうはいっても、隠密の甲賀世阿弥を、みつめていたでは、いつまで、考えだされる筈がない。 十一年前、わしは阿波へ入り込むと同時に、すぐに 畳屋 ( たたみや )に化けていたよ、紺の 股引 ( ももひき )にお 城半纏 ( しろばんてん )を着て、畳針のおかげで 御普請 ( ごふしん )を幸いに、本丸にまで入り込んだものじゃ。 そして、いたる所を畳屋の職人で歩いた末に、川島の 郷 ( さと )で、元のお前の屋敷の畳代えにも雇われて行った」 「はて? ……」孫兵衛には、まだ何を話されているのか思い当らない。 ただしきりと気になるのは、世阿弥が頭巾の秘密を知っているらしい口ぶりである。 世阿弥は覚悟をしていた。 死に直面しつつ話すのである。 その態度は、姿に見えなくても、 語韻 ( ごいん )に感じるので、お十夜も、殺すべく握っていた大刀を忘れかけた。 わしは畳代えの職人で、名前はかりに六 蔵 ( ぞう )といっていた。 あの奥の十八畳の部屋、十二畳の客間、六畳の茶の間、十畳の書院」 孫兵衛は自分の旧屋敷の畳数を心でかぞえた。 世阿弥のいうところ一畳の間違いもない。 「そして、玄関、女中部屋、仏間だな。 話はその仏間から起こってくる。 そこの古いお 厨子 ( ずし )は 青漆塗 ( せいしつぬ )りで 玉虫貝 ( たまむしがい )の 研 ( と )ぎ出しであったかと思う、その厨子の前へ、朝に夕に 眉目 ( みめ )のいやしくない老婆が、合掌する、不思議はない、御先祖を拝むのだ。 ところがそこから不思議が生れた、わしが、畳代えの手をかけた日に、敷きつめの工合をなおす響きから、お厨子のそばの柱がポンと口を開いた。 ちょうど、 平掌 ( ひらて )が楽に入るくらい、切り 嵌 ( は )めになっている 埋木 ( うめき )がとれて落ちたのだ」 「ウーム、分った」 「分ったろう」 「じゃてめえは、それが縁になって、半年ほど下男になっていたあの六蔵か」 「そうだ、お前の母親は、それからぜひ屋敷にいてくれという、わしも都合のいいことだ、隠密甲賀世阿弥は当分下男ということに早変りした。 するとまもなくお前の 母者人 ( ははじゃひと )が重病にかかった。 うすうす事情を眺めていると、その当時、関屋孫兵衛というひとり息子、 博奕 ( ばくち )は打つ、 女色 ( にょしょく )にはふける、手のつけられない 放埒 ( ほうらつ )に、それが病のもとらしかった」 ガチャッと、何か金属性な音がしたので、世阿弥は突然言葉を切った。 すでに最前、 合歓 ( ねむ )の木の下で、鋭い 鏃 ( やじり )にかすめられた時から、自分へも、 俵 ( たわら )一八郎と同じ運命が訪れてきたなと直覚して、覚悟はきめているかれだったが、話し半ばに、剣の音を聞くと、やはりぎょっとして舌が 吊 ( つ )りあがった。 その 鍔 ( つば )の音だった。 で、言葉を次ごうとすると、先に、岩穴を出た一角が、 「お十夜、何をいたしているのだ!」と とば口から奥へ言った。 井戸へどなったように、その声が、おそろしく大きく響く。 孫兵衛はハッとして、大刀を持ちなおした。 しかし、声に応じて世阿弥をすぐに突き殺す気は出なかった。 今の話は、多分な好奇心もあり、後に、阿波守の耳へ伝えていい重要なこともあるが、何より、彼をたじろがせたのは、自分の母親のことを、世阿弥が話しかけているせいだ。 あらゆる 放埒 ( ほうらつ )、物盗り、辻斬りまでやって、なお 恬然 ( てんぜん )たる悪行の甘さを夢みるお十夜だが、母を思う時、かれはもろい人間だった。 不思議なくらい、その常識の一ツだけは、誰にも負けない善人孫兵衛であった。 もっとも、悪党の常として、お十夜も、母親のことなどは、おくびにも口に出していったことはない。 よその母親が手を 曳 ( ひ )かれてゆくのを、 後 ( うし )ろからバッサリ斬るくらいな無情さは平気で持ちあわす男であって、自分の 女親 ( おんなおや )のこととなると から意気地のない特殊な愛情の持主だ。 が、孫兵衛は、身辺の者や 悪行仲間 ( あくぎょうなかま )に、そんな 微量 ( びりょう )な人情でもあることを気取られるのは、ひどく恥辱だと信じ、 倶利伽羅紋々 ( くりからもんもん )の 文身 ( いれずみ )に急所が一ヵ所彫り落ちているような考えで、努めて まる 彫 ( ぼり )の悪人を気どっていた。 後 ( あと )にも 前 ( さき )にも、たった一度、何に感じてか、その 彫落 ( ほりおと )しの気持を口に洩らしたというのが、木曾路へかかる 旅籠 ( はたご )で、飯盛の女を買った晩、周馬と一角に向って、 「おれもさまざまな女に逢ったが、いつまでも好きな女は、やはり、おふくろという女ひとりだ」 と、冗談まじりにいったくらいなもの。 今度七、八年ぶりで阿波へ帰り、剣山へ来る途中、郷里の川島へ立ち寄ったかれが、こッそりと、屋敷裏の丸い墓石と逢ってきたことも、誰も知らない事実である。 で、孫兵衛は、たじろいだ。 世阿弥がまだ母親のことを何かいいそうなので、すぐに殺すのは惜しかった。 「おウ! 孫兵衛!」 一角がまたどなっている。 「おらんと見たら早く出てこい、手分けをして探さねばならぬ」 「待て」と、孫兵衛も奥から胴間声で、「ちょっと横穴を見つけたから念のためにあらためている」 「そうか、さてはそこだな」 「オイ、待て、入ってくるな」 「なぜ」 「怖ろしく狭そうだ。 それより、ここはおれ一人でいいから、ほかを探してくれ、いなかったらすぐに出てゆく」 「ウム、じゃ入念に頼むぞ」 「ぬかるものか! 周馬と三位卿は?」 「血眼でそこらをかき分けている」 一角の立ち去った足音を聞いて、孫兵衛はふたたび暗闇の眼へ問いかけた。 「だが世阿弥! 初めにてめえは、おれの頭巾を見て思い浮かんだといったが、こいつア 腑 ( ふ )に落ちねえ。 隠密から畳屋、畳屋から下男と、三段に化けてあの当時すましていた者にしろ、おれの頭巾の 曰 ( いわ )くを知っているはずはねえんだが」 世阿弥の眼と孫兵衛の影が向い合って、洞窟の奥の不思議な暗闇問答は、それからであった。 「わしがお前の頭巾の秘密を知らないと思っているのか」 と世阿弥がいった。 するとお十夜も、ふと、 「あの晩は、おれとおふくろ、あとは身寄りだけだった」と古い記憶をよび起こした。 「いかにも、わしは使いに出されていた、吉野川を越えて向う地へ」 「その間に……」とお十夜はゴックと 唾 ( つば )を飲む音を重苦しくさせて、「おれのおふくろは息を引き取ったのだ」 「世間の者は、不審とも気づかなかったろうが、わしには読めた。 なみの下男なら知らぬこと、かりにも 大内府直遣 ( だいないふちょっけん )の隠密、しかも棲み込んでいる家の中の出来事だ。 その夜以来、孫兵衛、いつのまにかお前のその十夜頭巾が 脱 ( と )れないものになっていたな」 「おう、ではあの時、使いに出て行った後のことを?」 「いかにも、残らず見届けていた。 お前の母が危篤というと、すぐに七人の肉親ばかりが集まった。 そこは例の 厨子 ( ずし )のある仏間、出入りに 錠 ( じょう )をおろしあたりを見張り、そして、静かにお前の母の枕元をとり巻いた。 ……と、あの柱だな。 切 ( き )り 嵌 ( は )めにして妙なものを埋め込んであるあの柱だ。 それより前に、わしが畳を敷き代えた日に、 埋木 ( うめき )の口が落ちた途端には、何か、 燦然 ( さんぜん )としたものを見たが、お前の母親が茶の間から飛んできて、妙にあわてて隠したものだ。 その柱へ、臨終にのぞんでいるお前の病母は、枕へ 頭 ( つむり )をのせたまま、弱い 眸 ( ひとみ )を向けたようだ。 そうして、あれを……という意味を見せると、 寂 ( じゃく )としていた七人の中から、ひとりが立ってうやうやしく埋木をはずし……」 「ウーム……」 と、孫兵衛、頭の鉢をしんしんと締めつけられるように 呻 ( うめ )いて、 「もういい! 話は止めろ」 突然、 対手 ( あいて )の声を打ち消した。 「世阿弥、おれはてめえを殺さなけれやならない。 分っているだろうな」 「うむ」 自若 ( じじゃく )として、 「この春、俵一八郎が 殺 ( や )られているから、わしにもやがてやってくるだろうと思っていたところ、観念はしている。 だがの、孫兵衛、もう少し話してもいいじゃないか」 「つまらねえ」 「いや、 愉悦 ( ゆえつ )だ、わしは話したい」 「おれはてめえを殺そうとしているのだ。 殺されるこの孫兵衛と話をするのが、愉悦だというばかはあるめえ」 「この身を殺す敵でも悪人でも、こうして、世間の人間と口をきくのはわしにとると言いようのない珍しさだからな、まアゆるしてくれ、そこで今の話だが……」と、世阿弥は低い 声音 ( こわね )で、平調な言葉を自然につづける。 白蛇 ( はくじゃ )の 喉 ( のど )をおさえるようにつかんでいた。 そこで息を殺していると、病人の指の間に小蛇の首みたいな形のものが、弱い 灯明 ( あかり )にも さんらんとしている。 と七人の肉親の者たち、みんなシーンと後ずさりをし、顔を上げる者はなかった。 ああいう時には原士という者も、みな怖ろしく森厳だ、儀礼みだれず古武士のよう、ことにその晩の七人は、川島 郷 ( ごう )の原士の中でも、また特別な 密盟組 ( みつめいぐみ )らしい、切ッても切れない因縁の仲間だ」 「やめろ、どこまで聞いてもくだらねえ、もうそんな思い出話なんざア聞きたくもない」 「わしにも、少し謎が残っている、まあ今しばらく聞くがいい」 「止めろというのに、くどい奴だ! サ、 殺 ( ばら )しにかかるぞ」 「耳に 飽 ( あ )きたらその時に、黙って、突くとも斬るともするがよい。 世阿弥はここにかがまったきり、とても、逃げる体力はないのだから。 「頭巾の悩みとでも申そうか」 孫兵衛は口をつぐんだ。 孫兵衛よとまた呼んだ。 お前は立たない、あの時の女親は怖かったのであろう、で、病人は三度目に、お 祖父様 ( じいさま )、どうぞ、孫兵衛をこれへ、と側にいる老人へ眼で哀願した。 名は知らぬが 白髯 ( はくぜん )の老武士、あとで聞けば、川島郷の原士の 長 ( おさ )で、ひとたび、その老人に、あいつと杖を向けられた者は、たとえ、どう他国へ逃げ隠れしても、必ず手を廻して殺されるという、怖ろしい 支権者 ( しけんしゃ )であるそうな」 高木龍耳軒 ( たかぎりゅうじけん )のことをいうのだなと孫兵衛には分った。 それや 龍耳 ( りゅうじ )老人は怖ろしいにきまっている。 原士の 長 ( おさ )はあの人だから治まっているといわれているくらいなものだ。 仲間の脱走者で、長崎の果てまで逃げたやつがあるが、老人はいながらにして、その男の首を見た。 孫兵衛も故あって、他国へ出ていても、絶えず 龍耳 ( りゅうじ )老人の監視をうけている身だから、すぐに 頭脳 ( あたま )へピーンときた。 世阿弥はまた話しつづける。 「お 祖父 ( じい )様と病人が頼むと、その老人が、黙ってお前の襟がみをつかみスルスルと母親の枕元へ引きずってきた。 その片手には、柱の隠し穴から取り出した さんらんたるものをつかんでいる。 アッ、お前は悲鳴をあげて四 肢 ( し )を突っ張る、同時に母は息をひきとりそうになった。 ぎょッとしたが、周囲の者も、見ているよりほかなかったらしい、白い 蒲団 ( ふとん )は血で染まった」 しばらく言葉を切っていたが、孫兵衛は、刻一刻と、世阿弥を突く機を逃がしていた。 孫兵衛めに私のお祈りが要らなくなるまで、 遺物 ( かたみ )に与えた 頭 ( つむり )のものをとることもなりませぬ。 この遺言を破った時は、お 祖父 ( じい )様、川島郷七族のため、どうか、お情けに孫兵衛を殺してやって下さいませ。 でなければ一生このまま日蔭者にしてやっておいて下さいませ。 子が可愛いからです。 ほかの七人方も、お頼みいたします。 こういって最期の眼を閉じた」 「…………」はッ、はッ、と、聞こえるような息をついて孫兵衛は無言。 孫兵衛聞けよ、その与えられた恩愛の秘密をみずからやぶる時は、貴様、たとえどこに逃亡潜伏しても、必ず、五十日の間に命を 奪 ( と )るぞよ! と……」 ふと、落涙していたらしかったが、お十夜孫兵衛、いきなり猛然と、大刀の 鍔 ( つば )ぶるいをさせて世阿弥の胸もとへ跳びかかった。 「ええ、果てしがねえ! ぐずぐずしちゃいられねえんだ、片づけるから覚悟をしろ」 「待て、もう一 言 ( こと )」 「ちッ、未練を 吐 ( ぬ )かすな」 「隠密根性といおうか、ここで、最期に一目見せて貰いたいものがある。 わしも甲賀世阿弥だ、なんでこの 期 ( ご )に見苦しい死にざまを望むものか。 実をいうと、わしはその晩の有様を覗いた後から、お前のかぶり 初 ( そ )めた十夜頭巾の下に、おそろしい興味と執着を持った、隠密の執着だ。 得心のゆくまで見届けなければ気がすまぬ。 しかも、頭巾にくるまれたお前の秘密は、やはり一つの阿波の秘密だ。 江戸城へはいい 土産 ( みやげ )、それをつかんだなら阿波から足を抜こうと、一念に、お前の頭巾の中を狙っていた。 と、お前は 放埒 ( ほうらつ )に 荒 ( すさ )んだ揚句、阿波を 出奔 ( しゅっぽん )して行方をくらまし、わしは、原士の 長 ( おさ )に見破られて、とうとう、この剣山へ捕われの身となってしまった。 よくよくの因縁だ。 そのお前が今日はわしの痩せ首を斬りにきた。 で、古いことを思いだしたのじゃ……。 しかし今、死の間際に、頼んであの時の秘密を見せて貰ったところで、何の役にも立ちはしないが、わしが捕われの原因となった物だけに、山牢へきた後も、自分の眼が誤っていたか正しかったか、始終気になっていたところ、人にはわからぬ隠密 煩悩 ( ぼんのう )、 死際 ( しにぎわ )の欲望に、ありありと、手にのせて見て死にたい。 孫兵衛、わしのいおうとする中心はここだ、ひと目でいい、見せてくれ」 「な、何をだ?」 「その頭巾の下に隠されているものを」 「ばかなことを 吐 ( ぬ )かせッ」 「嫌か」 「当たりめえだ!」 「じゃあ、話はそれまでのこと。 その刹那だった。 ふた声ほど絶叫して、天堂一角は岩牢の外へ仆れてしまった。 孫兵衛は足もとの大地が めりこむような響きにうたれた。 かれの眼は頭巾の蔭にあわてきった輝きをうごかせた。 そうして、思わずつかんでいた者の襟もとを離して、 「くそうッ! 弦之丞などに」 と、洞窟の奥から走り出ようとしたが、また思いなおして、どうせのこと、世阿弥を殺してから行こうと、戻りかけると、世阿弥は発作的に、突然、居どころから飛びあがった。 とがった肩骨がかれの胸を打った。 上へ刀を振りかぶれる空間があれば、 据物斬 ( すえものぎ )り、ただ一 揮 ( ふり )に割りつけること、孫兵衛の手になんの苦もないことだろうが、見当のつかない暗闇。 胸もとへぶつかったのを幸いに、孫兵衛は世阿弥の細い のど首を左の腕へすくい込んだ。 甘んじて死をうけるようであった甲賀世阿弥は、今の一瞬に、もの狂わしく変って、 「わしは死なぬ! わしはまだ死なぬ!」 とない力をふりしぼり、孫兵衛の腕から 逃 ( のが )れようともがいた。 「じたばたするなッ」 「むむむッ、一 刻 ( とき )ちがいッ……」 滅前 ( めつぜん )の一 燦 ( さん )、おそろしい 念力 ( ねんりき )で 対手 ( あいて )の腕くびへ歯を立てる。 白い刃は、世阿弥のわき腹に当てがわれていた。 かれの前歯が孫兵衛の肉へ入ってゆく力は、同時に抱かされた刃を食い入れる力となった。 孫兵衛は腕くびの痛みをこらえつつしばらくソッとしておいた。 サーッと早い血汐が裾へ行った。 「よかろう」 と、孫兵衛は思った。 強く刀をしごいて、平手で世阿弥の顔を押すと、闇の中へドシンと音をさせて、仰むけになった目と歯が白い。 グウッと、一度腹をつきあげた 傷負 ( ておい )は、 「一 刻 ( とき )ちがいッ……」 とまたいった。 そうして、ビク、ビク、と大動脈から息を吐き出すように 痙攣 ( けいれん )する。 「とどめを」 と思って孫兵衛が探りかけると、ふたたび洞窟の外で、お十夜、お十夜ッ、と三位卿と周馬の声が響いて、あわただしい足音の重なってくるのを感じ、かれの手も心もますますうろたえたらしく、そのまま 豹 ( ひょう )のごとく洞窟の外へ向って駈けだしてきた。 頭の上から、明るい光線を浴びた途端に、孫兵衛はやわらかいものを蹴って、 もんどりを打ちそうによろけた。 蹴ころがされて、ウムと 呻 ( うめ )きながら立ち上がったのは、口元に 昏倒 ( こんとう )していた一角で、正気づいたが 深傷 ( ふかで )を負っている、左の肩先から袖半身、染めわけたような 紅 ( くれない )である。 それにもぎょッとしたが。 外の有様を眺めるとともに、孫兵衛には天堂などを 顧 ( かえり )みている余裕もなかった。 法月弦之丞がそこから見下ろされる傾斜に立って、周馬と三位卿を 対手 ( あいて )に斬りむすんでいる! 月山流 ( がっさんりゅう )とやら 薙刀 ( なぎなた )の型はやるが、初めて、白刃対白刃の境に立った三位卿はしどろもどろだ。 周馬とて腕にかけてはまことに頼りがうすい。 いわんや、法月弦之丞の前に立ってをや。 ふたりは、何か高声をあげあっているが、弦之丞の剣前に近づくことはなしえないで、走れば追い、追われれば逃げ、そして、息の間に、お十夜お十夜ッ、としきりに助けを呼びつづけている。 なおかなたの 柵 ( さく )と 山際 ( やまぎわ )との境を越えて、ここへあせってくる武士の姿が見えた。 弦之丞とお綱とを追跡して、からくも駈けつけてきた 海部 ( かいふ )と徳島の役人、浅間、岡村、田宮の三同心。 その急なるを知り、またからまる二人をあしらいつつ、弦之丞は隙あるごとに、お綱へ向って叫びを投げた。 しきりと手を振って 急 ( せ )きたてた。 「お綱ッ」 「あい」 お綱もかれに添って働いていた。 「ここはかまわぬ、山牢の安否を!」 「あい」 「早くゆけ! 世阿弥殿と名乗りをしてこい」 お綱は夢中で側を離れた。 洞窟の黒い口がもう真上に! 三、四十間ぐらいの距離しかない! 新藤五の 柄 ( つか )を固く右の手に、片手で草の根をつかみながら、上へ上へ、洞窟の口へと、かの 女 ( じょ )は汗と涙の力をつづけた。 いちど立ち上がった天堂一角は、また 合歓 ( ねむ )の木の下へ仆れてしまった。 何か声をかけたが、お十夜は返辞も与えないで洞窟の前から駈け下りている。 ドドドッと傾斜な地面を下りかけると、互いちがいに、向うの 灌木 ( かんぼく )の間をかき分けて、懸命に登ってゆく白い影がある。 「や?」 と、急にそっちへ駈けだしてみると、振り向きもせず洞窟へ向って行くのは、白い 手甲 ( てっこう ) 脚絆 ( きゃはん )をまとったお綱であった。 「おうッ、お綱」 お綱はその声をすら顧みていなかった。 必死に上へあえいでいた。 孫兵衛は幾百里の山河を越え、今ここまで会いにきたかの女の父世阿弥の血を塗ったばかりの 刃 ( やいば )を持って、お綱のうしろへ追いかかった。 かれは阿波へ来る前まで、ふたりの仲がどれほど 密 ( みつ )に深いものかを思ってみて、寝苦しい夜があった。 その後、あの 暴風雨 ( あらし )の夜の 狂瀾 ( きょうらん )に、死んだものとのみ信じた後はさすがに 煩悩 ( ぼんのう )の霧が散ってせいせいとした気もちであったので、今、お綱の姿を見ても、得ようとする念はなかった、殺意のほうが強かった。 遂げえぬ悪魔の恋は、必然な、破れかぶれに変ったのである。 殺刀 ( さっとう )の 下 ( もと )に 魂切 ( たまぎ )らすことによって、永い間の 鬱怨 ( うつえん )を思い知らせてやろうとする。 追いつくと一緒に、孫兵衛、 「そこへはやらねえ」 と、背すじへのぞんで、助広の 白光 ( はっこう )を一 揮 ( ふ )りなぎつけたが、崖に等しい傾斜であり、灌木の小枝に邪魔されて、行き方少し軽かったか、 「あッ」 と、横ざまに走った小脇差、女の力ではね返された。 「孫兵衛だね!」 「急いだところでムダだろう、甲賀世阿弥はたった今おれが 殺 ( ばら )してきたばかりだ。 サ、次にはてめえの番」 「えーッ……じゃあ……」 山の根も 揺 ( ゆ )るいだかと思うほど、 仰天 ( ぎょうてん )してよろめいた身を、お綱はあやうく手で 支 ( ささ )えた。 「てめえにはまたさんざッぱらな 怨 ( うら )みもある、なぶり斬りにしてやらなけれや、このお十夜の虫が納まらねえ。 お綱、覚えていたろうな」 かの 女 ( じょ )が、何か叫んだ声を割って、サッと白い風がきた。 孫兵衛の下りてくる足もとを、お綱は新藤五の切ッ 尖 ( さき )で待った。 上の顔は 嘲笑 ( あざわら )って、構えをとりながら飛ぼうとする。 途端である。 「おのれッ!」と耳もとで。 はッと見ると、法月弦之丞、浅間、岡村の同心と、周馬、有村の四人を上へ上へとおびきよせて、それを捨てるが早いか、お十夜の方へ 疾風 ( しっぷう )に来た。 迎えざるを得なかった。 孫兵衛はすばしこく刀を持ちかえた。 これは四人を 束 ( たば )にしたよりもこたえがある。 すでに、ここまで一同が吊り上げられてくるうちに同心のひとり安井民右衛門が斬り伏せられていた。 それと、最も頼むべき天堂一角が弦之丞の姿を見つけた真ッ先に、機先を制せられて一太刀浴びてしまったのは、なんといってもはなはだしい力を失していた。 頼むは孫兵衛だけといってもよい。 弦之丞はたえずお綱を見ていた。 四人を 対手 ( あいて )にしつつ、かの女の身辺を開くように開くようにと防いでいた。 「あッ、間者牢へ」 お綱がそれに力を得て、洞窟の入口へ近づいたのを見た同心の浅間丈太郎は、こういって敵の 剣前 ( けんぜん )を離れ、上へ這おうとすると、飛び寄った弦之丞の 皎刀 ( こうとう )が、鋭く足をすくった。 丈太郎の体は雑木の茂っている所まで、一気に、俵のようにころげて行った。 「寄りつくものは 一太刀 ( ひとたち )に 薙 ( な )ぐぞ」 徐々と力の練りだされてきた弦之丞は、丈太郎を斬り落した弾力で、さらに上へ踏み登った。 お綱はその後ろを風のようにすりぬけて、洞窟の中へ夢中で走りこんだ。 孫兵衛がああは言ったが、なお半信半疑であった。 甲賀世阿弥様 ( こうがよあみさま )! 甲賀世阿弥様!」 と、固い言葉で、続けざまに呼び立てて入ったが、深い闇は 冷々 ( れいれい )となんの答えも与えない。 奥のほうからガアーンと返ってくるのは、おのれの口 真似 ( まね )をする 穴山彦 ( あなやまびこ )。 ふいに、お綱の足の くるぶしをつかんだ手がある。 洞窟の一番奥であった。 はッと、よろめいた 弾 ( はず )みに、ヌラリとした 岩苔 ( いわごけ )に手を 辷 ( すべ )らせて、 「よ、世阿弥様 」 何がなし、ぞっと毛穴をよだたせて、つかまれた足を抜こうとすると、だらりと重い感じがそのままついてもち上がる。 「ううウ……」 人の 呻 ( うめ )きだ、弱い、苦しそうな息……。 わなわなした指先が、その冷たい顔から胸を撫でて行った。 骨ばった老人の四 肢 ( し )、誰? と疑ってみるまでもなくお綱はつづけざまに名を呼んで、腕の中へ抱きあげた。 夢中で、よろばうように、洞窟を後へ戻りだした。 だが、口元の明りを見ると同時に、ギクと足をすくませてしまった。 「 敵 ( かたき )は?」 外へ気を 研 ( と )ぎすまして、 「弦之丞様?」 と、そこの激しい 乱刃 ( らんじん )を想像した。 ままよ! 必死な気もちでお綱は新藤五を構えながら、 薄暮 ( はくぼ )の白い明り目がけて走りだした! と、その勢いの余りに鋭く、まッしぐらな姿は世阿弥の体と 縒 ( よ )れて、 合歓 ( ねむ )の木の根元まで泳いで仆れた。 いちめんな霧だ。 漠 ( ばく )として山も樹木も見えない、ただ西の方に 夕照 ( ゆうでり )の光だけがボッと虹色を立てている。 微小な 水粒 ( みずつぶ )は、 睫毛 ( まつげ )の先にギヤマンの玉のように光って、息づまるような乳色の気流がムクムクとゆるい運動を描いてゆく。 どうしたろうか? 弦之丞、そのほかの者の影も見当らない。 耳をすましたが、霧の中にも、それらしい叫びを聞かない。 お綱は身を起こすと一緒に、世阿弥の顔をむさぼるように見つめた。 世阿弥は目を開いていた。 深傷 ( ふかで )だ、 眸 ( ひとみ )は 虚空 ( こくう )にすわってうごかない、だが、何か言いたそうに、唇がかすかに 歪 ( ゆが )む……。 お綱は、お十夜の一言を思いだした。 そして、さすがに取り乱した。 「ウーッ……」と少し通じたらしい。 世阿弥の手が、目の先の白い霧をつかむようにした。 「お……」 「分りますか! 分りますか」 「…………」 「お父さんッ」 「…………」 ゴクリと 喉 ( のど )の骨がうごいた。 と、少し楽な呼吸がふッと洩れて、ニイとお綱を見て笑った。 「あなたの子のお綱です、江戸表から……あ、逢いにきました」 「ウ……ム」 「お千絵さんも、私のように、無事に向うで成人しております。 お分りになりますか、わ、わたしの顔が……わたしの……」 世阿弥はひとつうなずいた。 そして、ふところから例の 血筆 ( けっぴつ )の一 帖 ( じょう )をとりだして、お綱の手へ持たせて、 「こ、これを」 とかすかにいった。 「え」 「江戸へ」 「ア…… 御遺書 ( ごゆいしょ )?」 「弦之丞の手へな」 「わかりました」 「と……」 「ハイ」 ぼろぼろと 湯玉 ( ゆだま )のような涙が走る。 お綱は拭こうともしないで、 「ハ、ハイ……」と声を曇らせた。 「ず……頭巾の……」 と舌を巻くように言ったきり。 「あっ、お父さん」 「…………」 水! お綱は夢中で駈け下りた。 白い片袖に、流れの水を濡らして帰ってみると、もうまるで世阿弥の顔が変っていた。 けれど、その死顔は満足していた。 だが、 禍 ( わざわ )いはまだあった。 今、水をしめしに行った留守に、世阿弥のそばへおいた大事な 秘帖 ( ひじょう )が、わずかな間に 失 ( な )くなっていた。 麓 ( ふもと )から仰げば、山の中腹を、一 朶 ( だ )の白雲が通っているのであろう。 その霧が過ぎぬうちは山牢の前から遠くを見渡すことはできないが、ふと気づくと、さして 隔 ( へだ )ててもいない岩の間を、ひとりの男が這ってゆく。 そこに見えなくなった秘帖を、涙の目で探していたお綱は、霧をとおして怪しい男の影を認め、 「盗んで行ったな!」 と直覚した。 急いで、父の 亡骸 ( なきがら )を洞窟の内へ隠し、向うへ這ってゆく男をつけた。 駆けるかと思いのほか、男は、振り向いても、なお、這っていた。 近づいてみると、 屈強 ( くっきょう )な武士、しかし、肩にどっぷり 朱 ( あけ )をにじませている。 最前、お十夜が走りだした時、足にかけられて、草の根に 呻 ( うめ )いていた天堂一角だった。 かれには、 深傷 ( ふかで )ながら、まだ這うだけの気力と意識があった。 一角は、今の隙に、世阿弥のそばから血筆の秘帖をつかみとり、はッ、はッ、と荒い息づかいで這いだした。 同じように這いかがみ、足音をぬすんで、お綱は後ろへ寄っていった。 おのれ、おのれ、おのれ。 心のうちで叫びながら、一太刀にと狙い廻した。 一角は熊のように、岩から岩の上へ 攀 ( よ )じてゆく。 三位卿はどうしたろう? 周馬はどうしたろう? 声をあげて呼ぶ力はなし、霧は深い。 風をつらぬいた白い 条 ( すじ )が、一角の後頭部へ消え込んだ。 と思うと。 ズンと、刀だけ、岩へ深く、斜めに立ってしまった。 肩越しに腕をつかまれ、お綱は一角の前へ投げられている。 どっちも 死身 ( しにみ )、組むなり火のような息を争って、秘帖を 奪 ( と )り返そうとする! 渡すまいとする! 組んではもつれ、伏せられては突っぱねる、一方は女、一方は 傷負 ( ておい )、天堂 勇 ( ゆう )なりといえどもなにしろ前からの痛手がある。 お綱は江戸女の勝気とはいえ、やはり女だけの力である、力量公平に 減殺 ( げんさい )されているのでいずれともいえない、秘帖を中心に 双鶏羽毛 ( そうけいうもう )を飛ばすありさまだ。 * * * めったにないことだ。 原士 ( はらし )の 長 ( おさ ) 龍耳 ( りゅうじ )老人が出かけるなんて 稀有 ( けう )なことだ。 第一、吉野川の上流平和な地域にそんな事件がかつてないせいもあったろうが、なにしろ、 龍耳 ( りゅうじ )老人が 出張 ( でば )ってくるなんてまことに珍らしい。 夕方、真っ白に隠された剣山は、夜になって、すッかり 霽 ( は )れていた。 「秋が近いな」 空の銀河を仰いで、老人は白い 髯 ( ひげ )の先を かじっている。 「山へ入ると秋の音が聞こえるよ」 誰も返辞のしてがない。 老人の前には 松明 ( たいまつ )が二本、うしろには人影が四、五、黙々とついて歩いてくる。 剣山の山路である。 今日の夕方のすさまじい光景が目に残っている。 そしてまだ、法月弦之丞が捕われていない。 あの死をきわめた 颯爽 ( さっそう )たる 白衣 ( びゃくえ )の影が、いつ 檜 ( ひのき )の蔭から、 閃刃 ( せんじん )とともにおどり出さない限りもない。 老人のほかの者には、秋の音も銀河の壮麗もない様子、ザワというたびごとに、足の関節がはずれそうになる。 その中に 伍 ( ご )してきた、お十夜と旅川周馬さえ、龍耳老人の案内としてついているのだが、眼底に異様な緊張をただよわせ、まるで、 仮面 ( めん )のように顔の筋をこわばらせていた。 「やあ、これは」 と 龍耳 ( りゅうじ )老人、杖を指してうしろの者へ、 「つまずくなよ、またここにも一人 斬 ( や )られている」 「は。 明りを」 松明 ( たいまつ )を呼び返して、供の原士が、死体を抱いてズルズルと後戻りに、道のわきへ片寄せ、 「今の男は、木戸へ変事を 報 ( し )らせに来た、目明しの 眼 ( がん )八という者です」 と歩きながら告げた。 「目明しか」 杖をコツコツ運ばせながら、 「どうも十手を持った者で、終りのよかったのはすくないようだな」 「ああ、また 斬 ( や )られています」 と、松明が止まる。 「これで四、五人目だな、もう片づけるのは 明日 ( あした )にしよう」と死骸を廻って歩きかけたが、ちょっと小腰をかがめて、 「ウーム、なかなか立派に 斬 ( や )られている」 首を振ってテクテク登りだした。 山は 追々 ( おいおい )深くなる。 しかし、 龍耳 ( りゅうじ )老人、 壮者 ( そうしゃ )にまけない足どりで、何かぶつぶつ言っていた。 その上、この老人をわずらわすなどとはお話にならない沙汰……まあまあこんな事件は、蜂須賀家の御記録にも 態 ( てい )よく 省 ( はぶ )いておくことだな」 耳が痛いのは孫兵衛だ。 周馬は黙ってついて歩いた。 昼の元気もどこへか、少しも意気があがらない。 と、お十夜は、今もそのいまいましさが胸に消えない。 眼八が、ワッと原士をすぐってきた時には、もうどうにも手がつけられなかった。 霧が来たのも悪かった。 弦之丞はそれに乗じて、存分に行動した。 眼八も 斬 ( や )られ、原士の中にも沢山な 傷負 ( ておい )が出た。 霧がはれた頃には、夜になって、姿を探すよすがもない。 こうなると、地理は彼に利で衆には不利。 ひとまず山番小屋の評議となり、異論まちまちという所へ、ひょっこり来あわせた 龍耳 ( りゅうじ )老人が、耳を掘りながら聞いていて、 「これよ、若いの、剣山は 渭城 ( いじょう )のお庭より少し広いぜ」 と笑った。 山狩評議を 諷 ( ふう )したのである。 「どれ、おっくうだが行ってみてやろうか」 深夜にかけて押し出した。 といったところで、人数は六人、それも途中で返す約束の案内に過ぎない。 ただし、三位卿は 賢 ( かしこ )く同行をはずした。 おそらく老人の前ではわがままがふるまえぬからであろう。 「だいぶ来たな、ウム」 「 倶利伽羅坂 ( くりからざか )でございます」 「ちょっとくたびれたよ。 やはり、年は年だな」 「吾々でさえ、この通りな汗ですから」 「おいよ」 「はい」 「ご苦労だが 後 ( うし )ろへ廻ってくれ」 「はっ」 「 松明 ( たいまつ )はわしが持ってやる。 腰を押せ、腰を」 供の原士がうしろへ廻って老人の腰へ手を当てがう。 高野 ( こうや )の尻押しの 故智 ( こち )に習って、老人は楽そうに押されてゆく。 そうして、山牢もだいぶ近づいてきた。 ふと仰ぐと、 削 ( けず )り立ったような絶壁が前にあった。 するとやがて間者牢の 柵 ( さく )が見えるはずで」 「そうか」と、老人は杖を止めた。 老人のうしろ影を見送って、旅川周馬は、 「なるほど 剛腹 ( ごうふく )なおじいさんだ」 と、舌をまいて、 「なあお十夜」 「ウム?」 「深夜しかもこの 深岳 ( しんがく )だ、弦之丞のやつは山にこもって、血に狂したやぶれかぶれ、人と見たら 盲目 ( もうもく )に斬りつけるだろう。 とても、吾々にもあんな勇気はないよ」 「そうさ、困った老人だて……」 何が困るのか、孫兵衛の返辞はすこし意味をちがえて、 「あの分じゃ、どうも当分は死にそうもねえ」 と、頭巾の重さをふと気にしていた。 そんなことをいって、ただひとり間者牢へのぼって行った影が、うすい夜霧にボケるまで、一同見送ってはいたが、誰も、 「あの老人が、 血刀 ( ちがたな )を下げた 白衣 ( びゃくえ )の影にパッタリ行き会ったらどうする気だろう?」 とは心配をしていない。 龍耳 ( りゅうじ )老人の胸には何か、しかとした 方寸 ( ほうすん )がたたみこまれているものと信じて、少しも行く先に 危惧 ( きぐ )を感じていないようであった。 「ここに待っていてもしかたがあるまい」 龍耳老人の目を放れて、お十夜はすこしのンびりしたようなふうで、 「オイ周馬、三の木戸の番小屋まで行って、明方まで 藁 ( わら )ぶとんでもかぶろうじゃねえか。 どうせ今夜でなくても、袋の鼠、片づくにゃ決まっている弦之丞だ、 麓口 ( ふもとぐち )さえ縫いこんでおけば、何もあわてることはない」 松明 ( たいまつ )がとぼりきれたので、ふたりの原士は、スタスタ先へ下ってしまった。 孫兵衛も 踵 ( くびす )をめぐらして戻りかけたが、周馬の 相槌 ( あいづち )がきこえないので、ひょいとふりかえってみると姿が見えない。 「……あっ、天堂だ、やっぱり天堂一角だぞ、この死骸は」 「そんな所で絶息していたか」 「オオ、来てみたまえ」 かれが、弦之丞の第一刃をあびたのは知っていたが、日没、木戸へも集まらなかったので、どうしたのかと思っていた際だ。 周馬とは江戸表以来、お十夜とは、ことに永い 交際 ( つきあい )の仲。 かれはよく周馬やお十夜の安価な 女色漁 ( にょしょくあさ )りを 軽蔑 ( けいべつ )して、討幕の 挙 ( きょ )の成功を信じ、事なるにおよんでは、何万石を夢みていた小なる 光秀 ( みつひで )みたいな男だった。 悪友か善友かしらぬが、道中などでも、ふたりが 痴話 ( ちわ )に 更 ( ふ )けているまン中の部屋で、ひとり 猪 ( ちょ )八 戒 ( かい )みたいな 寝相 ( ねぞう )をして、朝の鏡に目をこすり「わるい 悪戯 ( いたずら )をしやあがる」と顔の 墨汁 ( すみ )をあらい落して怒らぬところもあった男だ。 まさか、捨ててはおけない。 「残念なことをした」 と、孫兵衛も飛んでいった。 「もう氷のようだ……」 悲壮な姿をして、周馬は、やっとのように死骸を前抱きにして、深い草むらを、ひと足ずつ 跨 ( また )いでくる。 「この断崖から落ちたのだな……」 「高いな」 と、周馬もふりあおいで、 「じゃ、合図があった時、 傷手 ( いたで )ながら飛びおりて、 麓 ( ふもと )へ下ろうと思ったのだろう」 「いや、自分で、こんな所から跳ぶはずはねえ。 間者牢の山つづきだから、日が暮れて、うっかり 辷 ( すべ )り落ちたにちがいない。 ……重いだろう、周馬」 「足がつかえて困る」 「よし、手を貸そう」と、孫兵衛は側へ寄って行ったが、あさましい姿をみると、 衝 ( う )たれたように立ちすくんだ。 周馬の抱き方がまずいので、 乱 ( らん ) びん蒼白の死者が、グタッと 襟骨 ( えりぼね )を 尖 ( とが )らせて垂れている。 ひと言。 「オイ」と、声をかけてみたい気がした。 額 ( ひたい )へ手を入れて、孫兵衛、グーと無理にもちあげてみると、目をねむって、 青蝋 ( あおろう )のような冷たい死顔、頬と耳のうらあたりに、爪でひッ掻いたような赤い筋……。 一 帖 ( じょう )の血書! いきなり、 死首 ( しにくび )の歯から、孫兵衛がグッとそれを引ッたくったので、周馬は重さにのめりながら、すばやく、 白眼 ( はくがん )にお十夜の手もとを見つけて、 「オイ! なんだ、今のはッ」 と死骸を下へ捨ててしまった。 龍耳 ( りゅうじ )老人は達者な足どりで、 まないた岩の辺まで登ってきた。 なんたる 寂寞 ( せきばく )さであろう、無辺な天地だろう。 足もとの闇から 黄泉 ( よみ )の府にまで続いているのではないかと思われる。 群山すべて低く白い 曳迷 ( えいめい )は雲である。 仰ぐと。 けむりのような銀河をかすめて、星がひとつ流れた。 老人は歩をとめて、しばらく、草のそよぎを聞きわけている。 じっと…… 「? ……」 行きくれた 盲目 ( めくら )のように。 ありとも思えぬくらいな微風が、老人の姿にあつまってヒラヒラする。 刀は、 鎧 ( よろい )どおしのような短いのを一本、前ざしでなく、わざと横へ。 ……てく、てくとまたいつか歩きだしていた。 「ここだな」 間者牢 ( かんじゃろう )の 柵 ( さく )わきへ来ると、例の奔流がドーッと耳をうった。 山牢の穴も柵の中も見えない。 見えないが老人は、そこで、 夕陽時 ( ゆうひどき )の修羅のすごさを眼に描いた。 かれは、夜 もすがらここを歩こうとするのか。 歩いて夜の明けるのを待とうとするのだろうか。 かくて、一 刻半 ( ときはん )ばかりも、その辺にたたずんでいた。 何事もない。 強 ( し )いて天地の変移をさがせば、 霞 ( かすみ )のような星雲が消えて、特に大きな星がひとつ、西に目立っていたことである。 よく侍というやつ、都合のいい潮時にいさぎよくという言葉で、 結尾 ( けつび )の責任をのがれるものだが、自身で命を絶つような弱腰では、最初から、ここへ入ってくる資格がない」 と……つぶやいていると、かれの行くてに、いつか、薄いふたつの人影がうごいてくる。 はッ……と思うと、向うも足を止め、老人も歩みを止めた。 ザザザザと 茅 ( かや )をなでてくる風が、うしろから押すように吹いて通った。 しばらく、うかがいあっているうちに、ふたつの影のうち、ひとりは 忽然 ( こつぜん )と、岩の蔭か草むらの中へでも隠れてしまったらしく、やがて、近づいて来た様子の者は、ひとりしか見えない。 龍耳 ( りゅうじ )老人も、のそ、のそ、と前へ足を運びだした。 そして、双方の間、二、三 間 ( げん )まで寄りあった。 で、星明りでも、互いにその姿を明瞭に認めえた筈である。 ことに、先のものは 白衣 ( びゃくえ )なので、いっそう老人にははっきりと 輪廓 ( りんかく )が見てとれた。

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