異 世界 に 転生 した と 思っ たら 普通 の 学生 に なっ てい たん だけど。 『創竜伝』1巻感想

『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった』8巻感想

異 世界 に 転生 した と 思っ たら 普通 の 学生 に なっ てい たん だけど

ここはどこだろう……? 俺は眠りの淵から覚めて身動きしようとし、肉体の感覚が無いことに気付いた。 夢の中のように視点だけ宙に浮いていて、手や足を動かすことはできない。 だが夢と違い、妙に視界ははっきりとしており、頭は冴えていた。 辺りは暗い。 いや、自分の周囲だけ明るい。 ごつごつとした岩肌や地面が見える。 どうやら自然の洞窟の中のようだ。 耳を澄ませてみたが誰の声もせず、しんと静まり返っている。 誰かいませんか。 そう声を出そうとした。 だけど声が出ない。 夢なら覚めてくれ。 そう願ったが、一向に状況が変わる気配は無い。 時間が経つにつれ、絶望的な環境にいることは明らかになった。 誰も来ないし目が冴えてしまって眠ることもできない。 ただダラダラ思考に耽っていると、地響きがした。 土埃と共に周囲の状況が変化していく。 土と岩だった床が、緑色に輝く人工の金属の床に変わった。 目の前が眩しく光る。 ゲームのシステムメッセージを思わせる透明な板。 え……今の何? 俺はしばし呆然とする。 床と壁が平らに均された人工のものに変わってから、見晴らしが良くなった。 鏡のような、とはいかないのだが、曇った暗い緑色の床に、青いひし形の光輝く結晶の姿が映っている。 穴が空くほど見つめてから、それが今の自分の姿だとようやく分かった。 俺は「セーブクリスタル」とやらに変わってしまったのだ。 RPGゲームの世界に入り込んでしまったのだろうか。 それなら主人公とはいかないものの、ただの村人の方がずっと良かった。 動けないし話せない冷たい石になるなんて、あんまりじゃないか。 泣きたかったが、涙も流れない。 最初は散々嘆いたが、気を取り直して色々情報収集したところ、ここが『ダンジョン・小さな森の遺跡 地下二層の壁』であると知った。 「ステータス」や「鑑定」など思い付く限り念じてみて、最後に何も考えず、パソコンの背景を右クリックするイメージを思い浮かべるとメッセージが表示されたのだ。 俺自身にも同じようにしてみたところ『セーブクリスタル Lv. 1』と表示された。 他にもこまごまとスキル等が記載されている。 なになに「回復Lv. 1」だと? 早速、近くを通りかかったネズミや小さなモンスターに「回復」を念じてみたところ、奴らの傷がふさがってレベルが上がった。 モンスターを倒した経験値でレベルが上がるタイプでなくて助かった。 どうやら技の熟練度合いによってレベルが上がるタイプのようだ。 俺は暇に飽かせてどんどんレベルを上げた。 レベルを上げながら、これが現実なら今までの俺はどうなってしまったのだろうと考えた。 父さん、母さん、それから……恋人の 心菜 ( ここな )。 お前それあざとすぎるだろ、と指摘すると「 枢 ( かなめ )たんにだけサービスだよ?」と可愛いことを言っていた。 あいつらは今どこにいるのだろう。 俺はどこへ行ってしまったのだろう。 ダンジョンには冒険者たちがやってきていた。 俺はゲームのセーブポイントよろしく彼らを回復させてやっていた。 レベルも上がるし、冒険者たちの話を聞けば、元の世界に帰るヒントがあるかもしれないからな。 異世界だからなのか、冒険者たちの言葉は聞いたことのない言語だったが、不思議と内容は理解できた。 しかし内容が理解できても意思疎通はできない。 こっちは石だからな……。 そんなある日、冒険者がとんでもないことを言った。 「なあ、セーブポイントって、動かせないのか?」 「!?」 「森の中に置いて拠点にしたら、ここから色々なダンジョンに行けて便利じゃないか」 いやー、目から鱗の発想だったね。 俺だけじゃなく仲間の冒険者も「確かに」と感心していた。 冒険者たちは、台座に置かれたひし形の結晶の俺を「よっこらせ」と抱え上げ、移動させた。 地上に出て、森の中に設置したのだ。 これが運命の分岐点だった。 森の中の川辺に置かれたセーブポイントの周囲には、頻繁に冒険者たちのキャンプが張られるようになった。 俺は話せないが他人の会話を聞くのは好きだ。 冒険者たちの会話を聞くうちに魔法の習得の仕方も分かった。 回復だけではなく地水火風の魔法もゲットできた。 それらの魔法でキャンプの周りのモンスターを退治すると、レベルも上がった。 俺が密かにモンスターを駆除するせいで、セーブポイントの周囲は無害な動物ばかりになり、森一帯は安全な場所となった。 ちなみにレベルを上げると、魔法の範囲も視界も広くなるんだぜ。 半径一キロメートル範囲を見渡せるようになって、身体が動かせない不自由さがだいぶ軽減された。 そうしていつしか、冒険者たちは俺を「旅人の守護石」と呼んで大事にし始めた。 奴らが付けた名前は「称号」として俺のステータスに加わった。 人が集まると商人がやってくる。 定住する奴も出てくる。 いつの間にか、セーブポイントを中心とした村ができた。 村ができるほどだから、数年以上経過したのだろう。 俺は石なので正確に時間を測ることはできない。 だが、周囲の人々が老いて死んでいくのを眺めておおよその年数を把握する。 村は発展して街になった。 この街は「始まりの街」と呼ばれるようになった。 俺は「街の中心」「待ち合わせ場所」「原初の石」などという称号が付いた。 なんだか普通のセーブポイントじゃなくなっちゃったな。 立派な教会が建てられて、俺はその中に設置された。 神官たちが朝夕、俺を拝むようになった。 石を拝んで何になるっていうんだろうと思わなくもないが、俺は寛容な男なので赦してやろう。 さあ、伏し拝むが良い!……なんちゃってな。 数十年経つと、俺は異世界の石ころになってしまったんだということを実感して、受け入れていた。 人生、おかしなことも起こるもんだ。 いつか生まれ変わって人間に戻れたら、自伝を書いてもいいな。 街の中心に据えられた俺は色々な話を聞いてすっかり耳年増だ。 沢山の冒険者が俺に祈りを捧げ、ダンジョンへ旅立っていった。 やがて戦争が起き、この「始まりの街」も戦火に見舞われる。 モンスターの大群を率いた魔族の一団が押し寄せ、街を囲む城壁の一部が崩れた。 こっそり俺も街の防衛を手伝ったので、称号がまた増えた。 「奇跡を起こす石」「勝利をもたらすもの」だってさ。 あまりにも有名になった俺を壊そうと、暗黒騎士がやってきたこともあった。 あの時は、クリスタルが砕けたら俺も死ぬのだろうかと戦々恐々だったね。 戦争は人間や冒険者の勝利に終わった。 風の噂で聞いたのだが、勇者が魔王の城に乗り込んで親玉を倒したらしい。 すごいな! 俺は見てもいないんだけど。 勇者はお姫様を嫁にもらって、なんと俺の前で結婚式を挙げた。 「この聖なるクリスタルの前で私は誓う。 お前を永遠に愛し続けることを」 「勇者さま……!」 リア充爆発しろ! と思ったね。 ああ、元の世界の彼女が懐かしい……。 でも幸せな奴らを見るのは心があったまるから、これはこれで良いけれども。 勇者は高台に登り、民衆を見下ろして声を張り上げる。 「この始まりの街を王都とし、我々はここにアダマスの建国を宣言する! 永遠に砕けぬ石のように、永久の平和を目指して共に歩んで行こう」 永遠に砕けない石かあ……俺って寿命いつまでなんだろう。 だけど、悪くないな、一国の守護石って立場も。 百年が経った。 二百年が経った。 アダマス王国の移り変わりを、俺は見守り続けた。 王国は「クリスタルに守護された国アダマス」として、王様は代替わりしたり、多少の波乱や戦争もあったけれど、何とか命脈をつなぐ。 五百年が経った。 七百年が経った。 そろそろ俺の意識もすり減るんじゃなかろうかと思ったけれど、称号「永遠に輝くクリスタル」「聖晶神アダマント」も追加されてしまって、まだまだ終わる気配が無い。 暇つぶしに上げたスキルのレベルも、上限の「Lv. 999」に達してしまった。 これ以上あげてどうするんだろう。 うーむ、仕方ないから、新しい魔法でも研究するか。 そして八百年が経ち……。 千年が経った。 最近、上空の雲行きがおかしい。 日が陰り、黒雲が空を覆っている。 世界は闇に閉ざされようとしていた。 複数の神官たちが俺の足元に集まって祈りをささげている。 「……クリスタルに宿りし聖なる意思よ。 我らが神アダマントよ、王国を、民を、貴方の光で導いてください」 ステンドグラスの向こう側で稲光が走る。 俺はかってない不穏な気配を感じて、石の中で身じろぎした。 千年の間に、俺はこの国にすっかり愛着が沸いてしまった。 できれば人間たちを助けてやりたい。 自分も元人間だったことは棚にあげて、強くそう思う。 だが、悲しいかな。 石ころの俺は動くことができない。 何か強力で強大で残酷な怪物が、黒雲を泳いでこっちにやってくる。 俺の張った結界を壊しながら進んでくる。 くっそー、動けたら、あいつの弱点を突いて倒してやるのに。 それに周囲に人間の暮らす街があるのに、超強力な攻撃魔法は使えないじゃないか! とうとう黒雲のボスらしい、金色のヤマタノオロチのようなモンスターが上空に現れて、動けない俺に光の息を吹きかける。 足元でおろおろしている神官や街の人々を守るために、俺はあえて攻撃を受けた。 黄金の光と、クリスタルから放たれる銀色の光が、王都の中心でせめぎ合う。 じりじりと力を削られる。 硬いクリスタルに亀裂が走った。 ああ、これでおしまいか……。 これで俺は本当に死ぬのかな。 本当に死ぬのなら、死ぬ前にもう一度、 心菜 ( ここな )に会いたい。 …………。 「…… 枢 ( かなめ )たん、起きて」 「うーん、むにゃむにゃ」 俺は、頭にもやがかかったような状態で目覚めた。 あまりにも長い間、現実世界にご無沙汰過ぎて、今どこにいるのか咄嗟に把握できなかった。 そこは昼休みの教室だった。 等間隔に小さな机と椅子が並ぶ広い部屋。 正面には落書きのある黒板。 揃いの制服を着た若者たちがたむろしている。 俺は学生服を着て机に突っ伏していた。 五感が同級生たちがはしゃぐ雑多な物音をとらえる。 初夏の風が吹き込んできて、寝汗を心地よく乾かしてくれた。 目の前にいるのは俺の恋人である 心菜 ( ここな )だ。 「 心菜 ( ここな )、俺、ずっとお前に会いたかった……!」 思わず、俺は彼女の手をガバっと握りしめる。 彼女は当然だが、驚いた顔をしてちょっと引いている。 「 枢 ( かなめ )たん、どうしたの? そんな涙目になって」 「聞いてくれよ、変な夢を見ちゃってさー」 俺は涙ながらに、異世界でセーブポイントになってしまった夢について、語ろうとした。 その時、地面がぐらぐらと揺れた。 「何?!」 「心菜……!」 俺は彼女と手をつないで、地震が収まるのを待つ。 周囲の生徒たちも不安そうな顔で、それぞれ机や椅子にすがって揺れが収まるのを待っている。 普通の地震より揺れは長く続いた。 ようやく終わったと思った途端、目の前に夢の中で見た、あのメッセージウインドウが表示される。 『【警告】時空のメルトダウンが発生しました。 独立世界ジ・アース、およびジ・アニマの接触が確認されました。 世界の一部が統合されます』 いったい何が起こっているんだ……?! 背筋を寒気と戦慄が駆け抜ける。 尋常ではない何かが起きようとしていると、俺は直感した。 目の前の心菜の手をぎゅっと握りしめる。 どうやら俺の異世界転生は、千年も掛けてようやくスタート地点に経ったところらしい。

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『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった』8巻感想

異 世界 に 転生 した と 思っ たら 普通 の 学生 に なっ てい たん だけど

ここはどこだろう……? 俺は眠りの淵から覚めて身動きしようとし、肉体の感覚が無いことに気付いた。 夢の中のように視点だけ宙に浮いていて、手や足を動かすことはできない。 だが夢と違い、妙に視界ははっきりとしており、頭は冴えていた。 辺りは暗い。 いや、自分の周囲だけ明るい。 ごつごつとした岩肌や地面が見える。 どうやら自然の洞窟の中のようだ。 耳を澄ませてみたが誰の声もせず、しんと静まり返っている。 誰かいませんか。 そう声を出そうとした。 だけど声が出ない。 夢なら覚めてくれ。 そう願ったが、一向に状況が変わる気配は無い。 時間が経つにつれ、絶望的な環境にいることは明らかになった。 誰も来ないし目が冴えてしまって眠ることもできない。 ただダラダラ思考に耽っていると、地響きがした。 土埃と共に周囲の状況が変化していく。 土と岩だった床が、緑色に輝く人工の金属の床に変わった。 目の前が眩しく光る。 ゲームのシステムメッセージを思わせる透明な板。 え……今の何? 俺はしばし呆然とする。 床と壁が平らに均された人工のものに変わってから、見晴らしが良くなった。 鏡のような、とはいかないのだが、曇った暗い緑色の床に、青いひし形の光輝く結晶の姿が映っている。 穴が空くほど見つめてから、それが今の自分の姿だとようやく分かった。 俺は「セーブクリスタル」とやらに変わってしまったのだ。 RPGゲームの世界に入り込んでしまったのだろうか。 それなら主人公とはいかないものの、ただの村人の方がずっと良かった。 動けないし話せない冷たい石になるなんて、あんまりじゃないか。 泣きたかったが、涙も流れない。 最初は散々嘆いたが、気を取り直して色々情報収集したところ、ここが『ダンジョン・小さな森の遺跡 地下二層の壁』であると知った。 「ステータス」や「鑑定」など思い付く限り念じてみて、最後に何も考えず、パソコンの背景を右クリックするイメージを思い浮かべるとメッセージが表示されたのだ。 俺自身にも同じようにしてみたところ『セーブクリスタル Lv. 1』と表示された。 他にもこまごまとスキル等が記載されている。 なになに「回復Lv. 1」だと? 早速、近くを通りかかったネズミや小さなモンスターに「回復」を念じてみたところ、奴らの傷がふさがってレベルが上がった。 モンスターを倒した経験値でレベルが上がるタイプでなくて助かった。 どうやら技の熟練度合いによってレベルが上がるタイプのようだ。 俺は暇に飽かせてどんどんレベルを上げた。 レベルを上げながら、これが現実なら今までの俺はどうなってしまったのだろうと考えた。 父さん、母さん、それから……恋人の 心菜 ( ここな )。 お前それあざとすぎるだろ、と指摘すると「 枢 ( かなめ )たんにだけサービスだよ?」と可愛いことを言っていた。 あいつらは今どこにいるのだろう。 俺はどこへ行ってしまったのだろう。 ダンジョンには冒険者たちがやってきていた。 俺はゲームのセーブポイントよろしく彼らを回復させてやっていた。 レベルも上がるし、冒険者たちの話を聞けば、元の世界に帰るヒントがあるかもしれないからな。 異世界だからなのか、冒険者たちの言葉は聞いたことのない言語だったが、不思議と内容は理解できた。 しかし内容が理解できても意思疎通はできない。 こっちは石だからな……。 そんなある日、冒険者がとんでもないことを言った。 「なあ、セーブポイントって、動かせないのか?」 「!?」 「森の中に置いて拠点にしたら、ここから色々なダンジョンに行けて便利じゃないか」 いやー、目から鱗の発想だったね。 俺だけじゃなく仲間の冒険者も「確かに」と感心していた。 冒険者たちは、台座に置かれたひし形の結晶の俺を「よっこらせ」と抱え上げ、移動させた。 地上に出て、森の中に設置したのだ。 これが運命の分岐点だった。 森の中の川辺に置かれたセーブポイントの周囲には、頻繁に冒険者たちのキャンプが張られるようになった。 俺は話せないが他人の会話を聞くのは好きだ。 冒険者たちの会話を聞くうちに魔法の習得の仕方も分かった。 回復だけではなく地水火風の魔法もゲットできた。 それらの魔法でキャンプの周りのモンスターを退治すると、レベルも上がった。 俺が密かにモンスターを駆除するせいで、セーブポイントの周囲は無害な動物ばかりになり、森一帯は安全な場所となった。 ちなみにレベルを上げると、魔法の範囲も視界も広くなるんだぜ。 半径一キロメートル範囲を見渡せるようになって、身体が動かせない不自由さがだいぶ軽減された。 そうしていつしか、冒険者たちは俺を「旅人の守護石」と呼んで大事にし始めた。 奴らが付けた名前は「称号」として俺のステータスに加わった。 人が集まると商人がやってくる。 定住する奴も出てくる。 いつの間にか、セーブポイントを中心とした村ができた。 村ができるほどだから、数年以上経過したのだろう。 俺は石なので正確に時間を測ることはできない。 だが、周囲の人々が老いて死んでいくのを眺めておおよその年数を把握する。 村は発展して街になった。 この街は「始まりの街」と呼ばれるようになった。 俺は「街の中心」「待ち合わせ場所」「原初の石」などという称号が付いた。 なんだか普通のセーブポイントじゃなくなっちゃったな。 立派な教会が建てられて、俺はその中に設置された。 神官たちが朝夕、俺を拝むようになった。 石を拝んで何になるっていうんだろうと思わなくもないが、俺は寛容な男なので赦してやろう。 さあ、伏し拝むが良い!……なんちゃってな。 数十年経つと、俺は異世界の石ころになってしまったんだということを実感して、受け入れていた。 人生、おかしなことも起こるもんだ。 いつか生まれ変わって人間に戻れたら、自伝を書いてもいいな。 街の中心に据えられた俺は色々な話を聞いてすっかり耳年増だ。 沢山の冒険者が俺に祈りを捧げ、ダンジョンへ旅立っていった。 やがて戦争が起き、この「始まりの街」も戦火に見舞われる。 モンスターの大群を率いた魔族の一団が押し寄せ、街を囲む城壁の一部が崩れた。 こっそり俺も街の防衛を手伝ったので、称号がまた増えた。 「奇跡を起こす石」「勝利をもたらすもの」だってさ。 あまりにも有名になった俺を壊そうと、暗黒騎士がやってきたこともあった。 あの時は、クリスタルが砕けたら俺も死ぬのだろうかと戦々恐々だったね。 戦争は人間や冒険者の勝利に終わった。 風の噂で聞いたのだが、勇者が魔王の城に乗り込んで親玉を倒したらしい。 すごいな! 俺は見てもいないんだけど。 勇者はお姫様を嫁にもらって、なんと俺の前で結婚式を挙げた。 「この聖なるクリスタルの前で私は誓う。 お前を永遠に愛し続けることを」 「勇者さま……!」 リア充爆発しろ! と思ったね。 ああ、元の世界の彼女が懐かしい……。 でも幸せな奴らを見るのは心があったまるから、これはこれで良いけれども。 勇者は高台に登り、民衆を見下ろして声を張り上げる。 「この始まりの街を王都とし、我々はここにアダマスの建国を宣言する! 永遠に砕けぬ石のように、永久の平和を目指して共に歩んで行こう」 永遠に砕けない石かあ……俺って寿命いつまでなんだろう。 だけど、悪くないな、一国の守護石って立場も。 百年が経った。 二百年が経った。 アダマス王国の移り変わりを、俺は見守り続けた。 王国は「クリスタルに守護された国アダマス」として、王様は代替わりしたり、多少の波乱や戦争もあったけれど、何とか命脈をつなぐ。 五百年が経った。 七百年が経った。 そろそろ俺の意識もすり減るんじゃなかろうかと思ったけれど、称号「永遠に輝くクリスタル」「聖晶神アダマント」も追加されてしまって、まだまだ終わる気配が無い。 暇つぶしに上げたスキルのレベルも、上限の「Lv. 999」に達してしまった。 これ以上あげてどうするんだろう。 うーむ、仕方ないから、新しい魔法でも研究するか。 そして八百年が経ち……。 千年が経った。 最近、上空の雲行きがおかしい。 日が陰り、黒雲が空を覆っている。 世界は闇に閉ざされようとしていた。 複数の神官たちが俺の足元に集まって祈りをささげている。 「……クリスタルに宿りし聖なる意思よ。 我らが神アダマントよ、王国を、民を、貴方の光で導いてください」 ステンドグラスの向こう側で稲光が走る。 俺はかってない不穏な気配を感じて、石の中で身じろぎした。 千年の間に、俺はこの国にすっかり愛着が沸いてしまった。 できれば人間たちを助けてやりたい。 自分も元人間だったことは棚にあげて、強くそう思う。 だが、悲しいかな。 石ころの俺は動くことができない。 何か強力で強大で残酷な怪物が、黒雲を泳いでこっちにやってくる。 俺の張った結界を壊しながら進んでくる。 くっそー、動けたら、あいつの弱点を突いて倒してやるのに。 それに周囲に人間の暮らす街があるのに、超強力な攻撃魔法は使えないじゃないか! とうとう黒雲のボスらしい、金色のヤマタノオロチのようなモンスターが上空に現れて、動けない俺に光の息を吹きかける。 足元でおろおろしている神官や街の人々を守るために、俺はあえて攻撃を受けた。 黄金の光と、クリスタルから放たれる銀色の光が、王都の中心でせめぎ合う。 じりじりと力を削られる。 硬いクリスタルに亀裂が走った。 ああ、これでおしまいか……。 これで俺は本当に死ぬのかな。 本当に死ぬのなら、死ぬ前にもう一度、 心菜 ( ここな )に会いたい。 …………。 「…… 枢 ( かなめ )たん、起きて」 「うーん、むにゃむにゃ」 俺は、頭にもやがかかったような状態で目覚めた。 あまりにも長い間、現実世界にご無沙汰過ぎて、今どこにいるのか咄嗟に把握できなかった。 そこは昼休みの教室だった。 等間隔に小さな机と椅子が並ぶ広い部屋。 正面には落書きのある黒板。 揃いの制服を着た若者たちがたむろしている。 俺は学生服を着て机に突っ伏していた。 五感が同級生たちがはしゃぐ雑多な物音をとらえる。 初夏の風が吹き込んできて、寝汗を心地よく乾かしてくれた。 目の前にいるのは俺の恋人である 心菜 ( ここな )だ。 「 心菜 ( ここな )、俺、ずっとお前に会いたかった……!」 思わず、俺は彼女の手をガバっと握りしめる。 彼女は当然だが、驚いた顔をしてちょっと引いている。 「 枢 ( かなめ )たん、どうしたの? そんな涙目になって」 「聞いてくれよ、変な夢を見ちゃってさー」 俺は涙ながらに、異世界でセーブポイントになってしまった夢について、語ろうとした。 その時、地面がぐらぐらと揺れた。 「何?!」 「心菜……!」 俺は彼女と手をつないで、地震が収まるのを待つ。 周囲の生徒たちも不安そうな顔で、それぞれ机や椅子にすがって揺れが収まるのを待っている。 普通の地震より揺れは長く続いた。 ようやく終わったと思った途端、目の前に夢の中で見た、あのメッセージウインドウが表示される。 『【警告】時空のメルトダウンが発生しました。 独立世界ジ・アース、およびジ・アニマの接触が確認されました。 世界の一部が統合されます』 いったい何が起こっているんだ……?! 背筋を寒気と戦慄が駆け抜ける。 尋常ではない何かが起きようとしていると、俺は直感した。 目の前の心菜の手をぎゅっと握りしめる。 どうやら俺の異世界転生は、千年も掛けてようやくスタート地点に経ったところらしい。

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ハイスクールD×D 異世界帰りの赤龍帝

異 世界 に 転生 した と 思っ たら 普通 の 学生 に なっ てい たん だけど

やっぱりな...。 コイツは前原が言ってた親戚。 それもヤクザ... !大事な身内の安否のことで俺を疑ったってわけやな...。 「前から優は杉山、自分のことでウチに相談しに来てたんや。 何やら自分が優を脅してるとか何とか... いずれにしろ自分優にちょっかいかけてたそうやんけ?んで最近その優と連絡つかんようなってなぁ。 学校行っても何でか学校先が分からんようなってるわ連絡先も分からんようなってるわでや... 」 「ぶはっ!...... ああ失礼...... くくっ...... w」 思わず吹き出してしまい詫びを入れる。 後藤と組員どもは殺気を向けるも話を続ける。 それよか、俺がちょっかいかけてたやと?あの最低ゴミカス野郎はどこまで俺を貶めりゃ気が済むんや... !まぁもう死んだからどうってこともねーけど。 「そんな時にや... 自分がウチらが運営してるカジノに来て自分の名前を出してくれたお陰で手がかりが掴めたって話や...。 とは言ってもどうやったんか、自分見た目を誤魔化して入ったそうやな...。 てっきり相手は二十歳の奴かと思ったら、まさかの優とタメやったとはな。 しかも随分荒稼ぎしたとも聞いたが...... 今はそんなんはええわ。 もう一度訊くで...... 優をどうしたんや?」 「......... ふぅん?」 「というか自分、昨日自分んとこに電話かけたよな?人質まで取って呼び出したのに昨夜はカジノにこーへんかったしなぁ...。 お陰でこっちは待ちぼうけくらったでホンマ...。 というか用があったんやろ?ならお前から出向けや。 何が来いや?人質もナンセンスやし。 アホやろお前ら」 度重なる俺の不遜な発言に後藤も組員どもも堪忍袋の緒が切れる寸前だ。 「おい...... こっちは昨夜待ちぼうけされて苛々してるんやわ...。 そろそろ真面目に答えろや。 家族のこと何とも思ってへんのか!?」 「そやけど?お前らと一緒にすんなや。 あんな奴らどうなろうが俺の知ったこっちゃないから。 今日俺が呼びかけに応じたんはただの暇つぶしや。 気がした。 目の前にいる後藤の今の短い声に殺気が帯びているのが分かった。 それに応じて組員どもも殺気を放っている。 こいつらそれなりに命のやりとりの経験を積んだ奴らばっかのようやな...。 現代に帰って以降でこういう連中と見るのはこれが初めてやな... オモロいやんけ。 「優がゴミカスやと... ?ウチの身内を侮辱することは流石に見過ごせへんなァ?裏社会を生きる俺が言うのも何やけどなァ、自分かなりの下衆野郎やで?家族を人質に取られても知らんぷりやわ、他人の身内を侮辱するわ、色んな人間見てきたけど自分ほどの腐った奴はそうおらへんで?」 「あっそ。 ホンマにお前が言えたことやないよな。 反社会やってる分際が。 というか前原が人として終わってる最低のゴミカスやってことは事実やぞ?まず誤解を解かせてもらうけど、ちょっかいかけてきたんや俺やなくて前原の方や。 んで俺は二年半もあいつから理不尽な虐めを受けてたんや... !」 俺がやや怒気を孕んだ声に後藤らはやや怯み、次いで驚愕した反応をする。 「優が、虐め... !?杉山... 自分を、か!?」 「っははは... !そういうことか!あいつ、自分の身内に嘘教えてたんかよ!なぁ後藤。 あいつの学校で見せてた汚い本性を教えたるわ!」 そして俺はヤクザ全員に前原優という汚く最低な人間について教えてやった。 強い奴についてそこでイキって人を虐げる奴。 俺に対して散々理不尽を強いたこと、痛めつけられ辱められたこと、将来的にはあいつは社会のクズになるってこと全部を話した。 あいつはお前らヤクザという後ろ盾を使ってデカい面する為にお前らを上手いこと誤魔化してたんや。 甥を溺愛してる様子のお前はそんなゴミカス野郎の下らん嘘に唆されて勝手に俺を悪役と決めつけて今回みたいな因縁をつけて、まんまとあいつの下らん思惑通りに動いたって話やっ! ただ、あいつの賢いであろう親は騙せなかった... というか相手にされへんかったんやろーな。 権力者とは言え政治仕事に身をやつす柄である以上、学生同士の問題なんかに労力を割くことはせーへんかったんやろうな。 せやから俺の家族が路頭に迷う理不尽な仕打ちはなかったって話やけど、まぁどうでもええか」 前原優という腐った人間の本性を知らされた後藤は愕然としている。 実の息子のように想っていたのか、ショックだったようやな。 「じゃあ...... 自分は、優が消えたことについては何の関係もなかった言うんか... ?俺らは優の嘘を信じて杉山... は?」 俺の暴露に後藤は瞬時に顔をこちらに向ける。 驚愕と怒りを滲ませている。 「いやお前らがあいつと連絡つかない理由は、その日にあのゴミカス野郎に復讐して、ぶち殺したからやって言うてるんやけど。 うん、お前らが睨んだ通りで、前原優は俺が惨たらしくぶち殺しましたー!その証拠に...... ほい」 これの為に取っておいた証拠写真を後藤に見せてやる。 その写真には...... それを合図にヤクザ全員が一斉に俺に斬りかかってきた!闇雲にではない、同士討ちしないよう連携をとって襲ってくる。 ははは、前原が仕切ってた馬鹿どもと違ってこっちの方がしっかりしてるやんけ!ハッキリしたわ...... あいつは、前原優はやっぱりクズやったと! あいつは将来何か汚い手をつかって親の権力を奪って自分のものにして、このヤクザをも上手いこと乗っ取って利用して好き勝手するんやろうよ!実際だいぶ汚い事やりまくってたみたいやし多くの人を傷つけて潰して殺してたしな。 反対に今のこのヤクザは、比較的善良寄りや。 人質取ってるのはホンマみたいやけど二人には乱暴はしてへんみたいやな?どっちでもいいけど。 まぁとにかくコイツらは別に俺を不快な気持ちにはさせてへんし害を為してもないけど......。 っ!!」」」」」 敵となった以上は慈悲は無用、皆殺しルート確立! ってわけで魔術をつかって瞬時にヤクザどもを斬殺した!わずか数秒で俺以外の人間は全員首無し死体と化した... ! 「俺が下衆になったんは...... お前んとこのゴミカス甥のせいや。 あいつらの理不尽な虐めが、俺をこんなにさせたんや。 じゃあな社会のクズども。 今の俺がいる以上は、この組織は今日で終いや」 特に恨みはない連中なので、証拠隠滅(別に必要無いけど)に死骸を全て消却して何も無い空間に変えた。 そして下の階に移動して本当に縛られていた人質二人を解放する。 」 「...... 」 「はッ、礼無しかよ。 一応解放したったのに。 心を消したら感謝の気持ちすら湧かへんようになるんかい」 侮蔑を込めてそう吐き捨てて、二人を放置して屋上へ行く。 そこから飛んで家へ帰った。 少しは暇潰しにはなったな...。

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