京都 寺町 三条 の ホームズ 13。 #13 ホームズの祈り

京都寺町三条のホームズ

京都 寺町 三条 の ホームズ 13

ネタバレ Posted by ブクログ 2020年02月18日 円生が主役の一冊といってもいいでしょう。 それほど彼の心の葛藤や苦しみ、コンプレックス、清貴に対する嫉妬、相反する憧れといったものが描かれていた作品だと思います。 円生の葵に対する感情も「清貴になりたい」という想いが姿をかえたものではないかと感じます。 鑑定士になりたかった、という想いが姿をかえたもの、 ということもできますね。 いずれにしてもなりたいものになれなかった、という苦しみはいかばかりか、その心の奥を想像すると読み手もちょっと苦しくなります…。 清貴、小松のもとを離れひとりになり、イーリンと偶然出会い、彼女の生い立ちと自分を重ね、円生自身が自分の心の奥底にあった本当の想いに気づくシーンは、これまでの円生の振る舞いや清貴に対する態度など、彼の多くのことがわかった瞬間でもありました。 自分らしさ、といいますか独自の軸があれば相手に対する嫉妬もやがては収まろうというもの、これからの円生が楽しみになってきました(そうなると葵への感情も少し変化するかも…)。 但し出番の少なかった葵ちゃんとの濃厚キスシーンと清貴まさかの浮気(?)・犯罪シーン(?)あり。 安定のホームズさんとまさかのホームズさんの両方が拝める特別回でした。 葵ちゃんのためなら、あそこまでやってのける。 寧ろ彼女を人質に取られたから、あそこま でやったというか。 以前の列車の件での仕返しとばかりに例の彼が姑息な手を使ってきて、事実大変なことにはなるのですが、所詮小悪党。 ハラハラはしましたが、円生とのバトルほどには危機感を覚えませんでした。 そういう意味でも例の彼はホームズさんのライバルの器にはなり切れなかった模様。 ご愁傷さまです。 今回はきっちり捕まりましたから、今後は大丈夫でしょう。 どんでん返し、何とも鮮やかでございました。 流石のホームズさん。 そんな中、円生がとうとう自身の進むべき道を見つけられた大切な回にもなりました。 最近はホームズさんに比べると子供っぽい部分を多々見せていた彼でしたが、ついに爆発して家出。 子供か! その先にやっと答えを見つけられて、落ち着いたと思います。 葵ちゃんへの気持ちに関してはまだ解決しきっていない気もしますが。 何にせよ、ライバルキャラの門出を純粋に喜べるのはいいなと思いました。 作品内での成長が見えているということなので。 逆にホームズさんは葵ちゃんに対してどんどん弱くなってますけどね。 逆の意味で心配にはなります。 毎度思いますけど。

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『京都寺町三条のホームズ』の魅力全巻ネタバレ紹介!2018年夏アニメ化!

京都 寺町 三条 の ホームズ 13

京都寺町三条のホームズ、2次創作、13作目1話完結です。 原作エブリスタ、原作書籍11巻までの設定内容含めた妄想で創作させて頂いた小話です。 ご了承ください。 閲覧されている方、ブクマ、いいね!、コメント、皆さんありがとうございます。 このような場でのふれあいが楽しく、稚拙な文章ですが2次創作冥利に尽きます。 今回のお話は、【香織side】【清貴side】が交互にあります。 ご注意ください! 【あらすじ】 香織のお願いにより、宮下呉服店の訪問着販促会の臨時従業員になった葵。 葵の心配をする清貴は香織に気がある小日向圭吾を誘い、販促会を訪れる。 小日向圭吾は、清貴がそこまで葵さんに夢中になることが解せない中、販促会に付き合う。 だが、香織目当てで訪れた小日向が葵の魅力を目の当たりにすることになる。 誤字脱字・おかしな表現、とくに京都弁は間違え多いと思います。 読みやすいよう、分かりやすいよう、丁寧に書くことを心がけています。 随時訂正しておりますので、何かあれば教えてください。 よろしくお願いします。 【side香織】 カランカランー ドアベルを鳴らして扉を開けた。 ここは京都寺町三条の骨董品店[蔵] コーヒーの薫りが香るシックな店内には、数々の骨董品が所狭しと並ぶそのどれもが綺麗にディスプレイしてある。 以前は壺やら茶器やらが多かった店内に、最近アンティークの調度品も並べるようになったと葵から聞いていた。 「あ、ほんまや」 私は細かい装飾が美しいシルバーのティーセットを見て微笑んだ。 私は宮下香織、寺町三条の老舗呉服店[宮下呉服店]の娘(次女)で京都府立大文学部に通う華の女子大生である。 「葵!」 私は葵を見つけて声をかける。 「香織!いらっしゃいませ」 葵が私を見つけて手を振ってこたえた。 彼女は真城葵 ここ蔵の従業員であり、高校時代からの同級生で親友の葵も私と同じ京都府立大学文学部に通うときめく女子大生である。 「香織さん、いらっしゃいませ」 彼は家頭清貴さん 通称、ホームズさんだ。 彼は京都の国選鑑定人家頭誠司さんの孫で、鑑定士見習いをしながら[蔵]の店長代理をしている。 京都府立大文学部を経て京都大学大学院を修了した、私たちの先輩である。 容姿端麗、頭脳明晰、家柄も良しでほんま申し分のないイケメンで私たちとは別世界の人間だと思っていたが、彼はいまや葵の婚約者でもある。 「こんにちは、ホームズさん」 私はホームズさんにそう挨拶をする。 「葵、時間とってもらってほんまおおきに。 営業時間内に時間をとってもらうことになってしもて、かんにん」 私は葵に「ごめん!」と手を合わせてそう言ってウインクする。 「私は全然大丈夫。 ホームズさん、ありがとうございます」 葵は優しく微笑み、カウンターのホームズさんにお礼をいう。 「いえ、大丈夫ですよ。 今日はとくに予定もありません」 そういってホームズさんは、私と葵を中央のソファ席に案内してくれた。 そして「コーヒーを淹れますね」といってカウンターに戻って行った。 「で、話なんやけどね。 この間、宮下呉服店の訪問着販促会をしたやろ?それが好評でまたやることになったんよ。 今度は庭園のある喫茶店とコラボするんやて」 私は以前、葵に手伝ってもらった訪問着販促会のことから話した。 着物販促会、いわゆるキャンペーンだ。 宮下呉服店の着物を着てもらって着心地を実感してもらい、売り上げにつなげようという試みだ。 「ああ、うん、すごく好評だったみたいだね。 私もお手伝いできて楽しかった。 従業員の人達も親切で勉強になったし、カフェとコラボなんてすごいね!」 葵も訪問着の販促会を「楽しかった」と話している。 よっ、よかったぁ これは今回のお願いも聞いてくれそうで、私は膝の上の拳をグッとさせて手応えを感じた。 「でね、今回も葵に手伝ってもらいたくてお願いしたいんよ」 私はそういって葵に"お願い"と手を合わせる。 「うん、いいよ」 葵がニコッと微笑み快く快諾してくれた。 「ほんま!おおきに!」 (おっしゃ、ミッションクリアや!) 葵に手伝ってほしいというのは、宮下呉服店の従業員からの要望だったのだ。 前回の販促会はたった2日の参加だったのに、葵は従業員のメンバーにとても気に入られていたのだ。 葵の『人を惹きつける魅力』ってやつやろか? 「訪問着販促会が好評なようで、良かったですね」 ホームズさんが、香ばしい香りを立てながらコーヒーを運んでくると私と葵の前にコーヒーを置いて微笑んだ。 淹れたてのコーヒーの香りとスマートな笑顔と身のこなしに、ドキリとする。 「そうなんです。 少し、葵をお借りしますね」 私はコーヒーの香ばしい薫りを楽しんで一口飲む。 「販促会はいつやるの?」 葵が、コーヒーを飲みながら「ホームズさんの予定も確認しないとね」と彼の方に視線を向けた。 「再来週、今回は1週間!」 私はサラリとそういった。 一瞬、不穏な空気を感じたからだ。 私はホームズさんがちょっと苦手だ。 いや、ものすごく苦手だ。 さっきからいちいち警戒して違う意味でドキドキしてしまう。 この人は『完璧すぎて胡散臭い』どうしてもこれが拭えないのでいつも身構えてしまうのだ。 「ホームズさん、私のシフト調整できますか?」 ホームズさんに慣れっ子な葵が、カウンターに行ってホームズさんにお願いしている。 相変わらず繕ったように胡散臭いが、いつもの飄々とした端正な顔立ちの彼は葵を見つめ微笑んでいる。 私はさっきの不穏な空気は気のせいかと思い直し、コーヒーを飲んでホッと胸をなでおろした。 「ありがとうございます。 香織、大丈夫だって良かったね!」 「うん!」 葵が嬉しそうにこちらに戻ってくると、私たちは販促会で着る訪問着をあとで選ぼうとはしゃいでいた。 ーー ー ホームズさんが、そんな私たちの後ろで『あの人』に連絡をとっているなんて知る由もなかった。 [newpage] 【side清貴】 「こっ小日向さん?!」 香織さんが小日向の姿をみて、驚いて目を見開いている。 びっくり仰天というのは、まさにこんな感じだろうなと僕は目を細めた。 彼は小日向圭吾 僕の京都大学大学院時代の学友だ。 そして小日向は香織さんを気に入っているらしく、絶賛アプローチ中なのだ。 僕は小日向とともに、宮下呉服店の訪問着販促会に来ている。 先日ー 香織さんが葵さんにこの販促会の話をするために蔵に来た日、僕は密かに彼に連絡を取ったのだ。 今日から1週間も、葵さんが宮下呉服店の臨時従業員としてこちらでお世話になる。 夕方になると庭園の灯篭のライトアップもあるという。 「あれ?ホームズさん、どうしたんですか?」 葵さんが、着物に襷掛けと腰にエプロンを着けてタタタッと小走りに駆け寄る。 彼女は淡いピンク地に赤、桃、白色の桜が散りばめられた可愛らしい着物を着ていた。 開店前の準備中だったようで、襷掛けをしていて滑らかで白くて華奢な腕全体がスッとでている。 「葵さん、おはようございます。 初日は朝早くから大変ですね。 開店前ですが、ちょっと葵さんと香織さんの様子を拝見したくて伺いました」 僕は「お邪魔します」とそういって、葵さんに挨拶をして微笑んだ。 「そうなんですね。 すみません、バタバタしててこんな格好で恥ずかしいです」 葵さんが襷掛けをした格好を恥じらう姿が、また可愛らしくて目尻を下げた。 「いえ、働き者の葵さんらしいです。 こんなに腕を出して寒くないですか?お体が冷えてしまいます」 葵さんの腕をそっとさすると、冷んやりと冷たいので心配になってしまう。 「あ、大丈夫ですよ」 そんな僕の心配をよそにケロッとした顔で返す葵さんに、ため息まじりに目尻を下げた。 「こんにちは葵さん、香織さん。 いやぁ、今日は家頭とお邪魔しちゃって悪いね!」 小日向が葵さんと香織さんにそう挨拶をすると、なにやらチラチラと香織さんに目配せをしている。 「まぁ、うちも何にもないとは思わへんかったけど。 まさか、小日向さんと一緒にくるとは」 香織さんが小日向さんの目配せに気がつき、僕をやや警戒気味みに見ながら「はぁ」と肩を落としている。 「え?誰と来ると思ってたの?」 小日向が眼鏡の奥の目を細めて、香織さんを覗き込む。 「香織、もうすぐ開店だから行かなくちゃ。 ホームズさんも小日向さんもお席でごゆっくりしてくださいね。 あとでご注文伺いますね!」 葵さんがそういって香織さんに声を掛けると、香織さんも「そやね」と気を取り直して店の奥に戻った。 僕と小日向はそんな彼女たちを見送り、テーブル席へと向かった。 [newpage] ーー ー 「まさか、家頭から急にこんな誘いを受けるとは思わなかったな。 あ、いつも急だったな」 小日向が席に着いて「ふう」と息をもらした。 「ええ。 いつもありがとうございます」 僕はニコッと笑顔で小日向にお礼をいう。 「まぁ、香織ちゃん要員なのはわかってるし」 そう言って頬杖をついて、香織さんをみる小日向は相変わらずである。 「それは話が早くて助かります」 僕はそういって、頑張って働く葵さんを愛でる。 下町の娘さんのようだ。 可愛らしいわ、ほんま。 頑張ってはるってギュッと抱き締めたい今すぐにでも 「それにしても、家頭がこんなに葵さんにデレッデレの夢中になるのが解せないんだよなぁ」 小日向がメニューを見ながら僕をチラリと見ると、眼鏡の奥を意味深に細めてそういって口角を上げた。 「別にあなたに解して貰う必要はありませんよ」 僕はその仕草にイラッとしながらも、ニコッと笑顔でそう交わした。 「お!あの人、綺麗な人だな」 そんなことには慣れっ子の小日向が、僕の後方にいた佐織さんをみてそう漏らす。 「あの人は宮下佐織さんです。 香織さんのお姉さんですよ。 宮下呉服店の長女で元斎王代です」 僕が佐織さんをそう紹介すると、小日向は大きく頷いた。 「はぁ、元斎王代か。 どうりで美人なわけだ『大和撫子』って感じだな。 なんかさ、俺は勝手にお前はああいう年上で美人な人と恋愛すると思ってたんだよな」 小日向が佐織さんを見ながら「どうなんだよ」と僕に意見を求める。 「そうですね。 でも恋愛をしたいとは思いませんでした」 僕は佐織さんを見て、小日向を一瞥するとそう答えた。 ーー ー ふと大学時代の付き合いを思い出した。 周囲の人間からチヤホヤされた彼女たち、僕もそうだ。 "容姿が良い"というのは簡単に人を惹きつけた。 でもそれだけー そんな人間は沢山いたし、彼らの区別なんてつかなかった。 そして簡単に離れていくし、僕はとくにそんな彼女たちに興味も湧かなかった。 ーー ー [newpage] 「ああ、そうか、ロリコンだからか」 「こらっ、小日向っ」 「ああ」と妙な納得をしている小日向に僕は思わず突っ込んだ。 「まったく、何度も言いますが僕はロリコンではありません。 葵さんが7つ年下だっただけで、同い年だろうと年上だろうと僕は葵さんを選びます」 「へえ、そう、ふーん」 そういいながら彼は、眼鏡の奥の目を可笑しそうに細めた。 自分で誘っておいて何だが、小日向を呼んでしまったことを軽く後悔し始めて、僕は額に手を当てて項垂れた。 ーー ー 「ホームズさん、小日向さん、お待たせしました」 葵さんが注文を取りに僕たちのテーブルに来た。 「初日からお天気も良く、盛況ですね」 僕は席がうまっていくのを見ながら、コーヒーを注文してそう葵さんに声をかける。 「はい!そうなんです。 前回の反響も良かったみたいで、また来て頂いた方と話し込んでしまいました」 葵さんが、注文票を口元に当てて「ふふふ」と恥ずかしそうに微笑む。 葵さんはやはり接客上手らしい。 「小日向さんは、何になされますか?」 葵さんが小日向に尋ねる。 「うーん、迷うなぁ」 小日向はさっきから、コーヒーと何にしようかで迷っていた。 「コーヒーをこちらのブレンドにするなら、甘めの和三盆のプリンがいいと思います。 本日のブレンドは豆がちょっと濃いめなんです。 お抹茶のプリンにするなら、コーヒーはこちらのブルマンがいいと思います」 「ー!」 葵さんが小日向の視線をみてスラスラとおすすめを案内したので、僕はちょっと驚いた。 彼女は小日向が何を迷っているのかが、分かったのだろう。 相変わらず、人の視線の先をよく見ているしメニューの内容もきちんと把握している。 たった1週間のお手伝いなのに、手抜きをしない彼女の丁寧な心がけに感心する。 「ありがとう。 じゃあ、ブレンドと和三盆のプリンにしようかな」 小日向がメニューを閉じて葵さんに渡すと、突然ブチッと何かが外れる音がした。 「あ、ボタンがとれた」 小日向のシャツの袖のカフスが、メニューの端の金具に引っかかって取れてしまった。 「すみません、大丈夫ですか?ちょっと待っててください」 葵さんが直ぐに気がつくと、小日向の裾とカフスを確認して店の奥にかけて行ってしまった。 「大丈夫だよ、ってもう行っちゃったね」 小日向が、ありゃと目尻を下げて僕をみる。 「まったく、あなたは」 僕は肩を落として葵さんの行った方向をみていると、ほどなくして葵さんが手に小さなポーチを持って戻ってきた。 「今、注文を出してきました。 直ぐにカフス、お直ししますね」 葵さんがそういって小さなポーチを開けた。 「え、そう?大丈夫なのに」 小日向が遠慮がちにそういう。 「はい、すぐなので大丈夫ですよ」 葵さんはそういってポーチを広げると、中身はソーイングセットだった。 器用に針に糸を通して整えるてから小日向の袖を持つと、カフスボタンがスッスッスッスッと縫い付けられてく。 ものの2、3分の出来事だったと思う。 綺麗に玉留めをしてしっかり留るカフスがキラリと光る、葵さんの手慣れた仕草に僕も小日向も目を奪われた。 「できました。 大丈夫ですか?」 葵さんが小日向の手首をとってカフスを留め直してから、袖の留まり具合を確認している。 「あ、うん、ありがとう。 葵さんすごいな、お裁縫できるんだね」 小日向が頬を染めて、目を見開いて感心している。 「僕も初めて見ました。 手際が良くて驚きました」 僕も葵さんのソーイングセットをみて瞬く。 「いえ、そんな。 でも上手くできて良かったです。 ホームズさんのネクタイを作ったときのパッチワークサークルにお友達がいて、たまにお邪魔しています」 葵さんは、僕らの褒め言葉に「ふふふ」と恥ずかしそうにポーチを口元にあてて微笑む。 「ー!」 ドキッとする僕と小日向。 店の奥から、葵さーん!と呼ぶ声がする。 葵さんはその声に気がつくと、そそくさとポーチを閉じて「失礼します」と微笑んで席を離れた。 店の奥へ小走りで戻る葵さんを僕らは見送った。 [newpage] 「ああ、なんか、葵さんの魅力わかった気がする」 小日向が葵さんの後姿を目で追いながら僕に目を移し、眼鏡の奥で何か合点が合ったようにニヤリと口角を上げる。 「はい?」 僕はさっきから香織さんではなく葵さんをジロジロ見る小日向に、ジッと冷ややかな目を向ける。 「さっきの注文といい、カフスの対応といい、葵さんはすごいんだな。 なんというか不思議な魅力だ」 和三盆のプリンのスプーンを置いてコーヒーを飲んでいる。 葵さんの魅力を彼なりに考察をしているようだが、答えに辿りつけずに"不思議"と称した。 しかし満足そうに「プリンとコーヒーも正解!」と絶賛している。 くっ!ほんま、あのカフスが憎たらしいわ。 「わ、わかってるよ。 葵さんが絡むと怖いな。 でも家頭の心配がちょっとわかったかな」 小日向が慌ててカフスを手で隠してから葵さんを見ると、そういって目尻りを下げた。 僕も、再び葵さんに視線を向けた。 葵さんは、着物を選ぶお客の接客をしていた。 ひとつひとつの商品を説明しているようだった。 手抜きをしない彼女の仕事振りは、とても丁寧だ。 それは普段蔵での美術品の扱い方を見ていればよく分かる。 いつもさりげなくメモをとり、蔵の書物で美術品を調べたりしている。 調べてもわからないことを、僕に質問してくる。 日に日に質問の内容が専門的になってくるので、本当に感心する。 彼女の成長は素直に嬉しいし、誇らしい、僕は本当に素晴らしい女性を手に入れることができたと思う。 でもその反面ー [newpage] 【side香織】 「葵、こっちも見てもらってええかな!」 私は葵に向かって手を振る。 「はーい!」 葵はお客さんの着付けが終わったようで、笑顔で言葉を交わしてから私に手を振り返してくれる。 「ほんま、葵が居てくれて助かった」 私は着付けの品出しを葵に手伝ってもらいながら言った。 「よかった、役に立てて嬉しいよ」 葵が着物を出しながらそういうと、ニコニコと着物を整えている。 「とくにコーヒーが絶品やて!さすが蔵でコーヒー淹れているだけあるわ」 「まだまだホームズさんには敵わないよ」 褒めた私に謙遜して葵が微笑んだ。 ホームズさんと彼の名を呼ぶときの葵の表情は、いつも特別だ。 誇らしくで自慢の先生であり、そしていまや婚約者なのだ。 「もう少ししたらお客さんも引くやろう。 ホームズさんたちと合流して私たちもお茶にしいひん?」 「ほんと!嬉しい」 葵が、パァッとひときわ明るい表情になって喜んだ。 花が咲いたような笑顔に私でも見惚れてしまう。 ほんま、素直で可愛いわ 可愛くて、きっと抱き締めたくなるわな、ホームズさん。 「ホームズさん、葵のこと心配して見に来てくれたんちゃう?」 桐ダンスの引き出しに丁寧に着物をしまいながら、私はニヤリとした。 「え?手伝いの心配?」 葵がキョトンと小首を傾げる。 「ちゃうて!葵がへんな男に声かけられんか心配してや」 私が「ナンパに決まっとるやろ」と、トンチンカンな彼女にそう否定する。 「うーん。 そうかな?でもここには男の人なんて、そんなにいないじゃん」 葵があたりを見回してそう言う。 着物の販促会だけあって女性ばかり、男の人はたいてい連れだ。 「そやね。 まぁ、そうか」 私は「ふむ」と小首を傾げて、なんとなく庭に目を向けた。 良いお天気で外のテラス席も気持ちがいい、お客様も楽しそうだ。 ん?と私は目を凝らす。 んんん? 「あ!もしかして、その逆ちゃう?見てあれ!」 私は葵を呼んで、ホームズさんと小日向さんの席を指差した。 ちょうど彼らが着物を着たお客さんの女性2人組に声をかけられていたのだ。 私と葵は物陰からこっそりその様子を伺う。 「はっはーん。 ヤキモチ作戦やろか」 私は顎に手をかざして考える。 「ホームズさん、モテるからね」 葵がその光景をみて「ああ」と声を漏らし、シュンと肩を落としている。 「もう!この子は!そんなことで落ち込まんといて!ホームズさんが、あのくらいでなびくわけないわ。 斎王代のお姉にだってなびかなかったんやで」 私は軽くあしらうが、葵はジッとその様子を見ている。 葵ったらもう、ずっと平気そうにしてたくせにそんな顔しないでよ。 「え?見返す?」 葵が目を丸くしている。 「そうや!葵のシンデレラ大作戦や!」 私は目を細めて人差し指を立ててシーっと合図をすると、葵をお姉のいる店の奥に連れて行った。 [newpage] 【side清貴】 「あら、男のひとが珍しいわ。 おふたりなんですか?」 着物を着た若い女性の2人組が、僕と小日向に声をかけた。 「いえ、僕も彼もここの従業員の連れなんです」 そういって僕は彼女たちに微笑んで返した。 「2人とも男前やね、ご一緒してもいいですか?」 もう1人の女性がそういって食い下がる。 「いえ、彼女に誤解されたくないので、お断りします」 そういって僕は、冷ややかに目を伏せる。 「わぁ、あの子素敵ね!」 「葵ちゃん、やない?綺麗やわ」 女性2人組がそう言っているのが聞こえた。 「ー!!」 ふいに彼女たちが向けた視線のほうを向いて、僕らは驚いて目を見開いた。 そこにはさっきまで襷掛けをして働いていた葵さんが、綺麗な着物を着て着飾っていた。 葵さんだよな?」 小日向が完全に惚けている。 「あたりまえやん!な、葵!」 隣にいる香織さんが「葵は可愛いんやで!」と自信満々にそういう。 「葵ちゃん、綺麗ね。 とっても良く似合ってる!」 佐織さんも後ろで誇らしげに頷いている。 「香織と佐織さんが、せっかくだからってこんなに良い着物を着せてくれたんです。 ホームズさん、ど、どうですか?」 葵さんが頬を染めて恥ずかしそうにしながら、そう僕に尋ねる。 いつも着ている着物は、淡い、ふんわりとした色合いが良く似合う可愛らしい印象の葵さん。 今は、ガラリと雰囲気が変わり、 艶やかな、紫と青のグラデーションが濃い藤の花が優美な着物で凛とした印象になっていた。 「葵さんは僕の連れで、婚約者なんです」 僕は頬を染めて葵さんにぴったり寄り添い、満面の笑みで僕らに言い寄ってきた彼女たちに葵さんを紹介した。 ーー ー ポォ 日が沈むころを見計らって、灯篭のライトアップがされていった。 昼間の青空、温かい日差し、御池や緑が鮮やかな芝生という自然の調和が美しい庭とはまた違うー それらの自然が存在を潜める薄暗い夕方は、灯篭の柔らかい灯火が幻想的な雰囲気になる。 香織さんが「今日の葵の仕事はもうお終いですから」と気をきかせてくれて、小日向は「俺の用も終わりかな」と先に帰って行った。 [newpage] 僕と葵さんは庭園の長椅子に座る。 何故だろう? 見慣れているはずの灯篭の灯りが柔らかくてホッとする。 「綺麗ですね」 葵さんが灯篭の灯りを見て息を漏らした。 「ええ、本当に綺麗です」 僕は葵さんを吐息まじりの艶っぽい表情を熱っぽく見つめて、息を漏らした。 「また、お上手ですね」 葵さんが僕の視線に気がついて頬を染めて瞬くと、恥ずかしそうに目をそらしてまた灯篭に目を移してしまう。 下町娘のように働いていた女の子が、一瞬でこんなに艶のある美しい女性なった。 葵さんはいつも僕を魅了する。 一瞬だ。 葵さんの仕事ぶりを拝見していて嬉しい反面、僕は心配になりました。 あなたの才能は僕には計り知れないのかもしれないと」 そう言って僕は思わず、次の言葉をコクンと唾と共に飲み込んだ。 『僕の知らない世界で、あなたはもっと活躍できるのではないかと思った』 そんなことを言ったらー 彼女は、本当に僕の手の届かないところに行ってしまいそうだ。 「心配ですか?嬉しいですか?褒めてもらってるんでしょうか?」 葵さんが小首をちょこんと傾げて、不安そうに僕なら様子を伺う。 僕は嬉しくなったり誇らしくなったり寂しくなったりと、葵さんに翻弄される様々な自分の感情に困惑する。 「あの、その、良かったですー」 「え?」 葵さんが頬を染めてジッと僕を見つめる。 うん、やっぱり良かったす」 葵さんの瞳に灯篭のオレンジ色が滲み柔らかく微笑むと、瞳を覆う涙が小さくキラキラと控えめに反射する。 どうか、その心眼に、貴女にそんな格好悪いところを見透かされていませんように。 僕は、祈るような気持ちで『期待している』なんて言葉で気持ちを繕った。 『もう充分です』なんて言ったら、僕の手の届かないところに飛んで行ってしまうんじゃないかと心配で仕方がないのだ。 僕はあなたの手を決して離さない 手に入れたら決して離さない もう決して離さないと『あの日』決めたんだ。 僕が葵さんの手をぎゅっと握ると、葵さんが僕の手を握り返してくれる。 温かい彼女の鼓動を感じる。 大丈夫、彼女はちゃんと今ここ(僕)に在る。 それが永遠に続くように、僕はまるで彼女の鼓動のように温かく灯る灯篭に祈る。

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【梅田本店】★終了致しました★『京都寺町三条のホームズ 13』『コミック 京都寺町三条のホームズ 5』発売記念 望月麻衣先生&秋月壱葉先生 サイン会 開催! 2020年1月26日(日)

京都 寺町 三条 の ホームズ 13

ネタバレ Posted by ブクログ 2020年02月18日 円生が主役の一冊といってもいいでしょう。 それほど彼の心の葛藤や苦しみ、コンプレックス、清貴に対する嫉妬、相反する憧れといったものが描かれていた作品だと思います。 円生の葵に対する感情も「清貴になりたい」という想いが姿をかえたものではないかと感じます。 鑑定士になりたかった、という想いが姿をかえたもの、 ということもできますね。 いずれにしてもなりたいものになれなかった、という苦しみはいかばかりか、その心の奥を想像すると読み手もちょっと苦しくなります…。 清貴、小松のもとを離れひとりになり、イーリンと偶然出会い、彼女の生い立ちと自分を重ね、円生自身が自分の心の奥底にあった本当の想いに気づくシーンは、これまでの円生の振る舞いや清貴に対する態度など、彼の多くのことがわかった瞬間でもありました。 自分らしさ、といいますか独自の軸があれば相手に対する嫉妬もやがては収まろうというもの、これからの円生が楽しみになってきました(そうなると葵への感情も少し変化するかも…)。 但し出番の少なかった葵ちゃんとの濃厚キスシーンと清貴まさかの浮気(?)・犯罪シーン(?)あり。 安定のホームズさんとまさかのホームズさんの両方が拝める特別回でした。 葵ちゃんのためなら、あそこまでやってのける。 寧ろ彼女を人質に取られたから、あそこま でやったというか。 以前の列車の件での仕返しとばかりに例の彼が姑息な手を使ってきて、事実大変なことにはなるのですが、所詮小悪党。 ハラハラはしましたが、円生とのバトルほどには危機感を覚えませんでした。 そういう意味でも例の彼はホームズさんのライバルの器にはなり切れなかった模様。 ご愁傷さまです。 今回はきっちり捕まりましたから、今後は大丈夫でしょう。 どんでん返し、何とも鮮やかでございました。 流石のホームズさん。 そんな中、円生がとうとう自身の進むべき道を見つけられた大切な回にもなりました。 最近はホームズさんに比べると子供っぽい部分を多々見せていた彼でしたが、ついに爆発して家出。 子供か! その先にやっと答えを見つけられて、落ち着いたと思います。 葵ちゃんへの気持ちに関してはまだ解決しきっていない気もしますが。 何にせよ、ライバルキャラの門出を純粋に喜べるのはいいなと思いました。 作品内での成長が見えているということなので。 逆にホームズさんは葵ちゃんに対してどんどん弱くなってますけどね。 逆の意味で心配にはなります。 毎度思いますけど。

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